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「ここがカリアシュヤの珈琲豆の農場になります」
時は戻り、エンジたちはカリアシュヤの視察をしている。カリアシュヤでは珈琲豆が名産らしい。あちらこちらに大きな農園が広がっているのだ。エンジたちは珈琲豆の作り方や作業の中で工夫しているところなど、詳しく話を聞いた。アオナもまた、農業がメインの国である。良いと思った技術は取り入れようという魂胆である。
「いつも思うのですが、農家の皆さんには頭が上がりません。大変なお仕事ですね」
「本当にそう思います。私も時折祖母のお手伝いにいくのですが、もう終わる頃には疲れてしまって」
今日はカリアシュヤの広報を担当しているという職員がエンジたちに同行してくれている。グレーのパンツスーツをびしっと着こなした彼女がそう言って笑った。
「あ、そうでした。カリアシュヤの珈琲を飲んでいかれませんか?おすすめのお店があるんですよ」
「わ、珈琲大好きです」
シオウが手を叩く。
「あとカリアシュヤではパンケーキが有名なんですよ。そのお店、珈琲もなんですけど、パンケーキも美味しくて」
「わあ、ソーちゃん聞いたら喜びそう」
「ソーちゃん?」
職員が首を傾げている。エンジは答えた。
「アオナの聖女です」
「まぁ、あの占いがよく当たる聖女様でしたよね?聖女様、甘いものがお好きなんですか?」
「大好きだよ」
ソータの話題で一行は盛り上がった。車に乗り、その店に向かう。パンケーキはふわふわでこんもりとしたクリームが隣に添えられている。
「わあ、美味しそう」
シオウがカメラで写真を撮っている。叔父からもらった大切なカメラらしい。古いカメラだが、シオウが撮るといい写真が撮れる。
「頂きます」
エンジたちは手を合わせ食べ始めた。
「この後のダンスパーティについてなのですが」
職員が資料を見ながら言う。結婚式前夜のダンスパーティについて、エンジたちは聞かされていなかった。はじめはひっそりやろうとしていたらしいが、有名貴族も来ることからメディアに知らせたのだと言う。カリアシュヤは小さな国だ。世界に自分たちのことを知ってもらうため、広報も必死なのだと職員は話した。
そんな話をしながら、エンジたちはナイフとフォークでパンケーキを切り分け、甘いがくどくないクリームを掬って口に入れた。しゅわっとパンケーキが消えるようになくなってしまう。
「うんまぁ…」
コーヒーもまた苦みの奥にほのかな甘みを感じる。甘いパンケーキにはぴったりだ。
「お口に合ってなによりです。この後、エンジさんたちは一度ホテルに戻られるってことでよろしいでしょうか?」
「はい、その方が助かります」
「承知致しました。またお迎えにあがりますね」
職員の言葉にエンジは頷いた。
✢✢✢
パペとロニは変わらずホテルのロビーにいる。
「パペ、俺、やり方が分からなくなっちゃった」
ロニにぐいと腕を掴まれて、パペは何事かとそちらを見た。
「どうしたのですか?」
ロニがパペの方に画面を近付ける。
「なんかね、姫様の痕跡を探っていたら城にある姫様の部屋でそれが途切れちゃうんだ。もしかして、壊しちゃったかなあ?」
「…!」
「あれえ?ロニとパペじゃん」
二人が顔を上げるとエンジたちだった。
「ソータはどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
二人はエンジたちに駆け寄った。エンジもなにかあったのだと悟ったらしい。とりあえず部屋に行こう、と昇降機に向かった。
「二人共、ご飯は食べたの?」
シオウに尋ねられ、パペとロニは首を横に振った。
「姫様が大変なんだ!」
「落ち着いて。順を追って話してくれ」
「私がお話します」
パペは最初から話をした。今はソータがリーナ姫の身代わりになり皇子と共にいることも。
「ソーちゃんがお姫様の代わり?!」
レントが叫ぶ。
「ソータは要領のいい子だから大丈夫だろうけど、姫の痕跡が部屋の中で消えてるってのはなんなんだ?」
パペは頷き、画面を表示させた。
「リーナ姫様は異次元に連れて行かれた可能性が高いです」
「異次元?!」
「はい。私もシヴァ様に聞いてみました。異次元へのトンネルを開くのは私でも可能です」
「異次元って簡単に言うけれど…」
エンジが頭を抱えている。
「俺は行くよ!リーナ姫様は絶対に取り返すんだ。皇子様も心配して一人で城を飛び出してきたみたいだったし」
「一国の皇子が護衛も連れずに外をウロウロ…」
エンジはますます頭を抱えている。
「ロニに俺は賛成。囚われの姫を助けるとか男のロマンしかない」
「私も行くよ。このままじゃ、ソータさんが困るだろうしね」
エンジはみんなの視線が自分に集まるのを感じた。
「分かった!行くよ!行けばいいんだろう!」
城に入るには正装が必須である。エンジたちは着替え始めた。そんな服のないロニとパペは、ひっそり城に忍び込むことになった。
コンコンと部屋のドアがノックされる。先程の職員だろう。
「エンジさん、皆さん、お迎えに上がりました」
「パペ、ロニ、姫の部屋の前で合流しよう!」
「承知致しました」
エンジたちが部屋から出る。パペとロニもそっとホテルを後にした。
