夕夏と4人のプリンセス~不思議な贈り物~

はやしかわともえ

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第四話

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「なるほど。その怪しい男が現れたわけだね」

「うん、その人、多分人間じゃない。どうしよう…私、どうしたら」

「夕夏ちゃん、落ち着いて」

トパエルから帰ってきたその日の夜、私は端末でナミネ姫と話していた。
こうして何かあると報告するのが恒例になりつつある。ナミネ姫は私にとても良くしてくれる。それがすごく嬉しかった。

「夕夏ちゃん、君はよくやったよ。
勇気を持ってよく行動したね。そうだ、一度サフィールに来ないかい?」

「え?いいの?」

「あぁ、当たり前じゃないか。
見せたい物もあるしね」

見せたい物?なんだろう。
ナミネ姫の澄んだ声を聞いていたら、だんだん落ち着いてきた。
私が遠くへ飛ばした男が、今どこにいるのか私には知る術はない。
私はあの時、ただ必死に想ったのだ。
彼をできる限り遠くに飛ばせるようにと。
でも彼はまだこの世界にいる。
私にはマギカ姫のような次元を超える魔法は使えないから。

「行ってもいいか、ウル様に聞いてみるね」

そう答えるとナミネ姫が笑って頷いてくれた。端末を切って机に置くと、部屋がノックされる。私は返事をした。

「ゆうかさま、お夕飯の支度できたよ」

「リゼ、ありがとう」

私がそう答えると彼女は笑った。
テーブルにつくと、ウル様の姿はない。

「ウル様でしたらお仕事をされていますよ」

私の気持ちに気が付いたのか、ミカエルさんがそう答えてくれた。
ウル様は忙しい。夏休みに入ってから、私にずっと付き合ってくれている。
ウル様にももっとゆっくり休んでほしいなぁ。私には見せないけれど、きっと大変なんだと思う。

「いただきます」

「本日のメインは牛のタンシチューになっております。デミグラスソースをたっぷり付けてお召し上がりください」

ミカエルさんがいつものように説明してくれる。
私はナイフとフォークで分厚くて柔らかなタンを切り分けた。美味しそう。
こうして温かいご飯を毎日食べられるのだって当たり前じゃない。
私はそれを知っている。
あの時の地獄のような毎日を。

「夕夏様、大丈夫ですか?」

ロゼが心配そうに声を掛けてくれる。
私は首を横に振った。
みんなに心配は掛けたくない。

「大丈夫だよ、ロゼ」

「本当に?」

ロゼに見つめられる。

「うん、本当だよ」

私が笑って答えるとロゼはようやく頷いてくれた。

(美味しかった)

パジャマに着替えながら、先程のタンシチューを思い出す。
とろとろのほろほろだった。
デミグラスソースも濃厚だったなぁ。

(あ、ウル様におやすみだけ言ってこよう)

私はそう思って部屋を出た。
ウル様の部屋は二階の一番奥にある。
ノックするとすぐに返事が返ってくる。

「夕夏…すまないがクシマキは呼べるかな?」

ウル様に突然こんなことを言われて、私は驚いた。でも言われた通りにする。

「クシマキ」

クシマキは現れなかった。
どうしたんだろう。

「やはり…」

ウル様が呟く。

「ウル様、どうしたの?」

ウル様がパソコンの画面を私に見せてくれた。それは地図だ。赤い点が点滅を繰り返している。

「先程から何者かわからない相手からこれが送られてきてね。
おそらくクシマキだ。あの男にずっと張り付いているようだよ」

「えぇ?!」

なんて危ないことを。
クシマキは実体を持たないとはいえ。

「奴はこちらに向かってきている。
なんとかしなければ」

ウル様が手を組む。

「あ、そういえばナミネ姫が見せたい物があるからって」

私は先程のナミネ姫との会話をウル様にした。

「そうか。ナミネのことだ、何かあるんだろう。明日、ロゼを連れてサフィールに行きなさい。
私はあの男の足を止める」

「そんなことできるの?」

ウル様は笑った。

「わからない。ただ、彼を止めなければこの世界が危険なのは間違いないよ」

確かにその通りだ。

「わかった」

「ナミネには私から連絡しておこう」

おいで、とウル様が手を広げる。
私は彼にしがみついた。

「夕夏、私達は大人だ。
君を守る義務がある。
無理をしてはいけないよ」

「うん、ありがとう。ウル様」

私はおやすみを言って部屋に戻った。
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