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ソータは今日も祈っている。色々な人の幸せを。
聖域に戻ってきたのはつい最近だ。エンジは約束通り、ソータのために小さいが小屋を立ててくれた。ベッドと机があるだけでも随分快適な生活が送れる。枕元にはくまのぬいぐるみ。
「ソータ!木の実採ってきたよ!」
ドラゴはすっかり人の形を取れるようになってきている。彼が大人になるその時まで、ソータは見守るつもりだ。
「ドラゴ、お前はこれだ」
キメルもドラゴに同行してくれていた。キメルが咥えていた籠には動物の肉が入っている。キメルが狩りで獲ったものだろう。聖域では殺生は許されていないので、二人はずいぶん遠くに出かけたらしい。
「どこまで行ってきたの?」
ソータが驚きを隠せずに言うと、キメルはちょっとなと言葉を詰まらせた。
「キメルと山で特訓したんだよ」
「キメル、そうだったんだ」
ソータが嬉しくなって笑うと、ぷいとキメルが顔を反らす。
「たまたまこいつが魔法が苦手だっていうから渋々な、そう、渋々だ」
渋々をやたら強調するあたりがキメルらしいとソータは微笑んだ。
「ドラゴ、特訓は役に立ちそう?」
「うん、すっごく勉強になったよ!」
「ありがとうね、キメル」
「あぁ」
ソータの言葉には割と素直なキメルである。
「で、今日はどっか行くのか?神々はほとんどここに出てこなくなったじゃないか」
「うん、学校だよ」
ソータは時折中央都市の学校に授業を受けに行っている。講師の仕事は無事に終わりを告げていた。ソータが勉強を教えていた精霊の子どもたちはシヴァに仕えるようになった。
「あぁ、学校か。ならすぐだな」
「お願いね、キメル」
「僕も行きたいなぁ」
ドラゴも学校という施設に興味津々だが、まだ幼児だ。行かせるなら幼稚園だろう。
「チビ、お前に学校はまだ早い。まずはオムツが外れなきゃな」
「僕、ずっと上手くいかなかったらどうしよう」
ドラゴはお漏らしをする癖があり、おむつをしている。ソータはそんな彼を抱き締めた。
「大丈夫だよ、ドラゴ。色々な人がいて当たり前なんだからね」
「ソータすき」
ぎゅむ、とドラゴが抱き着く。
「ほら、時間ないぞ。ソータ、チビの面倒は任せろ。たまにルーゴんとこ行くか?」
「行く!」
ドラゴが目をキラキラさせている。
ソータは木の実を数個持って、キメルの背にまたがった。ドラゴは最近になって自力で飛べるようになっている。
「行くぞ」
キメルは飛んだ。ドラゴもふわり、と浮かび上がる。
「私、自分がこうなるなんて全然思わなかったよ」
「理想と違ったか?」
「ううん、その逆だよ。皆がいてくれるから私がいるんだなって。むしろ理想に近い」
「そうだな、そうかもしれねえ」
キメルにソータは抱き着いた。
「ソータ!」
中央都市に着くと、ロニとパペがいた。ソータは二人に手を振る。
「ソータナレア様、キメル様お疲れ様です」
「ソータが聖域で祈らなきゃいけないのは分かるんだけどやっぱり寂しいよね」
「ならお前がアオナに来い」
「え!行っていいの?」
キメルが鼻を鳴らす。
「お前の妹や家族も連れてアオナに来い。エンジたちが移住者に補助金を出すってよ。学校も出来るからソータはそこでも講師を務めるしな」
「え!なにそれ!超楽しそう!パペはどう?」
「私はメンテナンスさえ出来ればどこでも」
相変わらずパペは淡々としている。
「お、ソータたちじゃないか」
やって来たのはサラである。
「なんか異動の話来てて」
「サラ先生、異動されるのですか?」
「アオナに行けってさ。ソータ、よろしくな」
「勝手によろしくするな、クソガキ」
キメルが前足でサラの腰をどすどす押す。
「キメル、少しくらいソータと話したっていいだろ?」
「それは俺も思ってた!」
「奇遇ですね、私もです」
キメルがそれに言葉を詰まらせる。
「…ソータは俺のだ」
「それはソータが決めることだろ!」
「おやおや、興味深い話をしているね」
「はいはーい!ソータの一番は僕、だよね?」
鬼とリヒまでやって来る始末である。
「僕が花嫁にしてやるぞ!ソータ!」
ハ・デスもやってきた。
「お前ら、全員暇か?」
フレンが呆れたように言う。
「アタシよね、ソータ!」
シヴァも参戦する。
「え、えと、えーと」
ソータは困っていた。恋愛感情というものを少しずつ掴みかけては来ているが、正直まだ良く分からない。
「私はみなさんと仲良くしていただければ十分なのです!れ、れ、れ、恋愛なんて無理なのです!」
ソータはその場から走って逃げ出した。
引きこもっていたはずなのにいつの間にかハーレム状態になっていた聖女の話はここで終わる。
