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「空間が消えかけている?」
ロニとソータは皆のいる場所に戻り、事情を話した。
「とにかく、リーナ姫をあそこから連れ出さないとな。ロニ、本当に鍵は作れるのか?」
「ギリギリかもだけど二時間は欲しい」
エンジが頷く。
「パペ、俺たちは元の世界に帰れそうか?」
パペが先程から画面を操作している。その顔には焦りが見えた。
「どうしたの?」
「何かの邪魔が入って、元の世界にうまく繋げないんです。ここから移動するのは可能なのですが」
「そんな」
ロニが絶望的な声を上げる。
「どこになら移動できる?」
エンジが冷静に尋ねる。
「ザギヤです」
「また辺鄙な所だな」
ザギヤはカリアシュヤのそばにある小国だ。もちろん島国であり、王国でもある。
「よし、そこに行ってみよう」
ロニは写真が表示された画面を見ながら、鍵を作り始めた。鍵を作る、と言っても、ただ針金を複雑に曲げ、扉をこじ開ける手法を取るらしい。この鍵も誰もが使えるわけではない。ロニのように慣れている者ではないと扱えないのだ。
「それで開くの?」
「開くから大丈夫」
カチカチと作業する音が響く。
「ソータ、大丈夫か?」
ソータはうつむいたまま顔を上げられなかった。
「キメルのことです。きっと大丈夫だと思います。でもあのキメルを連れ去る連中です、相当な手練れかと」
「あぁ、そうだな、俺もそう思うよ」
ソータはふと気が付いた。背負っていたたまごが動いているのだ。
「ん?たまごが?」
エンジも気が付いたらしい。ソータはたまごを地面に置いた。コツコツ、コツコツと中からたまごを突付く音がする。そして、ついにパキとたまごの殻が割れた。
「あぎゃ?」
中から現れたのは真っ赤な小さな龍だった。
ソータに短い腕をくいと伸ばしている。ソータが抱えると甘えるようにしがみついた。
「ソータをお母さんだと思っているみたいだな」
「あったかいのです」
確かな命の重みに、ソータは涙を堪えきれなかった。龍が心配そうにソータを見つめる。
「あぎゃあ」
「ごめんね、大丈夫だよ」
よしよしと龍の頭を撫でるとホッとしたのかスピスピと眠り始めた。
「マイペースな子だな」
エンジが笑う。ソータも頷いた。
「出来た!!」
予定よりも随分早く、ロニ手製の鍵が出来上がった。
「よし、急いでフォッシルの塔に向かおう」
一行はフォッシルの塔内にいる。
この間探索した際、シオウがしっかりマッピングしておいてくれたのでスムーズに目的地に辿り着く事が出来た。金色の巨大な鳥籠にはリーナ姫が変わらず眠っている。
「ロニ、頼むぞ」
「任せてよ!」
ロニは作った鍵を差し込んだ。カチとあっさり鍵が開く。
「おお、開いた」
レントが大げさに驚いて見せる。
「だから開くってば!」
エンジが鳥籠からリーナ姫を連れ出した。
「皆さん、この次元も不安定になってきました。移動します!」
あ、という間もなくソータたちは移動していた。
龍が泣いている。ソータは慌てて抱き上げてあやした。怖かったのだろう。まだ生まれたばかりだ。
「大丈夫、大丈夫」
ソータがゆらゆら揺すると龍は再び眠りに就いた。ソータは改めて辺りを見回した。砂地に巨大な石が不自然なほど綺麗に並べられて置いてある。シオウが隣に来て言った。
「ザギヤの遺跡だね。昔の人はどうやってこれを作ったんだろうって皆が考えるんだ」
「不思議ですね」
「シオウ、ソータ、パペがザギヤの街に跳ぶってさ。リーナ姫も心配だし行くぞ」
エンジが呼んでいる。シオウとソータも頷き向かった。
✢✢✢
「ここは…」
キメルは目を覚ましていた。両腕を拘束されている。魔力を使って壊そうとしたが魔力が使えない。どうやら特殊な枷を使っているらしい。
「起きられましたか、キメル様?」
リーナ姫がやってくる。
「おいおい、仮にも結婚するっていう相手をこうやって拘束するなんて、あまりにも礼儀知らずじゃねえか?」
「あらあら。私は慎重なのですよ」
「慎重…ねぇ」
「式は新月の夜、執り行ないます。逃げようなんて無駄ですから変なことは考えないように」
キメルは鼻で笑った。ソータなら必ず来てくれる、自分の痕跡に気が付いたという確信があった。
「ねえ、キメル様?」
リーナ姫が近寄ってきてキメルの頬を撫でた。彼女の気味悪い笑みにぞわりとする。
「私に力を譲渡してくださらない?そしたら解放してあげるわよ」
「何を言ってやがる。あんたなんかに力を渡したらろくなことに使わないだろうが」
リーナ姫が笑う。
「失礼な人ね。いいわ、待てばいいだけのことだもの」
リーナ姫が去っていく。キメルは辺りを探っていた。明かりの加減からここは地下のようだ。
「月って言ってたな、月…んーと」
キメルはしばらく考えて閃いた。ここはザギヤだと。ザギヤでは月の観測に適しているとされている。
「さて、ソータにどう報せたものかな」
力の譲渡など始めからしてやるつもりはない。
「まずはこの枷をぶっ壊すか」
