引きこもり不憫聖女でしたが、逆ハーレム状態になっていました!

はやしかわともえ

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ソータとキメルが待ち合わせ場所の校門前に向かおうと歩いていると、既にロニがいる。ロニは性格こそ少年そのものだが、見た目は美少女だ。複数の男子生徒にナンパされそうになっている。ソータは静かに杖を取り出した。キメルがそれにギョッとしている。

「水よ…我の願う姿となれ!尖れアクアランス!!」

普段魔法を使う際、滅多に詠唱しないソータが詠唱という手順を込めるとどうなるか、キメルにはよく分かる。そう。魔法の威力が上がるのだ。しかもかなり。

「うわぁ!水が!!」

男子生徒たちは当然びしょ濡れになる。ソータはにこやかに言った。

「わぁ大変ですね。早く着替えなくては風邪を引きますよ?服を乾かすのに、私の最大火力の炎魔法を使ってもいいのですが、どうされますか?」

「あ、遠慮しておきます!!」

男子生徒たちが全員逃げていったのを確認したソータはぽかん、としていたロニを見つめた。

「ロニ、大丈夫?」

「あ、うん。ありがとう、ソータ。断ったんだけどしつこくてさ」

「はっ、ソータ、小僧に最強の水魔法を教えてやれよ」

キメルの提案にソータはもそのほうがいいかもしれないと考えた。ロニが慌ててそれをかき消す。

「それよりパペがまだ帰ってこないんだよね。もう出掛けて2日経つのにさ」

「やはりクエストではないのでしょうか」

「あの小僧はスマートさが売りなんだろ。そこまで難解なクエスト、ギルドだって取り扱わねぇだろ」

ソータとロニは確かにと頷いた。

「でもシヴァ様からの依頼とか?」

ロニの疑問にキメルが首を振る。

「それならあいつは自分で行くだろう。シヴァは細かいことに煩いからな」

それにもソータとロニは確かにと頷いてしまう。

「とりあえず教会に行くぞ。小僧、なんだその重そうな荷物は?」

「あ、もうすぐテストだからさ。勉強しないとと思って」

「…お前、普段全然勉強してないな?」

「う!!」

ロニがだってさぁと言い訳しているのをキメルが前足でげしげし蹴っている。

「二人共、もう教会に行くよ」

ロニとキメルの仲の良さを確認したソータはホッとしながら言った。

✢✢✢

「で、地下に行きたいって?」

シヴァは不機嫌そうに言う。

「ちょっとロニ、勝手に鍵を作るなんて場合によっては犯罪よ?全く」

「ごめんなさい。パぺのことが気になったんだ」

シヴァは溜息を吐いた。

「あんたたちにとって、パぺはいいお友達ってことよね。仕方ないわね。今回だけ許してあげる。でも口外することは許さないわ。特にロニ、あんた守れる?」

ロニがハッとした。

「鍵を勝手に作ったのはごめんなさい。俺、絶対に喋らないから」

「人の口には戸が立てられないって人間は言うんだったか」

「キメル!」

ソータが怒ったがキメルは目を細めてロニを見つめている。

「絶対約束する。ソータ、証人になってよね」

「分かった」

ソータが頷くとロニはよーしと腕を振り上げた。

「じゃ、早速行ってみよう」

ロニの襟首を掴んだシヴァである。

「駄目よ。先に勉強なさい。フレンも言ってたわよ。あんた全然勉強しないって」

「うう」

「やっぱりクソガキは自分の行動も律せないのか」

「ぐぬぬ」

キメルの挑発したような言葉にロニがぐっと体に力を入れている。

「俺、ちゃんと勉強するから今夜行くからね!」

シヴァもロニの様子を見て仕方ないわねと呟いた。

「集中してやれば覚えられるはずよ。ソータ、この子の勉強見てあげて頂戴」

「承知」

ソータは杖を取り出した。ロニがそれに驚いた表情を見せる。

「え?なんで杖?」

「私の地獄レッスンを受けてもらいましょう」

「え?ええええええ」

ロニの悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。

***

「はあ、ひどい目に遭った。ソータってばさりげなく難しい問題出してくるんだもん」

「ソータは5歳からあの方式でみっちり勉強してるんだ。泣き言言うな」

キメルがえいやと前足でロニを軽く蹴る。

「キメルが最近すごくボディタッチをしてくる」

ロニがふわあと顔を緩ませた。

「キメルのこと俺、大好きだよ」

「はあ?クソガキに好かれて嬉しいわけ・・」

ロニが悲しそうな顔をするのを見てキメルは黙った。

「まあクソガキが仲間になったのは間違いないな」

「キメル大好き―」

ロニがキメルの首に抱き着く。はあとキメルは大きく溜息を吐いて見せた。ソータもそれを見てニコニコしてしまう。二人の間には確実に友情という絆が結ばれている。

「よし、これから地下に行くんだし油断しちゃだめだよね」

「うん。準備はしっかりと」

ソータが頷くとロニがよっしと張り切って準備を始めた。

「あいつは地下に籠城でもするつもりなのか?」

キメルの呆れたような口調にソータは笑ってしまったのだった。
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