5 / 45
千尋×加那太
加那太・キッチンカーのお手伝い(後編)
しおりを挟む
「で、あたしに聞くんですか?」
睨まれながらツン、と聞かれて俺はげんなりした。まぁ仕方ない。今は聞いている側だし。職場の後輩である石田は加那とかなり仲がいい。何か知らないかと思ったらやはり何か知っているらしい。
「頼むよ、何か知らないか?」
「ただで、なんて言いませんよね?」
「何がいいんだ?」
等価交換ってやつか。
「最近好きなパックがあるんですよね!
それでどうですか?」
石田が急にイキイキし始めた。女の子のことは未だによく分からない。
「分かった。で、加那の欲しいものって…」
石田がため息をつく。
「本当に千尋さんってダメ男ですよね。押し倒して気持ち良くして無理に聞き出せばいいのに」
「お前な…」
石田って時々めちゃくちゃ恐ろしいことを言うよな。女の子ってこんなもんなのか?
「加那さんが欲しい物は指輪です。可愛いデザインなんですよ。これなんですけど」
石田がスマートフォンの画像を見せてくれる。それは星の刻印が入ったシンプルなデザインの指輪だった。どうやらペアリングらしい。
「まぁ、あたしが加那さんに勧めたんですけどね」
「石田…お前…」
じろっと睨んだら石田が笑い出す。
「加那さんから聞き出せない千尋さんに問題があると思いますよー」
俺はそこで言葉に詰まった。その通りだからだ。最近の俺は加那にちゃんと向き合えてなかったかもしれない。
加那が冗談でも「これが欲しい」って言ってくれているだけでも随分違う。今回の加那は黙ってしまった。今日、加那とちゃんと話そう、俺はそう決意した。
✣✣✣
家に帰ると加那がカレーを作っていた。カレーのいい匂いがする。
「お帰りー、千尋。怖い顔してどうしたのさ?人でも殺してきたの?」
「人殺してたら返り血を浴びるだろうが」
「確かに!千尋、名探偵!」
そんなの小学生でも分かると思うんだけど。加那はカレーをお玉で時々かき混ぜながら煮込んでいる。もう仕上げの段階だ。
「加那、石田から聞いたけど、指輪欲しいんだって?」
加那がハッとしたような顔をして、俯いた。
「可愛いなって思ったの。でも千尋にはいつも色々買ってもらってるから」
「そんなの心配しなくていいのに」
「うん」
加那がレンジの火を止めて、おれに抱き着いてきた。
「千尋、ぎゅってしてよ。チューもして」
そう強請られると嬉しくなる俺は単細胞かもしれない。
「ン…ふぁ…っん」
加那を抱き寄せてキスをした。加那からキスをしてほしいだなんて、よっぽど気持ちが盛り上がっている証拠だ。こんな時にお願いしておかないと、俺は大変困る。
「加那、抱いていいか?」
「うん」
加那が恥ずかしそうにはにかんだ。可愛いよな。指輪のこと、もっと聞き出してみるか。俺は加那を抱き上げたのだった。
おわり
睨まれながらツン、と聞かれて俺はげんなりした。まぁ仕方ない。今は聞いている側だし。職場の後輩である石田は加那とかなり仲がいい。何か知らないかと思ったらやはり何か知っているらしい。
「頼むよ、何か知らないか?」
「ただで、なんて言いませんよね?」
「何がいいんだ?」
等価交換ってやつか。
「最近好きなパックがあるんですよね!
それでどうですか?」
石田が急にイキイキし始めた。女の子のことは未だによく分からない。
「分かった。で、加那の欲しいものって…」
石田がため息をつく。
「本当に千尋さんってダメ男ですよね。押し倒して気持ち良くして無理に聞き出せばいいのに」
「お前な…」
石田って時々めちゃくちゃ恐ろしいことを言うよな。女の子ってこんなもんなのか?
「加那さんが欲しい物は指輪です。可愛いデザインなんですよ。これなんですけど」
石田がスマートフォンの画像を見せてくれる。それは星の刻印が入ったシンプルなデザインの指輪だった。どうやらペアリングらしい。
「まぁ、あたしが加那さんに勧めたんですけどね」
「石田…お前…」
じろっと睨んだら石田が笑い出す。
「加那さんから聞き出せない千尋さんに問題があると思いますよー」
俺はそこで言葉に詰まった。その通りだからだ。最近の俺は加那にちゃんと向き合えてなかったかもしれない。
加那が冗談でも「これが欲しい」って言ってくれているだけでも随分違う。今回の加那は黙ってしまった。今日、加那とちゃんと話そう、俺はそう決意した。
✣✣✣
家に帰ると加那がカレーを作っていた。カレーのいい匂いがする。
「お帰りー、千尋。怖い顔してどうしたのさ?人でも殺してきたの?」
「人殺してたら返り血を浴びるだろうが」
「確かに!千尋、名探偵!」
そんなの小学生でも分かると思うんだけど。加那はカレーをお玉で時々かき混ぜながら煮込んでいる。もう仕上げの段階だ。
「加那、石田から聞いたけど、指輪欲しいんだって?」
加那がハッとしたような顔をして、俯いた。
「可愛いなって思ったの。でも千尋にはいつも色々買ってもらってるから」
「そんなの心配しなくていいのに」
「うん」
加那がレンジの火を止めて、おれに抱き着いてきた。
「千尋、ぎゅってしてよ。チューもして」
そう強請られると嬉しくなる俺は単細胞かもしれない。
「ン…ふぁ…っん」
加那を抱き寄せてキスをした。加那からキスをしてほしいだなんて、よっぽど気持ちが盛り上がっている証拠だ。こんな時にお願いしておかないと、俺は大変困る。
「加那、抱いていいか?」
「うん」
加那が恥ずかしそうにはにかんだ。可愛いよな。指輪のこと、もっと聞き出してみるか。俺は加那を抱き上げたのだった。
おわり
0
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
裏の顔は、甘い低音ボイスとセクシーな歌声の、人気歌い手「フユ」。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度だが、情が深く人をよく見ている。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる