わがまま姫(♂)でしたが、元皇太子様とラブラブ生活を送り始めました。

はやしかわともえ

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ローゼとヴァルドとリズウィット

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「ふぎゃあ!!ふぎゃあ!!」
リズウィットがヴァルドたちが住む屋敷に来て、間もなく3ヶ月。一緒に暮らすようになって分かったが、リズウィットは夜泣きの激しい子だった。まだまだ小さいがとても元気だ。夜中でも構わず大きな声で泣く。
「リズウィット、なにか怖い夢でも見たのかい?」
ローゼは基本的に夜型だ。夜泣きをされても苦じゃなかった。リズウィットを抱いてよしよしとあやす。ローゼがあやしていると、部屋の扉がノックされる。ローゼが返事をすると、ヴァルドが顔を覗かせた。
「ローゼ、大丈夫?お茶飲むでしょ?」
「ヴァルド、まだ起きていたのかい?」
「仕事してた」
ローゼとヴァルドは普段それぞれの部屋のベッドで眠っている。行為に及ぶ際に、ローゼはヴァルドの部屋のベッドで眠る。ヴァルドに大切に愛されるのはローゼにとって、特別なことになっていた。
「リズウィットもミルクかな?」
「ああ。そうだね」
ローゼはリズウィットを抱えて居間に向かった。ヴァルドは早速キッチンでお湯を沸かしている。もちろんリズウィットのミルクの準備もしている。ローゼが揺すってあやすとリズウィットは一瞬だが泣きやんでくれた。だが、まだグズグズ言っている。
「リズウィット、もしかしておむつかな?」
ローゼはリズウィットの尻を触り確認したが濡れていないようだった。
「うぅ…あぶ…」
まだ言葉を話せないリズウィットだ。ローゼはなんだろうとしばらく考えた。そして思い立つ。
最近、リズウィットのお気に入りのぬいぐるみがあるのだ。ヴァルドがお古だからと近所に住む人からおもちゃをあれこれもらってきたのだ。あの中に、ちょっとくたびれたうさぎのぬいぐるみがあった。耳が垂れた可愛らしい子だ。もちろんリズウィットに渡す前にヴァルドがしっかり洗ってくれたものである。ローゼはうさぎのぬいぐるみをリズウィットの目の前に差し出した。
「リズウィット、これかい?」
リズウィットはじっとうさぎを見つめて、手を伸ばす。ローゼがそっとぬいぐるみを近付けるとニコッと笑った。
「ローゼ、ミルク出来たよ」
「ありがとう、ヴァルド」
ヴァルドの作るミルクは美味しいらしい。ローゼが作った時より沢山飲む。
「リズウィット、ミルクだよ」
ローゼが哺乳瓶をリズウィットの口元にあてがうとごくごく飲み始めた。
「ローゼ、飲ませ方が上手くなったね」
「ふふん、そうだろう?」
ローゼはリズウィットの背中を優しく叩き、げっぷをさせた。だんだんリズウィットがうとうとしてきている。
「リズウィット、おやすみ」
リズウィットはすやすやと眠り始めた。
「もうちょっとでお別れしないとなんだね」
ヴァルドの言葉にローゼはハッとなった。リズウィットはあとひと月ほどで子供のいない裕福な家庭に引き取られることになっている。何度かローゼとヴァルドはその家に行き、リズウィットの話をしていた。
「僕たちといるより、ちゃんとした親御さんがいた方がリズウィットの為になるさ」
「ローゼ」
ヴァルドがそっと肩を抱き寄せてくれる。ローゼは少しだが泣いてしまった。
「ローゼは子供が好きなんだね」
「僕も知らなかったよ」
そうだ、とヴァルドが笑う。
「リズウィットにぬいぐるみを贈ろうよ。リズウィットがずっと大事にしてくれるような素敵なやつを」
「でも、僕はお裁縫がからきしなんだ」
「だからいいんでしょ。俺と二人で作ろうよ」
ヴァルドの提案にローゼも頷いていた。

