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第三話
対千尋戦
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加那太たちがガムル寺院の前に降り立つと、空は曇り、雷が鳴り響いていた。
今にも雨が降りそうである。
何かが起こりそうな気配だ。
加那太は背筋が寒くなるのを感じた。
「加那太、早く行こう!」
「うん!」
二人は寺院の中に駆け込んだ。なんだか様子がおかしい。
「おい!大丈夫か!」
男性が倒れている。
レオが彼の上半身を抱えた。まだ青年である。レオと同じくらいだろうか。
「ユイアじゃないか!」
「れ、レオ様」
「なにがあった?」
「いきなりレオ様にそっくりな男がやってきて、太刀を振るって…」
それだけ言ってユイアという青年は気を失ったようだった。レオが彼を隅に寝かせる。
「加那太、どう思う?」
「千尋に何かあったんだ」
加那太は声が震えるのを止められなかった。すごく怖かった。
「俺もそう思う、加那太はここで待つか?」
レオにそう問われて、加那太は首を横に振った。
「僕も行く。千尋はきっと大丈夫だから」
二人は寺院の奥に向かった。
中では激しい戦闘が繰り広げられていた。火を司る神、イフリートが顕現している。
あちこちに火が燃え広がりとても熱い。
「千尋!!」
イフリートの巨大な拳を太刀で受け止めながら彼はこちらを見て笑った。
「私はもう千尋じゃありません、ハルカです。残念でしたね」
後ろから少女が弓矢で援護している。
「イフリートを傷付けるな!!」
レオも剣を抜く。
「うおおおお!!ハルカぁぁ!!」
レオがイフリートを庇ってハルカの剣撃を受け止める。
(戦闘を止めなくちゃ。そのためにはこうする!!)
加那太は急いで魔力レシピを確認した。
そして一枚を選択する。この魔法を使うには呪文の詠唱が必要だった。それだけ上級に値する魔法である。
「天よ、我が叫びを聞け!炎の化身イフリートをこのカードに封じる!」
イフリートの姿が徐々に消えていく。これならイフリートにダメージを与えられないだろう。あくまでもカードを奪われない限りだが。
加那太はカードをポケットにしまった。
イフリートをハルカらに渡すわけにはいかない。
「チッ、また邪魔をするのね?加那太」
「ハルカさん!お願い!優しいハルカさんに戻って!」
「ハァ?何言ってるの?これが本来の私よ?」
「そんなことない!ハルカは優しくて思いやりのある子だ!
頼むよ、ハルカ!!思い出してくれ!」
レオも叫んだ。
「本当馬鹿な子たち。
私はね、自分の思い通りにしたいの!だから概念化を選んだ!なのに実際は不甲斐ない神ばかり!そんな神は要らないのよ!」
レオが押されている。
瞬間、弓矢が加那太の肩をかすめた。
「いっ!!!」
「加那太!!」
加那太は慌てなかった。
痛みでむしろ冷静になったくらいだ。
「逃げるよ!レオ!!」
加那太はそう叫んでいた。
ワープするための準備を整える。
「待ちなさ!!く!!」
ハルカの動きが明らかに鈍る。
体が自由に動かせないようだ。
「千尋、邪魔をしないで…!」
(千尋!ありがとう)
加那太たちは急いでレオの屋敷がある村へワープしたのだった。
今にも雨が降りそうである。
何かが起こりそうな気配だ。
加那太は背筋が寒くなるのを感じた。
「加那太、早く行こう!」
「うん!」
二人は寺院の中に駆け込んだ。なんだか様子がおかしい。
「おい!大丈夫か!」
男性が倒れている。
レオが彼の上半身を抱えた。まだ青年である。レオと同じくらいだろうか。
「ユイアじゃないか!」
「れ、レオ様」
「なにがあった?」
「いきなりレオ様にそっくりな男がやってきて、太刀を振るって…」
それだけ言ってユイアという青年は気を失ったようだった。レオが彼を隅に寝かせる。
「加那太、どう思う?」
「千尋に何かあったんだ」
加那太は声が震えるのを止められなかった。すごく怖かった。
「俺もそう思う、加那太はここで待つか?」
レオにそう問われて、加那太は首を横に振った。
「僕も行く。千尋はきっと大丈夫だから」
二人は寺院の奥に向かった。
中では激しい戦闘が繰り広げられていた。火を司る神、イフリートが顕現している。
あちこちに火が燃え広がりとても熱い。
「千尋!!」
イフリートの巨大な拳を太刀で受け止めながら彼はこちらを見て笑った。
「私はもう千尋じゃありません、ハルカです。残念でしたね」
後ろから少女が弓矢で援護している。
「イフリートを傷付けるな!!」
レオも剣を抜く。
「うおおおお!!ハルカぁぁ!!」
レオがイフリートを庇ってハルカの剣撃を受け止める。
(戦闘を止めなくちゃ。そのためにはこうする!!)
加那太は急いで魔力レシピを確認した。
そして一枚を選択する。この魔法を使うには呪文の詠唱が必要だった。それだけ上級に値する魔法である。
「天よ、我が叫びを聞け!炎の化身イフリートをこのカードに封じる!」
イフリートの姿が徐々に消えていく。これならイフリートにダメージを与えられないだろう。あくまでもカードを奪われない限りだが。
加那太はカードをポケットにしまった。
イフリートをハルカらに渡すわけにはいかない。
「チッ、また邪魔をするのね?加那太」
「ハルカさん!お願い!優しいハルカさんに戻って!」
「ハァ?何言ってるの?これが本来の私よ?」
「そんなことない!ハルカは優しくて思いやりのある子だ!
頼むよ、ハルカ!!思い出してくれ!」
レオも叫んだ。
「本当馬鹿な子たち。
私はね、自分の思い通りにしたいの!だから概念化を選んだ!なのに実際は不甲斐ない神ばかり!そんな神は要らないのよ!」
レオが押されている。
瞬間、弓矢が加那太の肩をかすめた。
「いっ!!!」
「加那太!!」
加那太は慌てなかった。
痛みでむしろ冷静になったくらいだ。
「逃げるよ!レオ!!」
加那太はそう叫んでいた。
ワープするための準備を整える。
「待ちなさ!!く!!」
ハルカの動きが明らかに鈍る。
体が自由に動かせないようだ。
「千尋、邪魔をしないで…!」
(千尋!ありがとう)
加那太たちは急いでレオの屋敷がある村へワープしたのだった。
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