棺に花を添えて

はやしかわともえ

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おまけ

ミカゲとデートmemo①(ミカナー)

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①お花見

厳しい冬が段々と遠ざかって、春が来ている。

「ナーちゃん、ミカゲさんから電話」

夜、自室で学校の課題をしていたらリヴァさんが呼びに来てくれた。ミカゲさん、どうかしたのかな?電話してくれるなんて嬉しい。るんるんしながら僕は電話口に出た。

「ミカゲさん、こんばんは」

「こんばんは、ナーシャ。今週末お花見に行かない?お祭がやっているんだって」

お祭、楽しそうな響きだ。

「リヴァさんに聞いてみます。ちょっと待っていてくださいね」

僕は電話を保留にした。

「リヴァさん、あの、ミカゲさんがお花見に誘ってくれて」

「18時までに帰ってくるならいいよ。約束できる?」

「やったあ!約束する!」

僕は嬉しくなってミカゲさんに伝えた。

「ミカゲさん、リヴァさんがいいって言ってくれて。18時前には帰らなきゃなんですけど」

「良かった。じゃあ朝の10時に迎えに行くね」

「お願いします」

電話を切った僕はほう、と息を吐いた。嬉しいけどなんか緊張するかも。

「ナーちゃん、お茶飲む?アップルティー淹れようか?」

「飲む!」

リヴァさんが淹れてくれるアップルティーは最高に美味しい。僕はふうふう息を吹きかけて冷ましながら飲んだ。

「ナーちゃん、ミカゲさんが皆で食事でもどうですかって」

向かいに座ったリヴァさんが言う。

「皆?」

僕が聞き返すと、リヴァさんは頷いた。

「ミカゲさんとミカゲさんの家族、ナーちゃんと俺とセス」

ん?つまりそれは、お互いの家族にご挨拶というやつだろうか。

「それって結婚するから?」

「そういうことだよね。ミカゲさんのご両親には早めに会っておきたかったし、スケジューリングしてくれると助かるな」

僕は困ってしまった。

「まだ気が早すぎないかな?僕、子供だよ?」

「ナーちゃんはお姫様だからそこらへん厳しいんだよね」

そうだった。リヴァさんも平気でここにいるけど魔界の国王である。全然見えない。

「分かった、ミカゲさんにお話しとくね」

「うん、お願いね。ナーちゃん」



週末になっている。僕は前日から用意をしておいた。淡い水色のニットワンピースに白いタイツを合わせる。暖かさを重視した結果、こうなった。
念の為、ネイビーのコートも合わせる。僕は特別寒がりだ。

