君とレモンスカッシュ〜ずっと片想いしていました〜

はやしかわともえ

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25話

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いよいよ文化祭当日になっている。いい天気だ。もしかしたら僕は晴れ男なのかもしれない。間違いない。
「おはよー、奏」
「あ、海咲くん、おはよう。ハロウィンの衣装が出来てきてるよ」
「あ!コスプレするんだったな?!」
これは、海咲も忘れていたな。
「コスプレって俺、したことないんだ」
「僕も初めてだよ」
ガシッと肩を掴まれる。
「なぁ奏、メイドさんしてくれないか?」
この間の話か。
「うーん、海咲くんがしてくれるならいいよ?」
この世の真理、そう、等価交換だ。
「え、俺がメイド?面白そうだな」
海咲がニッと笑う。えぇ、嫌がるどころかノリノリ?
「俺なら可愛いメイドさんになれるだろ?」
「なれると思うよ」
海咲姫がそう言うんだから間違いない。もう海咲は僕にとってお姫様みたいな扱いになりつつある。圧倒的にカッコいいのは海咲の方なんだけど。
「今日の呼び込み頑張ろうな!完売目指そうぜ!」
「うん!」

文化祭というだけあって、今日はいつもの学校とは様子が違っている。僕は午後、ほぼ自由時間だった。もちろん海咲もだ。空いている時間、一緒に校内を回ろうと誘おうか迷って、結局誘えていない。
「なぁ奏?」
「なあに?」
「お前、午後空いてるよな?」
「うん…」
僕はドキドキしてきた。もしかして。
「一緒に文化祭回ろうぜ!ってか、誘ってくれよ」
「うん、ごめん。他の人と約束してるかなって…」
「お前が一番仲良しなんだからそんなわけないだろ」
僕はドキッとしてしまった。僕が海咲と一番仲良し?嬉しい。
「ありがとう、海咲くん」
「奏」
腕を引かれて抱き締められていた。幸いなことに他の生徒はいない。
「俺にとってお前は大切な存在なんだよ」
「海咲くん…」
海咲の顔が赤くなっている。あぁ、好きだな。ずっと片想いをしたまま、僕は先に進めない。いつまでこのままでいるつもりなんだろう。
「あのね…」
「待った。俺から言いたいから」
「海咲くん?」
「奏、俺は…」
その瞬間チャイムが鳴り始める。文化祭が始まる時間だ。
「奏、後で言う!チラシを取りに行こう」
「う、うん」
僕たちはそれぞれ10部程チラシを持って校門を中心に散った。宣伝は大事だ。僕たちのクラスはくじ引きでかなりいい場所に店を構えることが出来ている。お客さんがどんどん入ってくる。去年より入りが良いんじゃなかろうか。さて、ここで立ち尽くしていてもしょうがない。お客さんロックオン。
「焼きそば屋やっています。お飲み物も冷えているのでお立ち寄りください」
「あら、お店この近く?」
「はい、校門前のお店です。よろしければいらしてください」
「ありがとう」
よし、配れた。僕は1人、思っていた。チラシ、100部じゃ全然足りないんじゃないかな?
お客さんが次から次に、どんどん入ってくるので、僕はしらみつぶしにお客さんに話しかけた。
もうチラシをもらったよというお客さんもいたので失礼しましたと下がる。こんな感じで全部配り終えた。店に戻ると行列が出来ていた。え、何これ?クラスの男子が話しかけてくる。
「一ノ瀬、ビラ、配り終えたのか?団扇、もうないんだよ」
はいー?あんなにあったのに?
「焼きそばも午後まで持ちそうにないんだ」
「え?だって多めに材料入れたって…」
僕の言葉に彼は首を横に振った。
「入れたさ。ただ今日は人が多くて」
どうやら思っていたより盛況らしい。これは誰も予想していなかったことだ。僕は食べるスペースのゴミを集めたり、テーブルを拭いたり水を配ったりしていた。店舗にチラシを配布していた子たちが戻ってくる。海咲もだ。僕は彼らに話しかけた。
「皆、お疲れ様、お水飲む?」
「飲む!!」
「ちょっと待ってね」
僕は紙コップを人数分出して水を注いだ。
「はい、どうぞ」
皆紙コップを取るなり一息で飲み干している。もう秋になってくれてもいいのに、まだ真夏日が続いている。
「お替りいる?」
「いる!!!」
僕はまた水を注いだ。
「奏ー!」
名前を呼ばれてそちらを見ると、お母さんがいる。僕は手を振った。海咲のお母さんもいる。
お水をクラスメイトに任せて、僕はお母さんたちの元に駆け寄った。
「なぁに?すごく並んでるじゃない」
「うん、そうなの。もしかしたらもう売り切れになるかもって」
「やだ!皐月さん、早く並びましょう!」
「そうね。奏くん、ありがとう」
海咲の方を見たら首を振っている。
お母さんが来てくれたから、照れているらしい。可愛いなぁ、本当。

「あー、外は暑かったな」
僕たちは講堂でお昼を食べている。校舎内は基本的に涼しい。
「まさか母さんが来るとは…」
むむ、と海咲が呟く。
「あれ?うちのお母さんが誘ったんだけど知らなかったんだ?」
「知らなかった…言ってくれればいいのに」
「海咲くんをびっくりさせたかったんじゃない?」
僕はふざけてこう言ったのだけど、海咲は真顔でそうだったのかと言っている。こうゆうとこ、可愛いな。
「なぁ奏、午後は何見る?」
「体育館で劇とかやってるんだっけ?合唱部のリハもするんだったよ」
「あぁ。行かないとな」
僕は先程のことをふと思い出していた。海咲が僕に何か言おうとしていた。
「海咲くん、朝のこと覚えてる?」
「あ…あぁ」
海咲も思い出してくれたらしい。僕たちはしばらく見つめ合った。
「えーと、俺、前にも言ったけど奏が好きなんだ」
「それって友達として?」
海咲の顔が赤くなる。僕もドキドキしていた。
「多分違う…と思う。奏と一緒にいたいんだ。よければ恋人になって欲しい」
「本当に?」
「本当だ。俺はお前が好きなんだ」
僕の目から涙が溢れていた。嬉しかった。
「ごめん、嫌か?」
「ううん、違うの。嬉しいんだ」
「奏…」
フッと海咲が笑う。
「これからよろしくな」
「こちらこそ」
僕たちは握手をしていた。そのおかげかステージの合唱部の発表も自然に出来た。海咲が見ていてくれて僕は嬉しかった。
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