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第四話
木陰にて
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ここは…どこだ。
「龍牙、気が付いた?」
俺が起き上がるとあのガキ、夕夏がいた。
俺達は大きな木の下にいた。
葉の間から光が射し込んでいる。
どこなんだ。
「ここはなんだ?俺になにをするつもりだ!」
夕夏は笑う。
「龍牙、落ち着いて。
ここは姫君たちの力を借りて、私が作り出した異次元空間なの。
これからここに姫君たちを呼び出すんだよ」
こいつが何を言っているのかさっぱりわからない。
俺が黙っていたら夕夏が何かを呟いた。
「クシマキ、いる?」
「は、夕夏姫」
なにやら二人が話している。
俺は周りを観察してみることにした。
周りには高い草が生い茂って心地いい風が吹いている。
(久しぶりだな)
こうして怒りに囚われずにいるのが、あまりに久しぶりで俺は驚いていた。
今まで、ずっと俺は怒り続けてきた。
一族の長の反対を押し切って俺は村を飛び出した。
あの姫君たちの血が繋がるものを皆殺しにするつもりでここまで出てきた。
なのに、あっさり人間に捕まってこんなところにいる。(夕夏は俺が逃げなかったと言ったが、俺にそんな力が残されていなかっただけだ)
「ざまぁねえな…」
ひとり呟いたら情けなくて笑ってしまった。
「龍牙、泣いてるの?」
夕夏が心配そうに俺を見上げてくる。
このガキ、馬鹿なのか?
それかよほど肝が据わっているのか。
俺はお前やお前の仲間を殺そうとしたんだそ。
「お前、怖くないのかよ」
夕夏に改めて尋ねると首を横に振られた。
「龍牙は仲間思いの優しいヒトだって分かったから」
「はぁ?人が良すぎるだろ、お前」
夕夏が笑っている。
「夕夏姫!準備完了です!」
「ありがとう、クシマキ!」
一体、これから何が始まるんだ?
まぁいい。何もないよりは楽しめるかもしれない。
俺はそれを静かに見守った。
「龍牙、気が付いた?」
俺が起き上がるとあのガキ、夕夏がいた。
俺達は大きな木の下にいた。
葉の間から光が射し込んでいる。
どこなんだ。
「ここはなんだ?俺になにをするつもりだ!」
夕夏は笑う。
「龍牙、落ち着いて。
ここは姫君たちの力を借りて、私が作り出した異次元空間なの。
これからここに姫君たちを呼び出すんだよ」
こいつが何を言っているのかさっぱりわからない。
俺が黙っていたら夕夏が何かを呟いた。
「クシマキ、いる?」
「は、夕夏姫」
なにやら二人が話している。
俺は周りを観察してみることにした。
周りには高い草が生い茂って心地いい風が吹いている。
(久しぶりだな)
こうして怒りに囚われずにいるのが、あまりに久しぶりで俺は驚いていた。
今まで、ずっと俺は怒り続けてきた。
一族の長の反対を押し切って俺は村を飛び出した。
あの姫君たちの血が繋がるものを皆殺しにするつもりでここまで出てきた。
なのに、あっさり人間に捕まってこんなところにいる。(夕夏は俺が逃げなかったと言ったが、俺にそんな力が残されていなかっただけだ)
「ざまぁねえな…」
ひとり呟いたら情けなくて笑ってしまった。
「龍牙、泣いてるの?」
夕夏が心配そうに俺を見上げてくる。
このガキ、馬鹿なのか?
それかよほど肝が据わっているのか。
俺はお前やお前の仲間を殺そうとしたんだそ。
「お前、怖くないのかよ」
夕夏に改めて尋ねると首を横に振られた。
「龍牙は仲間思いの優しいヒトだって分かったから」
「はぁ?人が良すぎるだろ、お前」
夕夏が笑っている。
「夕夏姫!準備完了です!」
「ありがとう、クシマキ!」
一体、これから何が始まるんだ?
まぁいい。何もないよりは楽しめるかもしれない。
俺はそれを静かに見守った。
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