おわり
聖域に戻ってきたのはつい最近だ。エンジは約束通り、ソータのために小さいが小屋を立ててくれた。ベッドと机があるだけでも随分快適な生活が送れる。枕元にはくまのぬいぐるみ。
「ソータ!木の実採ってきたよ!」
ドラゴはすっかり人の形を取れるようになってきている。彼が大人になるその時まで、ソータは見守るつもりだ。
「ドラゴ、お前はこれだ」
キメルもドラゴに同行してくれていた。キメルが咥えていた籠には動物の肉が入っている。キメルが狩りで獲ったものだろう。聖域では殺生は許されていないので、二人はずいぶん遠くに出かけたらしい。
「どこまで行ってきたの?」
ソータが驚きを隠せずに言うと、キメルはちょっとなと言葉を詰まらせた。
「キメルと山で特訓したんだよ」
「キメル、そうだったんだ」
ソータが嬉しくなって笑うと、ぷいとキメルが顔を反らす。
「たまたまこいつが魔法が苦手だっていうから渋々な、そう、渋々だ」
渋々をやたら強調するあたりがキメルらしいとソータは微笑んだ。
「ドラゴ、特訓は役に立ちそう?」
「うん、すっごく勉強になったよ!」
「ありがとうね、キメル」
「あぁ」
ソータの言葉には割と素直なキメルである。
「で、今日はどっか行くのか?神々はほとんどここに出てこなくなったじゃないか」
「うん、学校だよ」
ソータは時折中央都市の学校に授業を受けに行っている。講師の仕事は無事に終わりを告げていた。ソータが勉強を教えていた精霊の子どもたちはシヴァに仕えるようになった。
「あぁ、学校か。ならすぐだな」
「お願いね、キメル」
「僕も行きたいなぁ」
ドラゴも学校という施設に興味津々だが、まだ幼児だ。行かせるなら幼稚園だろう。
「チビ、お前に学校はまだ早い。まずはオムツが外れなきゃな」
「僕、ずっと上手くいかなかったらどうしよう」
ドラゴはお漏らしをする癖があり、おむつをしている。ソータはそんな彼を抱き締めた。
「大丈夫だよ、ドラゴ。色々な人がいて当たり前なんだからね」
「ソータすき」
ぎゅむ、とドラゴが抱き着く。
「ほら、時間ないぞ。ソータ、チビの面倒は任せろ。たまにルーゴんとこ行くか?」
「行く!」
ドラゴが目をキラキラさせている。
ソータは木の実を数個持って、キメルの背にまたがった。ドラゴは最近になって自力で飛べるようになっている。
「行くぞ」
キメルは飛んだ。ドラゴもふわり、と浮かび上がる。
「私、自分がこうなるなんて全然思わなかったよ」
「理想と違ったか?」
「ううん、その逆だよ。皆がいてくれるから私がいるんだなって。むしろ理想に近い」
「そうだな、そうかもしれねえ」
キメルにソータは抱き着いた。
「ソータ!」
中央都市に着くと、ロニとパペがいた。ソータは二人に手を振る。
「ソータナレア様、キメル様お疲れ様です」
「ソータが聖域で祈らなきゃいけないのは分かるんだけどやっぱり寂しいよね」
「ならお前がアオナに来い」
「え!行っていいの?」
キメルが鼻を鳴らす。
「お前の妹や家族も連れてアオナに来い。エンジたちが移住者に補助金を出すってよ。学校も出来るからソータはそこでも講師を務めるしな」
「え!なにそれ!超楽しそう!パペはどう?」
「私はメンテナンスさえ出来ればどこでも」
相変わらずパペは淡々としている。
「お、ソータたちじゃないか」
やって来たのはサラである。
「なんか異動の話来てて」
「サラ先生、異動されるのですか?」
「アオナに行けってさ。ソータ、よろしくな」
「勝手によろしくするな、クソガキ」
キメルが前足でサラの腰をどすどす押す。
「キメル、少しくらいソータと話したっていいだろ?」
「それは俺も思ってた!」
「奇遇ですね、私もです」
キメルがそれに言葉を詰まらせる。
「…ソータは俺のだ」
「それはソータが決めることだろ!」
「おやおや、興味深い話をしているね」
「はいはーい!ソータの一番は僕、だよね?」
鬼とリヒまでやって来る始末である。
「僕が花嫁にしてやるぞ!ソータ!」
ハ・デスもやってきた。
「お前ら、全員暇か?」
フレンが呆れたように言う。
「アタシよね、ソータ!」
シヴァも参戦する。
「え、えと、えーと」
ソータは困っていた。恋愛感情というものを少しずつ掴みかけては来ているが、正直まだ良く分からない。
「私はみなさんと仲良くしていただければ十分なのです!れ、れ、れ、恋愛なんて無理なのです!」
ソータはその場から走って逃げ出した。
引きこもっていたはずなのにいつの間にかハーレム状態になっていた聖女の話はここで終わる。
おわり
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