時は戻り、エンジたちはカリアシュヤの視察をしている。カリアシュヤでは珈琲豆が名産らしい。あちらこちらに大きな農園が広がっているのだ。エンジたちは珈琲豆の作り方や作業の中で工夫しているところなど、詳しく話を聞いた。アオナもまた、農業がメインの国である。良いと思った技術は取り入れようという魂胆である。
「いつも思うのですが、農家の皆さんには頭が上がりません。大変なお仕事ですね」
「本当にそう思います。私も時折祖母のお手伝いにいくのですが、もう終わる頃には疲れてしまって」
今日はカリアシュヤの広報を担当しているという職員がエンジたちに同行してくれている。グレーのパンツスーツをびしっと着こなした彼女がそう言って笑った。
「あ、そうでした。カリアシュヤの珈琲を飲んでいかれませんか?おすすめのお店があるんですよ」
「わ、珈琲大好きです」
シオウが手を叩く。
「あとカリアシュヤではパンケーキが有名なんですよ。そのお店、珈琲もなんですけど、パンケーキも美味しくて」
「わあ、ソーちゃん聞いたら喜びそう」
「ソーちゃん?」
職員が首を傾げている。エンジは答えた。
「アオナの聖女です」
「まぁ、あの占いがよく当たる聖女様でしたよね?聖女様、甘いものがお好きなんですか?」
「大好きだよ」
ソータの話題で一行は盛り上がった。車に乗り、その店に向かう。パンケーキはふわふわでこんもりとしたクリームが隣に添えられている。
「わあ、美味しそう」
シオウがカメラで写真を撮っている。叔父からもらった大切なカメラらしい。古いカメラだが、シオウが撮るといい写真が撮れる。
「頂きます」
エンジたちは手を合わせ食べ始めた。
「この後のダンスパーティについてなのですが」
職員が資料を見ながら言う。結婚式前夜のダンスパーティについて、エンジたちは聞かされていなかった。はじめはひっそりやろうとしていたらしいが、有名貴族も来ることからメディアに知らせたのだと言う。カリアシュヤは小さな国だ。世界に自分たちのことを知ってもらうため、広報も必死なのだと職員は話した。
そんな話をしながら、エンジたちはナイフとフォークでパンケーキを切り分け、甘いがくどくないクリームを掬って口に入れた。しゅわっとパンケーキが消えるようになくなってしまう。
「うんまぁ…」
コーヒーもまた苦みの奥にほのかな甘みを感じる。甘いパンケーキにはぴったりだ。
「お口に合ってなによりです。この後、エンジさんたちは一度ホテルに戻られるってことでよろしいでしょうか?」
「はい、その方が助かります」
「承知致しました。またお迎えにあがりますね」
職員の言葉にエンジは頷いた。
✢✢✢
パペとロニは変わらずホテルのロビーにいる。
「パペ、俺、やり方が分からなくなっちゃった」
ロニにぐいと腕を掴まれて、パペは何事かとそちらを見た。
「どうしたのですか?」
ロニがパペの方に画面を近付ける。
「なんかね、姫様の痕跡を探っていたら城にある姫様の部屋でそれが途切れちゃうんだ。もしかして、壊しちゃったかなあ?」
「…!」
「あれえ?ロニとパペじゃん」
二人が顔を上げるとエンジたちだった。
「ソータはどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
二人はエンジたちに駆け寄った。エンジもなにかあったのだと悟ったらしい。とりあえず部屋に行こう、と昇降機に向かった。
「二人共、ご飯は食べたの?」
シオウに尋ねられ、パペとロニは首を横に振った。
「姫様が大変なんだ!」
「落ち着いて。順を追って話してくれ」
「私がお話します」
パペは最初から話をした。今はソータがリーナ姫の身代わりになり皇子と共にいることも。
「ソーちゃんがお姫様の代わり?!」
レントが叫ぶ。
「ソータは要領のいい子だから大丈夫だろうけど、姫の痕跡が部屋の中で消えてるってのはなんなんだ?」
パペは頷き、画面を表示させた。
「リーナ姫様は異次元に連れて行かれた可能性が高いです」
「異次元?!」
「はい。私もシヴァ様に聞いてみました。異次元へのトンネルを開くのは私でも可能です」
「異次元って簡単に言うけれど…」
エンジが頭を抱えている。
「俺は行くよ!リーナ姫様は絶対に取り返すんだ。皇子様も心配して一人で城を飛び出してきたみたいだったし」
「一国の皇子が護衛も連れずに外をウロウロ…」
エンジはますます頭を抱えている。
「ロニに俺は賛成。囚われの姫を助けるとか男のロマンしかない」
「私も行くよ。このままじゃ、ソータさんが困るだろうしね」
エンジはみんなの視線が自分に集まるのを感じた。
「分かった!行くよ!行けばいいんだろう!」
城に入るには正装が必須である。エンジたちは着替え始めた。そんな服のないロニとパペは、ひっそり城に忍び込むことになった。
コンコンと部屋のドアがノックされる。先程の職員だろう。
「エンジさん、皆さん、お迎えに上がりました」
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「承知致しました」
エンジたちが部屋から出る。パペとロニもそっとホテルを後にした。
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