キメルは枷を壁に打ち付け始めた。魔具は魔力に強いが物理的な力には弱いからだ。
「キメル様をなめんなよ」
ロニとソータは皆のいる場所に戻り、事情を話した。
「とにかく、リーナ姫をあそこから連れ出さないとな。ロニ、本当に鍵は作れるのか?」
「ギリギリかもだけど二時間は欲しい」
エンジが頷く。
「パペ、俺たちは元の世界に帰れそうか?」
パペが先程から画面を操作している。その顔には焦りが見えた。
「どうしたの?」
「何かの邪魔が入って、元の世界にうまく繋げないんです。ここから移動するのは可能なのですが」
「そんな」
ロニが絶望的な声を上げる。
「どこになら移動できる?」
エンジが冷静に尋ねる。
「ザギヤです」
「また辺鄙な所だな」
ザギヤはカリアシュヤのそばにある小国だ。もちろん島国であり、王国でもある。
「よし、そこに行ってみよう」
ロニは写真が表示された画面を見ながら、鍵を作り始めた。鍵を作る、と言っても、ただ針金を複雑に曲げ、扉をこじ開ける手法を取るらしい。この鍵も誰もが使えるわけではない。ロニのように慣れている者ではないと扱えないのだ。
「それで開くの?」
「開くから大丈夫」
カチカチと作業する音が響く。
「ソータ、大丈夫か?」
ソータはうつむいたまま顔を上げられなかった。
「キメルのことです。きっと大丈夫だと思います。でもあのキメルを連れ去る連中です、相当な手練れかと」
「あぁ、そうだな、俺もそう思うよ」
ソータはふと気が付いた。背負っていたたまごが動いているのだ。
「ん?たまごが?」
エンジも気が付いたらしい。ソータはたまごを地面に置いた。コツコツ、コツコツと中からたまごを突付く音がする。そして、ついにパキとたまごの殻が割れた。
「あぎゃ?」
中から現れたのは真っ赤な小さな龍だった。
ソータに短い腕をくいと伸ばしている。ソータが抱えると甘えるようにしがみついた。
「ソータをお母さんだと思っているみたいだな」
「あったかいのです」
確かな命の重みに、ソータは涙を堪えきれなかった。龍が心配そうにソータを見つめる。
「あぎゃあ」
「ごめんね、大丈夫だよ」
よしよしと龍の頭を撫でるとホッとしたのかスピスピと眠り始めた。
「マイペースな子だな」
エンジが笑う。ソータも頷いた。
「出来た!!」
予定よりも随分早く、ロニ手製の鍵が出来上がった。
「よし、急いでフォッシルの塔に向かおう」
一行はフォッシルの塔内にいる。
この間探索した際、シオウがしっかりマッピングしておいてくれたのでスムーズに目的地に辿り着く事が出来た。金色の巨大な鳥籠にはリーナ姫が変わらず眠っている。
「ロニ、頼むぞ」
「任せてよ!」
ロニは作った鍵を差し込んだ。カチとあっさり鍵が開く。
「おお、開いた」
レントが大げさに驚いて見せる。
「だから開くってば!」
エンジが鳥籠からリーナ姫を連れ出した。
「皆さん、この次元も不安定になってきました。移動します!」
あ、という間もなくソータたちは移動していた。
龍が泣いている。ソータは慌てて抱き上げてあやした。怖かったのだろう。まだ生まれたばかりだ。
「大丈夫、大丈夫」
ソータがゆらゆら揺すると龍は再び眠りに就いた。ソータは改めて辺りを見回した。砂地に巨大な石が不自然なほど綺麗に並べられて置いてある。シオウが隣に来て言った。
「ザギヤの遺跡だね。昔の人はどうやってこれを作ったんだろうって皆が考えるんだ」
「不思議ですね」
「シオウ、ソータ、パペがザギヤの街に跳ぶってさ。リーナ姫も心配だし行くぞ」
エンジが呼んでいる。シオウとソータも頷き向かった。
✢✢✢
「ここは…」
キメルは目を覚ましていた。両腕を拘束されている。魔力を使って壊そうとしたが魔力が使えない。どうやら特殊な枷を使っているらしい。
「起きられましたか、キメル様?」
リーナ姫がやってくる。
「おいおい、仮にも結婚するっていう相手をこうやって拘束するなんて、あまりにも礼儀知らずじゃねえか?」
「あらあら。私は慎重なのですよ」
「慎重…ねぇ」
「式は新月の夜、執り行ないます。逃げようなんて無駄ですから変なことは考えないように」
キメルは鼻で笑った。ソータなら必ず来てくれる、自分の痕跡に気が付いたという確信があった。
「ねえ、キメル様?」
リーナ姫が近寄ってきてキメルの頬を撫でた。彼女の気味悪い笑みにぞわりとする。
「私に力を譲渡してくださらない?そしたら解放してあげるわよ」
「何を言ってやがる。あんたなんかに力を渡したらろくなことに使わないだろうが」
リーナ姫が笑う。
「失礼な人ね。いいわ、待てばいいだけのことだもの」
リーナ姫が去っていく。キメルは辺りを探っていた。明かりの加減からここは地下のようだ。
「月って言ってたな、月…んーと」
キメルはしばらく考えて閃いた。ここはザギヤだと。ザギヤでは月の観測に適しているとされている。
「さて、ソータにどう報せたものかな」
力の譲渡など始めからしてやるつもりはない。
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