引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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教会には神を祀るための祭壇が置かれている。
シヴァはその祭壇の裏側のスイッチを押した。ゴゴと音が鳴る。

「ロニのことだから、この仕掛けも知ってたわよね?」

「う、うん。建物の構造を掴むのは得意だから」

シヴァに聞かれてロニがしどろもどろになりながら答える。
祭壇は静かに前に動き地下への階段が現れた。

「すっげえ、実際に見ると迫力あるなあ」

ロニが歓声を上げている。

「ソータ、ロニが暴走しないようにちゃんと見張っていて頂戴」

「承知」

「ソータ、キメル、行こ!」

ロニは意気揚々と地下への階段を下り始めた。ソータ、キメルもその後に続く。地下への階段は思っていたより長く暗かった。ソータが杖で明かりを灯していたので問題なく動くことが出来たのだ。

階段が終わっている。いよいよ地下に着いた。

「なんだ?これ」

ロニが驚いたような声を上げる。ソータも声を出すことが出来なかった。周りには水槽のようなものが並べてある。中には人間の赤ん坊らしきものが入っている。

「え?もしかして人体実験?」

「ロニ、ソータナレア様、キメル様」

声のした方を見ると、見たこともない誰かがいた。体が小さく、服がぶかぶかである。顔はほとんど見えない。服で隠れてしまっているからだ。

ソータは屈んだ。

「パぺ?」

「え?」

その誰かは溜息を吐いた。

「やはりソータナレア様を騙すことは出来ませんか」

「え?本当にパぺなの?」

ロニがソータの隣で屈む。

「はい、その通りです。私は人間にしては不完全な体を持ち生まれました。シヴァ様がそんな私に生きるための方法をくれたのです」

それが体を乗り換えるといったものだった。

「まだ完全に実験は成功していません。ですから、あれだけの肉体を用意しているのです」

「パぺ」

ロニがパぺを抱きしめる。

「心配したんだぞ!なんでそんな大事なこと黙ってるんだよ」

「ロニ・・・ただ気持ち悪いと思われたくなくて」

「そんなこと思うわけないだろ!ずっとパぺは大事な友達だよ」

「ロニ」

「パぺ、私もパぺの友達。困っていることがあったら頼って欲しい」

ソータの言葉にパぺは目を見開いている。

「ソータナレア様」

パぺは自分の体のメンテナンスについてソータたちに説明してくれた。メンテナンスは十日程かかるという事だ。

「パぺ、ご飯とか大丈夫?」

「はい、シヴァ様が持って来てくれるので」

「俺、もうここに来られないのかなあ。口外しないって約束はしたけど」

「ロニ、もうすぐテストのはずです。勉強を優先してください」

「みんなどれだけ俺に勉強させたいの?」

「当たり前だろ。学べる期間は貴重なんだぞ。学校を出たら人間は仕事をするんだ」

キメルの言葉は厳しいが事実である。

「進路か」

ロニも思い当たることがあったらしい。

「俺、どうすればいいんだろう」

「将来のことはお前が自分で決めるんだ。機械いじりが得意なんだからそれを仕事にするとかな」

「それだ」

ロニがハッとしたような顔をする。

「今学校で魔導コアを扱うためのカリキュラムの受講を募集していて、やってみようかなあ」

「なんでも挑戦するのはいいと思いますよ」

パぺはいつもの通り冷静だ。

「お前、素でそんな感じなんだな。体さえ何とかなれば普段となんにも変わらないじゃねえか」

キメルの言葉にパぺは顔を赤くした。

「パぺ、メンテナンスが終わったら会いに来るね」

ソータが彼の手を握るとパぺは頷いた。

「ご心配をおかけしました。私は元気なので安心してください」

地下から戻るとシヴァが待ち構えていた。

「事情が分かったでしょう?あの子は不完全な体を理由に親に捨てられたの。施設でもそれをからかわれたり笑われたりしていた。ああもう今更だけどむかついてきた」

「シヴァ様が助けてくれたんだね。良かったあ」

ロニがほうと息を吐く。

「だってあいつらあんまりにも酷いんだもの」

シヴァに火がついてしまったらしい。ソータとロニはしばらく彼の文句の聞き役に徹した。それだけパぺを大事に思っているということである。
ソータは心の中で祈っていた。パぺがメンテナンスなしに暮らせるようになることを。
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