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餌作り
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「お願い、樹くん!最近赤ちゃんが産まれたの」
「は…はあ」
樹は牡丹に向かって頷いていた。
今日の樹は日直だった。
そう思って早めに教室に来たら、牡丹に放課後、夢プロ内で飼っているウサギの世話を頼まれたのだ。
どうやら最近子供が産まれたらしい。
それに加えて、今日は普段ウサギの世話をしている生徒が運動部の大会で不在なのだという。
樹はウサギにあまり触れたことがない。
少し不安だったが、言われたようにやるしかない。
「樹殿、おはよう」
疾風がやって来る。彼は部活の朝練を終えてきたらしい、ジャージ姿だった。
「あ!おはよう、疾風」
「む…何かあったか?」
まだ彼とは付き合い始めて短い。だが、疾風はとても察しのいい人だった。
「うん、急にウサギの面倒を見ることになって」
「ウサギか。俺も飼ったことはないが、秋月先輩が放課後、面倒を見ているのを見たことがある」
「え?秋月先輩が?」
「俺も手伝おう。秋月先輩のことをもっと知りたいからな」
確かにその通りだ。
もっとユニット内の皆のことを知った方が、これからの曲作りのためにはいいだろう。
「ありがとう、疾風」
そう礼を言ったら疾風が頷いてくれた。
✣✣✣
二年の教室のあるフロアに行くと、健悟がいた。楓がいないか尋ねてみる。
「楓なら調理室だぞ。ウサギの餌を作ってるみたいだな。手伝いなら早く行った方がいいぞ」
健悟に礼を言って、樹と疾風は調理室に急いだ。楓がトントンとリズミカルに野菜を切っている。手付きから慣れているのだと分かった。
「お前達か。どうした?」
「あ、あのウサギの面倒を見るのを手伝いたくて」
樹が言うと、楓が頷く。
「それは助かるな。今日は一人だと思っていたから…」
「秋月先輩は毎日ウサギの面倒を見ているのか?」
疾風が尋ねると楓が頷いた。
「あぁ。動物が好きなんだ。実家では犬と猫を飼っている」
楓が優しい理由が分かった気がする。
一見威圧的に見えるが、こうして話してみないと分からないことが沢山ある。
それは他のメンバーにも言えることだろう。
もっとみんなを知りたい、樹は純粋にそう思った。
楓が切った野菜をビニール袋に入れる。
「今日は小屋の掃除があるからいつもよりハードだぞ」
楓が面白そうに言う。前より自然な優しい表情だ。
「頑張ります!」
「俺も最善を尽くそう」
小屋の掃除のためにうさぎを簡易的なケージに移す。
樹は楓からウサギの抱え方を教わった。
抱えてみると、もふもふで温かい。
「わぁ、可愛い」
疾風が樹の隣から餌をやる。するとモリモリ食べ始めた。
「腹が減っていたみたいだな」
疾風もどことなく嬉しそうだ。
「疾風、お前もウサギを抱いてみろ」
「うん、やってみよう」
ウサギをケージに移して、小屋の掃除をした。
「わ、もふもふがいっぱい」
克樹がやってくる。
小屋の掃除を終えてケージから小屋にウサギを戻すところだった。
「かっちゃんも抱っこする?」
「するする!」
克樹が目をキラキラさせている。
慎重にウサギを抱きかかえていた。
「よしよーし。今お家に着くからな」
克樹が最後の一羽を小屋に戻した。
これで作業が完了した。
「助かった。そうだ、これからお茶にしないか?いい菓子が手に入ってな」
「いいっすね!」
今日は楓の新しい一面が見られた日だった。
「は…はあ」
樹は牡丹に向かって頷いていた。
今日の樹は日直だった。
そう思って早めに教室に来たら、牡丹に放課後、夢プロ内で飼っているウサギの世話を頼まれたのだ。
どうやら最近子供が産まれたらしい。
それに加えて、今日は普段ウサギの世話をしている生徒が運動部の大会で不在なのだという。
樹はウサギにあまり触れたことがない。
少し不安だったが、言われたようにやるしかない。
「樹殿、おはよう」
疾風がやって来る。彼は部活の朝練を終えてきたらしい、ジャージ姿だった。
「あ!おはよう、疾風」
「む…何かあったか?」
まだ彼とは付き合い始めて短い。だが、疾風はとても察しのいい人だった。
「うん、急にウサギの面倒を見ることになって」
「ウサギか。俺も飼ったことはないが、秋月先輩が放課後、面倒を見ているのを見たことがある」
「え?秋月先輩が?」
「俺も手伝おう。秋月先輩のことをもっと知りたいからな」
確かにその通りだ。
もっとユニット内の皆のことを知った方が、これからの曲作りのためにはいいだろう。
「ありがとう、疾風」
そう礼を言ったら疾風が頷いてくれた。
✣✣✣
二年の教室のあるフロアに行くと、健悟がいた。楓がいないか尋ねてみる。
「楓なら調理室だぞ。ウサギの餌を作ってるみたいだな。手伝いなら早く行った方がいいぞ」
健悟に礼を言って、樹と疾風は調理室に急いだ。楓がトントンとリズミカルに野菜を切っている。手付きから慣れているのだと分かった。
「お前達か。どうした?」
「あ、あのウサギの面倒を見るのを手伝いたくて」
樹が言うと、楓が頷く。
「それは助かるな。今日は一人だと思っていたから…」
「秋月先輩は毎日ウサギの面倒を見ているのか?」
疾風が尋ねると楓が頷いた。
「あぁ。動物が好きなんだ。実家では犬と猫を飼っている」
楓が優しい理由が分かった気がする。
一見威圧的に見えるが、こうして話してみないと分からないことが沢山ある。
それは他のメンバーにも言えることだろう。
もっとみんなを知りたい、樹は純粋にそう思った。
楓が切った野菜をビニール袋に入れる。
「今日は小屋の掃除があるからいつもよりハードだぞ」
楓が面白そうに言う。前より自然な優しい表情だ。
「頑張ります!」
「俺も最善を尽くそう」
小屋の掃除のためにうさぎを簡易的なケージに移す。
樹は楓からウサギの抱え方を教わった。
抱えてみると、もふもふで温かい。
「わぁ、可愛い」
疾風が樹の隣から餌をやる。するとモリモリ食べ始めた。
「腹が減っていたみたいだな」
疾風もどことなく嬉しそうだ。
「疾風、お前もウサギを抱いてみろ」
「うん、やってみよう」
ウサギをケージに移して、小屋の掃除をした。
「わ、もふもふがいっぱい」
克樹がやってくる。
小屋の掃除を終えてケージから小屋にウサギを戻すところだった。
「かっちゃんも抱っこする?」
「するする!」
克樹が目をキラキラさせている。
慎重にウサギを抱きかかえていた。
「よしよーし。今お家に着くからな」
克樹が最後の一羽を小屋に戻した。
これで作業が完了した。
「助かった。そうだ、これからお茶にしないか?いい菓子が手に入ってな」
「いいっすね!」
今日は楓の新しい一面が見られた日だった。
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