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宿

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「新作のロボットシミュレーションゲーム面白かったー。絶対買う!」

「あぁ、確かに面白かったな。システムも分かりやすかったし、サクサクレベルも上がったし。しかもクリスマスに合わせて発売するしな」

二人は軽く夕飯を食べてから宿に向かって出発している。昼飯を食べ過ぎた、と二人の意見が一致したのだ。今日はたっぷり遊んで、充実した一日だった。まだ日は落ちていないが、もう午後の7時である。朝の車量が嘘のように少なくなっていた。
ナビがまもなく目的地である宿に到着することを示している。

「もう着くぞ」

千尋の言葉通り、宿にはすぐ着いた。
駐車場に車を停めて建物の中に入ると、豪奢なロビーが目に入る。

「いらっしゃいませ」

フロントにいたスタッフたちが頭を下げる。
千尋がフロントで受付を済ませている間、加那太はスタッフが持ってきてくれた紙コップに入った冷たいお茶をもらって飲んだ。
千尋も受付でお茶を貰っている。どうやら無事手続きが済んだらしい。

「加那、部屋行くか」

「うん」

二人の宿泊する部屋は9階だった。
中に入るとベッドが二つ並んでいる。窓から外を眺めると、街の灯りが点々としている。
夜景は綺麗だったが、加那太は先程から気が気じゃなかった。
千尋とそうゆうことをするかもしれない、と朝から頭のどこかにあって落ち着かなかった。
恋人なのだからセックスだってするだろう。
だが久しぶり過ぎてどうしたらいいか忘れてしまっている。千尋は緊張しないんだろうかと加那太は思わず窺ってしまった。それに気が付かない千尋じゃない。
彼は加那太の腕を優しく掴んで自分の方に抱き寄せた。加那太は咄嗟のことに反応できず、そのまま抱きすくめられる。千尋をこんなに近くに感じるのは久しぶりのことで、ドキドキしてきてしまう。

「加那」

「っ…!!」

耳元で囁かれてぞわりとする。千尋の声が加那太は大好きだ。
声変わりが終わった後もどこか少年らしさが残った声。

「加那、シャワー浴びるか?」

いよいよだ、と加那太は思っていた。
千尋は自分を抱く気だと。
嫌なわけじゃない、むしろ嬉しい。

「ち、千尋から先に浴びて?」

「分かった」

千尋がバスルームに向かったのを見送って、加那太は自分の荷物から着替えを取り出した。そしてもう一つ。

「これ、本当かな?」

手に取ったのはクリーム色の飴玉に見える。
加那太はぎゅっと目を閉じてそれを口に放り込んだ。味は甘ったるいミルク味だ。
思っていたより普通の味に拍子抜けしてしまう。

「なんだ…やっぱり偽物か」

加那太はゆっくりそれを味わった。
甘くて美味しい。
千尋がシャワールームから出てくる。
Tシャツにゆるいグレーのパンツを履いている。もっと臨戦態勢で来るのかと思っていたので、加那太は拍子抜けしてしまった。

「空いたぞ」

「入ってくるね」

加那太は着替えをと備え付けのタオルを手に脱衣場に入った。服を脱いでシャワーを掴もう、とした瞬間だった。
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