カラスの月夜

はやしかわともえ

文字の大きさ
上 下
19 / 20
4

ご褒美

しおりを挟む
気が付くと俺は茉莉也の家で寝ていた。

「月夜、起きた?」

茉莉也が俺の髪の毛を撫でる。

「茉莉也、俺」

「うん、よく頑張ったよ。偉かったね、月夜」

「違う」

「ん?」

褒めてもらいたいけど、それだけじゃないんだ。
でも言うのはなんだか恥ずかしいなあ。どうしたら伝わるんだ?
困っていると茉莉也は笑った。

「月夜は頑張ったしいい子だったから、ご褒美が欲しいよね」

さすが茉莉也!
期待が膨らむ。

「はい、特製ハンバーグ、ジャンボサイズだよ」

茉莉也がにこやかにハンバーグを見せてきたので脱力しそうになった。
いやそれはあとで食べるけど!

「違う!茉莉也の意地悪!」

やっと言うと茉莉也はまた笑う。

「嘘だよ、怒らないでよ」

「もういい」

俺はぷい、とそっぽを向いた。
茉莉也なんかもう知らないんだ。

「月夜」

茉莉也に真剣な声で囁かれる。
俺はついそちらを見てしまった。
茉莉也が覆いかぶさってくる。

「俺の鴉さん、機嫌を直して?」

「茉莉也が意地悪しないなら直す」

むすっと答えるとそっとキスをされた。

「ね、月夜?二人きりになれるとこ、いこっか?」

茉莉也に腕を引っ張られる。
連れてこられたのは茉莉也の家の裏にある離れだった。

中に入ると床があちこち軋む。

「月夜、君を俺にくれる?」

それがどういう意味なのか、わからなかったわけじゃない。
それに、俺は望んでそうしたかった。

「茉莉也のものにして欲しい」

ずっとそう思っていた。

「月夜、好きだよ。愛してる」

「ん、俺も」

離れの窓から月明かりが差し込んでいた。
しおりを挟む

処理中です...