男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ

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寮生活

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「あぁあ…疲れた…」

樹はフラフラしながら自分のベッドに荷物ごと倒れ込んだ。入学式の後、学校の行事や部活の紹介、授業の進め方や学び方について教室で話を聞いた。

樹はあまりの情報量の多さに目が回りそうになった。
そして今は学校の敷地内にある寮の部屋にいる。樹にあてがわれたのは部屋の奥側のスペースだった。

ベッドの横に木で出来た勉強机と収納棚が置いてある。今はがらんとしているが、そのうち物で溢れ返るのは間違いない。


「わ…大丈夫?」

ふと、声のした方を見ると、黒縁眼鏡を掛けた少年が荷物を抱えて困ったように立っている。樹は慌てて起き上がった。
ここにいるということは、彼は自分のルームメイトなのだろう。

「あ!えーと、大丈夫!」

あまり説得力のない大丈夫だったが、相手は納得してくれたらしい。
樹の隣にあるベッドに荷物を置いてから腰掛けた。
どうやら樹と話をしてくれる気になったようだ。
それに樹はホッとする。

「お、俺、高山樹。
マネジメント科だよ、君は?」

「僕は明日葉風あしたばふう
君と同じマネジメント科だよ、よろしくね」

「よ、よろしく!!えーと、風くんって呼んでいい?」

「風でいいよ。君って、もしかして双子だったりする?」

「あぁ、かっちゃんと同じクラスなんだ?
身長が違いすぎるからあんまり双子って感じじゃないんだけど」

風は樹の言葉にくすりと笑った。
優しい笑い方に樹はホッとする。

「克樹とも話したけど、樹のことをすごく心配してたよ。
多分…」

その瞬間、ブーブーと樹のスマートフォンが振動し始める。
画面を見ると克樹からの着信だった。
風が笑って言う。

「出てあげて?」

樹は言われた通り、画面をタップした。

「かっ「いっくううぅうぅん!!!寂しいよぉー!!早く会いたいよー!夕飯一緒に食べようよおー!!」

「か、かっちゃん!落ち着いて!ね?」

克樹は泣いているようで樹はすごく心配になった。

(もしかして誰かに意地悪されたのかな?)

そんなことを思っていると克樹がポツポツ話し出す。

「いっくん、ここってヤローばっかりでみんな臭いよ。なんでみんないっくんみたいに可愛くないの?俺泣いちゃう」

克樹の言葉に樹は固まった。さっと体温が下がったような感覚を覚える。

「兄貴、よく聞いて?
ここ、男子校だよ?男しかいないの。
後、俺は可愛くないから」

「いっくん、お願い。怒らないでよ」

「かっちゃんがわがまま言わないって約束できるなら怒らないよ?」

「分かった。もう言わない。
夕飯一緒に食べてくれる?」

「当たり前じゃん」

「今からそっち行く!!」

「え…」

プツリと通話が切れる。
その直後に部屋のドアを軽く叩かれた。
ドアはセキュリティ上、オートロックになっている。
生徒はそれぞれ自分の部屋のカードキーを持っているのでそれでドアを開閉する。

樹がドアを開けると、克樹に飛び付かれた。

「いっくん!よかった!」

「かっちゃん、苦しいよ」

すりすりと克樹に頬ずりされる。

「二人って本当に双子なんだね?」

風が困ったように声を掛けてくる。
他人からすれば何を見せられているのだろうという状態だ。

「あれ?いっくんのルームメイト、風なんだ?」

「うん。そうだよ、克樹。二人共、これからもよろしくね」

風が柔らかく微笑む。
彼も厳しい審査を乗り越えてこの学校に入ってきただけのことはある。
樹と、克樹は彼の表情にぽけっと見惚れることしか出来なかった。

「樹、先に荷物片付けよう。
明日から授業が始まるんだし」

風がベッドの上に置いた荷物を取り出し始める。先程教科書を買ったのだ。
そのすぐ後に名前を書かされた。

「そ、そうだね。かっちゃんは片付けた?」

「ばっちり。いっくんに一秒でも早く会いたかったし」

「ははは…」

克樹の勢いには毎回振り回されている樹である。
長年振り回されているので、だんだんそれにも慣れてきていた。
樹も自分の荷物をほどいた。
明日必要な教材やノート、筆記用具は通学鞄にしまう。
他に着替えやタオルなどの日用品も取り出す。
寮では基本的に、ジャージでいるようにと言われている。
何か用事などで、学校外に出る場合は私服でもいいようだ。
克樹はすでにジャージを着ている。
学年毎によって色が違うようで樹たちは緑色だった。

「わ、もうすぐ6時じゃん!夕飯食べたりしないと!」

風が慌てたように言う。
樹も夕飯が6時半までであることを思い出した。それに風呂にも入らなければならない。
今日は緊張していたせいか、体が凝り固まってしまっている。

二人はすぐさまジャージに着替えて、克樹と共に食堂に向かった。

「んまー!」

夕飯の献立は大きな分厚いトンカツだった。
ご飯と味噌汁はおかわりできる。

「本当だ。美味しいね、かっちゃん」

「飯美味いの最高」

克樹が白米をガーッとかきこんでいる。

「おかわりおかわりー」

克樹は丼を持って立ち上がった。

「ねえ、克樹っていつもあんな感じなの?」

風にそっと尋ねられて、樹は笑ってしまった。 

「おっきいワンコみたいでしょ?
まだ抑えてるけど普段はもっとワンコだよ」

「へえ、そうなんだ」

「風は平気?ああいうタイプ」

風はうーん、としばらく唸っていた。そして樹の方に顔を寄せてくる。

「正直なところ、最初、狼だと思って…」

「ははっ!確かに」

風の喩えに思わず笑ってしまう。

「なになにー?誰が狼なのー?」

「今の聞こえてたの?!」

風が驚くのも無理はない。克樹はものすごく五感が研ぎ澄まされた人だった。


「かっちゃんって意外とすごい人だよ?」

「意外とは余計だろー!」

こうして一日目の夜は過ぎていった。
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