引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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ソータとキメルは食事を摂っている。二人は金など当然持っていないので、カイガラの海で採れた海産物を浜辺で焼いたものだ。漁をしていた漁師の手伝いをしたお礼である。二人共真面目にこつこつ働いたのがよかったのか、ここに滞在するしばらくの間、手伝って欲しいと頼まれた。ソータとキメルからすれば有難い限りである。海産物以外に賃金も当然もらっている。ソータはそれでミルクとパンも購入していた。

「わ、この海藻しゃきしゃき」

ソータが焼いた海藻を噛み切って咀嚼していると、キメルも負けじと魚をがぶりと噛みちぎる。

「ん…美味いな」

やきたての魚はふっくらと柔らかく、海藻は歯ごたえがいい。美味しいと二人はもりもり食べた。

「早く戻らないとね」

「あの小僧に借りばかりを作るわけには」

「パペはそんなこと気にしないのに」

「俺が嫌なんだ」

二人はタキナミの家の前にある建物の陰で張り込むことにしたのだった。真龍族が来れば情報の漏洩は確定する。
だがタキナミの場合、自分自身の力で素晴らしい魔剣を造り上げることに成功している。真龍族はそれをどう判断するだろうか、とソータは不安だった。そして、誰が技術を漏洩したかも重要である。
食事をする間など、休憩する時間ももちろん大事である。その間はパペに見張ってもらうことにした。なにかが起こってもすぐに連絡をもらえる。
二人は手早く食事を摂って、張り込みをする場所に戻った。むやみに驚かせてはいけないので住民たちから許可を得ている。

そして既に3日が経過している。

「今日も何もなしか」

「うん。真龍族の人はもう来ないつもりなのかも。里の方でかなり揉めちゃってるし」

「ルーゴに連絡してみるか。チビのことも気になる」

キメルがさくっとルーゴに思念伝播の魔法で呼びかけてみる。すると返事があった。

「何か分かった?」

「カイガラ横丁に魔剣を造る人間の女がいる。ただし、真龍族の技術をそいつが使っているかは分からねえ。今、ここに真龍族が来ないか張り込んでいる」

「さすがキメル!動きがあったらまた知らせてくれる?」

「あぁ。で、チビは?」

「あぎゃ!」

ドラゴの声がする。どうやらそばにいたらしい。

「キメル、ソータ、早く帰ってきてね」

「ドラゴ、随分喋れるようになってきたんだよ。毎日つみきしたり、お絵描きしてる」

ルーゴも嬉しそうだ。

「いいか、チビ助。いい子にしてろよ」

「ぎゅあ!」

ぷつり、と通信が途絶えた。

「ふふ、ドラゴ、すごく嬉しそうだったね!」

ソータの言葉にキメルが困ったように顔を背けた。

「あいつ、素直過ぎるんだよ…」

「可愛いじゃない。それだけ大好きでいてくれてるってことだもの」

「ソータ、チビはお前のことも大好きなんだ」

「うん、嬉しいね」

キメルは答えなかったが、ソータには彼の気持ちが分かったような気がした。

二人は再び張り込みを続けた。既に10日が経過しようとしている。

「うーん、やっぱりタキナミ脅して無理やり吐かせるか?」

キメルが物騒なことを言っている。ソータはあ、と小さく叫んだ。真龍族と思しき人物がタキナミの家に入っていったのだ。
ソータは真正面から飛び出そうとして、キメルに引き止められた。

「後ろから回るぞ」

ソータは頷いた。二人はタキナミの家の裏側に回った。その真龍とタキナミはかなり仲がいいようで、お茶を飲みながら話をしている。

「キメル?ここからどうするの?」

ソータはどうすればいいか分からなかった。キメルの角が輝き出す。

「ルーゴ、見えるか」

どうやらルーゴに思念伝播をしているらしい。キメルの角は特別製なのだ。

「うん、確認した。出来れば彼女も里に連れてこられる?」

「さらえばいいんだな。任せろ」

キメルの口からはここのところ物騒な言葉しか出てこない。真龍がそろそろと立ち上がり玄関から出ようとしたところを二人は突撃した。

「なんだ?」

「あなたがたはこの前の」

真龍とタキナミが驚いた様な表情をした。

「お二人共、申し訳ありません」

「一緒に来てもらうぞ」

キメルの言葉に二人は大人しくついてきた。
ソータとタキナミはキメルの背に乗り、真龍は後ろからついてきた。

「あ、ああああ、あの、これからどこへ?」

タキナミはずっと動揺している。

「真龍族の里に行きます。あなたの魔剣について」

「わ、私の?」

キメルは更にスピードを上げた。魔剣のデータはキメルが保持してくれている。
間も無く里に着く。真龍族の里は再び開かれた。

「キメル―!」

ルーゴが手を振っている。キメルは着地の為、下降を始めた。
キメルたちが地上に降り立つと、真龍族に取り囲まれた。

「サルト!なんで!」

タキナミと共にいた真龍はサルトと言う名前らしい。

「いいだろう、このまま技術を腐らせるより!彼女の腕は確かだ」

「だからといって!」

ざっと真龍たちがその場に控える。現れたのは恰幅のいい真龍だった。

「キメル、久しいな」

「里長か」

ソータもその場にうずくまり深く頭を下げた。

「里長様、お初にお目にかかります」

「聖女か。お主の噂は聞いている。ドラゴのこと、感謝する」

「は」

ソータは短く答えた。

「屋敷に移動しよう。お前たち」

サルトとタキナミが真龍族に連れていかれる。

「来てくれるな、キメルよ」

「ああ、構わねえよ」

ソータとキメルも真龍のあとを付いていく。

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