引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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エンジを先頭にソータたちは塔内を歩いている。中は古びてはいるものの、階段は無事だった。

「この塔って確か、神々に捧げたものなんだよね?」

ロニが周りをキョロキョロしながら言う。

「はい。土地の豊穣と繁栄を神々に祈るために建てられたものだと聞いています」

「へー!この世界って神々が沢山いるもんね。スリニアでもラシータ様を祀るお祭りがいっぱいあってさぁ」

「ロニはラシータ様が大好きなんだね」

ふふ、とソータが笑うと、ロニは顔を赤らめる。

「うん、ずっとラシータ様は俺たちを見守ってくれていたからね。大事なんだ。もちろんソータもだよ!」

「なにちゃっかり告白してんの」

レントがジト目で言う。ロニは照れ笑いをした。

「にしても、いつもの装備を着けてるのは不思議だ」

「あ…それは私が魔法で」

「ソータのお陰か!ありがとう!」

エンジの鎧をソータは魔法で復元していた。もちろん、剣も。レントとシオウはエンジに比べると軽装だが、やはりあるのとないのでは違う。

「これならモンスターが出てきても大丈夫だね!」

「ありがとう、ソータさん」

「いえいえ、当然なのです!」

地上を目指して、ソータたちは下り続けた。そしてあるものを発見する。推定するにここが地上一階だろう。

「こりゃあ…」

エンジが呟いてうーんと腕を組む。一行は地下に繋がる道を見つけていた。

「どうする、今のところなにも手がかりもないし行ってみるか?」

「地下に姫様がいるかもしれないもんね!」

ロニがやるぞー!と拳を振り上げる。

「下から瘴気を感じます。皆さんお気を付けて」

ソータの警告に皆が頷く。

「おい、俺が先頭を歩く。ここは異常だ」

エンジの代わりにキメルが前に出て、ソータはそのすぐ後ろに控える。キメルが敵を引き付け、それにソータが魔法で攻撃に乗じる戦法だ。
一行は地下を探りながら歩き始めた。基本的に上階と造りは同じらしい。さらに下ること数階、その間にモンスターと何度か戦闘になった。

「ここって聖域じゃないの?」

ロニが首を傾げる。本来であれば、聖域に魔物は棲み着かない。

「おそらく、次元の捻じれがこの場所を作り出しているのでしょう。本来フォッシルの塔にこのような場所はないと思われます」

パペが答える。

「じゃあますます気を付けないとね」

「小僧、来るぞ」

キキィと鳴き声を上げながら小型のモンスターが数体現れる。ソータが先制で最大火力の攻撃魔法を放った。この一撃で大体のモンスターは散る。

「やっぱソーちゃんつえー」

「ソータ、魔法のキレが前よりよくなってないか?」

「あまり自覚はないのですが…」

「ガキ共に教えた分だけ強くなったんだろ。精度も上がっているからな」

キメルはいつもこうして褒めてくれる。ソータは嬉しくなって、キメルの首に抱き着いた。

「ありがとう、キメル」

「ソータの努力の結果だ。お前らもソータを見習えよ」

「もー、キメルってば!」

キメルが鼻を鳴らす。一行は更に下った。
ポチョンと水滴が滴る音がする。湿気が多いのかじめっとした空気になってきた。壁にはカビが生えている。そして上階にはなかったものがここにはある。そう、鉄格子だ。

「え、地下牢?」

「みたいだな。とりあえず全部見てみよう」

足元に気を付けながら一行は進んだ。
水路のようなものが脇にはあり、あまり綺麗ではない水がザブザブ流れている。

「ん…」

キメルは止まった。ソータにもその理由が分かった。

「どうしたの?」

ロニが問うとソータは答えた。

「誰かがいる気配がします。気を付けて」

「俺とソータで見てくる。お前らはここにいろ」

キメルとソータは頷き合って先に進んだ。

「!これは…」

金色の巨大な鳥籠が鉄格子の向こうに置かれている。中で眠っているのは間違いない、リーナ姫だ。

「リーナ、なんでこんな所に…」

キメルが驚きの声を上げる。

「私の家族…なのかな?」

ソータはキメルに聞いたが彼は答えなかった。

「…とりあえず姫を連れ出さなきゃな」

エンジたちを呼び、鉄格子を開けようとしたがびくともしなかった。

「鍵穴があるけど、俺の技量じゃさすがに開けられないよ」

ロニもお手上げらしい。鍵を力ずくで壊すことも難しかった。

「くそ…ここまで来ておいて」

キメルがぼやく。
皆が諦めかけた時だった。

「待って、諦めるのはまだ早いよ。鍵穴の写真を撮ってもらっていい?俺、ちゃんとした鍵を作れるんだ」

「わかった。撮るから指示して」

シオウがカメラを取り出し、ロニの指示で写真を撮っていく。

「リーナ姫様、必ず助け出します」

彼女の首元にあったはずの貝殻のネックレスは確認出来なかった。

「リーナ姫の同意を無理に取って、犯人はネックレスの魔力を使っている可能性があります」

「相当強力な魔力だよね?」

「はい。神に等しくなるかと」

「は?そんなに強くなるの?」

レントはびっくりと両手を上げた。

「持ち主を選ぶ魔具はなかなか出会えないものですし、選ばれても使いこなせない場合が多いんです。それだけ強大な力を持ちますから」

「姫様はソータくらい魔法が使えるってことか」

「そうゆうことになりますね」

一行は上階へ上がり、塔の外に出た。すっかり日は落ちて暗くなっている。

「とりあえず火を炊こうか」

エンジが落ちていた木を集め、あっさり火をつけてしまう。

「エンジさんのサバイバル術は本当にすごいね」

「慣れてるからなぁ」

シオウに褒められてエンジが照れている。

「食料は持ってきました」

パペが食材をどこからともなく取り出す。

「お、美味そう」

皆で火を囲んで食べる食事は格別だった。
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