「娘が特別に可愛い…!」

着替えて食堂に向かったらリヴァさんにこう言われた。なんだか照れくさい。

「ナーちゃん、これお小遣い」

リヴァさんがお金をくれた。いいのかな?もらうのを迷っているとリヴァさんにお札を握らせられる。

「娘に何かしてやりたいのが父親なんだよ」

そう言われたので僕は受け取った。

「ありがとう、リヴァさん。大切に使うね」

リヴァさんにぎゅっと抱きしめられる。

「寂しいなぁ。ナーちゃんしっかり者だから余計だよ」

「父親が不甲斐ないことを言うな」

後ろからノエルさんに突っ込まれて、皆に笑われている。いつもの宿舎だ。僕はリヴァさんにこう言った。

「パパ。大好きだよ」

「ナーちゃん!!」

キンコンとインターフォンがなる。ミカゲさんが迎えに来てくれたみたいだ。僕たちは揃って玄関に向かった。

「こんにちは、ナーシャ。リヴァさんも」

ミカゲさん、今日もかっこいい。グレーのシャツに白のインナー。下は細身の黒のパンツだ。白のショルダーバックを肩に掛けている。僕はおずおずと前に出た。

「ミカゲさん、こんにちは。今日はよろしくお願いします」

「ナーシャ、今日も可愛いね」

僕の顔の温度が爆発的に上がる。ミカゲさん爆弾威力強すぎ。

「じゃ、いこっか」

「はい」

僕はブーツを履いた。振り返ってリヴァさんに手を振る。

「行ってきます」

「気を付けてね」

「うん!」

いつの間にかミカゲさんと手を繋いでしまっている。ドキドキして手汗をかいてしまった。気持ち悪すぎる。

「ナーシャ、緊張してる?」

ミカゲさんに屈まれて顔を覗き込まれた。

「だってミカゲさんかっこいいもん。さっきから皆ミカゲさん見てるし」

ミカゲさんに右手を握られた。彼がにっこり笑う。

「俺はナーシャしか見てないんだけど」

「ふえ…」

僕はびっくりしてしまった。ミカゲさんが続ける。

「気持ち悪くてごめんね。でもナーシャが可愛いからなんだ」

「ミカゲさん好き」

僕はミカゲさんに抱き着いていた。ぎゅっとしがみついていると優しく背中を撫でられる。

「ほらナーシャ。桜が沢山咲いてるよ」

僕はハッとなった。今日はお花見に来ているんだった。

「ご、ごめんなさい、僕」

大丈夫とミカゲさんが笑う。行こうか、とミカゲさんが手を引いてくれた。しばらく歩くと屋台が並んでいる。

「わぁ、いっぱいある!」

「ナーシャ、何か飲む?食べ物も買おうか」

「僕、お小遣いをもらったんです」

「それはナーシャが欲しいものを買う時に使ったら?画材が欲しいって前に言ってたよね?」

「でも…」

「いいの。俺が誘ったんだから。ナーシャは心配しなくていいんだよ」

「ありがとうございます、ミカゲさん」

それから僕たちは屋台であれこれ買った。屋台の他におしゃれな装飾がされたキッチンカーも数台停まっていた。

「ホットドッグ…」

パリッとしたソーセージを想像したら食べたくなった。

「買おうか」

ミカゲさんがサクッと注文してくれる。
はい、とホットドッグが入った包みを2つ渡される。ホカホカだ。

「ナーシャ、こっち」

ミカゲさんに呼ばれた方を見ると食べるスペースが空いていた。

「よかった、空いてて」

「ラッキーだったね。さ、食べようか」

ミカゲさんが買ってくれたもの。太めにカットされたポテトフライや、カリカリに上がった唐揚げ、そして先ほど買ったホットドッグだ。飲み物はミカゲさんがホットティー、僕はミルクティーを選んだ。

「ナーシャにはこれだけじゃ足りないね。あとで近くのファストフードでも食べようか?」

申し訳なくて僕は俯いた。

「ナーシャ、温かいうちに食べよう。その方が美味しいからね」

「うん」

僕は太くカットされたフライドポテトを手に取った。口に頬張るとじゃがいもがほくほくしている。

「わぁ、美味しい」

ケチャップもあるよ、とミカゲさんが差し出してくれる。夢中になって食べていたら、ミカゲさんが見ていることに気が付いた。僕としたことが、つい食べすぎていた。

「す、すみません」

「あ、ごめん。いっぱい食べるナーシャ可愛いからさ」

「可愛いんですか?」

僕は驚いてしまった。

「うん、綺麗に食べるよね。ご両親が厳しかったりする?」

「えーと、多分食べてる量が人より多いから」

ミカゲさんがぽかん、として噴き出した。

「習熟度の違いなんだ。ナーシャは本当可愛いな」

それは可愛いんだろうか。ミカゲさんとお話しながら食べるのは楽しかった。その後、2人で手を繋いで桜を見ながらぶらぶらした。デートって感じだ。

「ナーシャ、花びら付いてる」

「え…どこ?」

「大丈夫、じっとして」

どうやら頭に花びらが付いていたらしい。桜はあっという間に散ってしまう。当たり前だけどなんだか寂しいなぁ。

「ナーシャ、またデートしようね」

約束と小指を差し出されて、僕はそれに小指を絡めた。

②へつづく
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