真実のひとつ

はやしかわともえ

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デート2

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昼より少し前、あたしたちは動物園の駐車場にいた。
都市部とはいえどちらかといえば、山の方にあるせいか肌寒いけど、天気はいい。
車を降りて入口でチケットを買う。
(タカヤさんが全部お金を出してくれた)

中に入ると早速ヤギがいた。
小さいヤギもいて可愛らしい。子供かな。
メェメェ鳴いている。

「アカリちゃん、餌がありますよ」

「わぁ、ホント」

木の台の上に野菜の入った紙コップが並んでいた。一つ200円と書いてある。

「餌、やってみるかい?」

タカヤさんが小銭を箱に入れる。
一津さんは野菜の紙コップの中から選んで手に取った。
ヤギに野菜をおっかなびっくり近付ける。
そのせいで、ヤギが野菜をなかなか食べられない。

「ははは」

タカヤさんが吹き出した。

「一津、それじゃヤギも食べられないよ」

一津さんといえば、ちょっと顔が赤い。
可愛いな。

「貸してご覧」

タカヤさんに言われて一津さんは紙コップを手渡した。
ヤギに野菜を近付けて食べさせる。
バリバリと音を立てて食べるのが迫力だ。

「一津、おいで」

タカヤさんが手招きする。
一津さんはどうするんだろう?なんて、あたしはハラハラしていた。

「や、ヤギさんの為ですからね!」

一津さんが明らかに照れているのがわかる。
意地っ張りだなあ。
それからあたしたちは、ヤギさんたちに沢山餌をあげた。

しばらく歩いていくと、大きな白い看板が突然道の真ん中に現れた。

「ショーの時間が書いてありますよ」

「ホントだ」

あたしの言葉にタカヤさんが頷く。

次の回は11時半かららしい。
牧羊犬のショーのようだ。

「行ってみますか?」

「行きましょう!」

よかった、一津さんが楽しそうで。

地図を見ると、少し距離がある。
座れるかな。
一津さんはキョロキョロしながら歩くから、正直危なっかしい。

「アカリちゃん!見てください!」

一津さんが指さした先にはくりっとした目の動物がいた。
可愛い。

「メガネザルだね」

タカヤさんの言葉に一津さんは頷いた。
少しいい雰囲気になってきたかも?

「あ、ショーですよね!すみません」

「大丈夫ですよ、一津さん」

それから少し急いであたしたちはショーの会場に向かった。
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