「ローゼ、何色にしようか?」
ローゼとヴァルドは手芸店に来ている。リズウィットはローゼがおんぶ紐で背負っていた。今はすやすやと眠っている。
「そうだね、リズウィットの好きな色はまだ分からないけど、この薄緑の布は綺麗だね」
「本当だ。綺麗だね。クマのぬいぐるみにしようかと思ったんだけどどう?」
「ああ。リズウィットにはもううさぎがいるからね」
二人は必要な道具を購入し、屋敷に戻ってきた。リズウィットは一度ぐずついたが、ミルクをやるとまた眠ってくれた。
「さて、生地を切ろう」
ヴァルドが道具を取り出して布を広げる。彼はニコニコしながら言った。
「型紙はもう作ったから早速形を取って切るね」
「え?そうなのかい?」
ヴァルドの仕事の早さにローゼは驚いてしまった。
「ローゼは最近忙しいもんねー。俺にもっと頼ってくれていいのに」
「頼っているじゃないか」
むう、とローゼが膨れるとヴァルドに優しく頭を撫でられた。
「ローゼはずっと俺の大事なお姫様だからね」
「っ!!!」
ヴァルドの言葉にローゼは真っ赤になってしまった。
「ほら、ローゼ。型紙に沿って線を引いて」
「あ、あぁ」
ヴァルドが布が動かないように押さえてくれた。
ローゼも慎重に線を引く。
「うん、ローゼ、上手だよ」
「ふう、なかなか緊張する作業だね」
最後の型を取り終えて、ローゼは息を吐いた。ヴァルドが布切り挟みで丁寧に布を切っている。
「よし、全部のパーツを切り終えたね。あとは縫い合わせるだけだ。ローゼは身体を作ろうか?」
「確かに顔を作るよりはマシかもしれないね」
「ふふ、大丈夫。ローゼならすぐに上手になるから。一旦休憩しようか?お茶を淹れるね」
「あぁ」
ローゼはふとベッドで眠っているリズウィットを覗き込んだ。リズウィットと離れがたく思っている自分に気が付き慌てて首を振る。
「ローゼ、寂しいね」
「ヴァルド…そうだね」
だが、将来のリズウィットを思えばこその選択と決断だった。ローゼはそう思い、自分を励ました。

「いたっ…」
「ローゼ、大丈夫だから慌てないの」
夕飯を食べ、食器を片付けたローゼはひたすらぬいぐるみを縫っていた。つい、布ではなく自分の指を針で刺してしまう。
「ほら、指見せて」
「すまないね、ヴァルド」
今日何度目か分からない手当てをしてもらう。
「ローゼ、今日はおしまい。疲れたでしょう?」
「そうするよ。なんだかへとへとだ」
「子育てはへとへとになるよ。毎日のことだしね。俺の場合は両親じゃなくて、じぃがみていてくれたんだ」
「官房長官様は子育てが出来るのだね」
「かなり厳しかったけど優しい人だよ」
「君を見ていれば分かるよ」
二人は笑い合った。

「出来た…!」
ぬいぐるみを作り始めて、既に1週間が経過している。2人とも、仕事の合間を縫いながらの作業だったので、かなり忙しかった。
「すごいね、ローゼ。可愛いよ」
「よかった。お別れの日に渡したいな」
「うん、なら可愛くラッピングしようか」
ヴァルドが自分の道具箱からリボンや造花を取り出した。
「この箱ならぴったり入りそうだね」
ヴァルドが出来上がったばかりのくまのぬいぐるみを箱の中に寝かせた。隙間には色とりどりの造花をたっぷり入れる。箱に蓋をして、リボンで封をした。
「喜んでもらえるといいのだけど」
「大丈夫だよ」

朝、ローゼはベッドからなかなか出られなかった。目はすっかり覚めていたのだが、なかなか起き上がる気にならなかった。今日はこのままベッドの中にいようかとも思っていたが、トイレに行きたくなり断念した。渋々ベッドから出て用を足しに行く。
居間に向かうとヴァルドがリズウィットを着替えさせていた。今日はリズウィットを送り出す日だ。
「あ、おはよう。ローゼ」
「ヴァルド…」
ローゼは感極まって泣いてしまった。ヴァルドが慌てた様子でそばに来る。
「大丈夫?」
「僕はわがままなんだ。分かっているよ」
嗚咽を漏らしながら訴えるとヴァルドに抱き締められていた。
「大丈夫。リズウィットにはいつでも会いに行けるからね」
「でも…」
「なんで躊躇うの?」
「それは…」
「俺たちが同性愛者だから?」
ヴァルドの言葉にローゼは固まっていた。図星だったからだ。同性愛者にはまだ偏見も多い。ローゼの周りには理解者が多くいてくれた。それには随分救われている。
「僕は怖いんだ。大きくなったリズウィットが僕たちに育てられたことを悲しむんじゃないかって」
「ローゼ、リズウィットは優しい子じゃない」
ヴァルドの言うとおりだとローゼも思った。
「ほら、朝ご飯食べよう。食べたら元気になるからね」
「あぁ」
ヴァルドの言った通りで熱々の料理を食べたら少し落ち着いた。
「ヴァルド、君はすごいね。僕はいつもフラフラしてしまうんだ」
「ローゼがフラフラしたら俺が支えてあげるよ」
ヴァルドの優しい言葉に、ローゼはいよいよ泣き出してしまった。
「ローゼ、大丈夫。リズウィットは幸せになれるから」
「っ…ふぐ…ぐす…そう、だね」
「ほら、涙を拭いて」
「ありがとう」

ローゼはいつものように抱っこ紐でリズウィットを抱えた。ヴァルドはリズウィット用のおもちゃや、衣類の入った箱を持っている。二人が作ったぬいぐるみもこの中だ。
「行こう、ローゼ」
「あぁ」
ローゼとヴァルドは願っている。リズウィットの幸福な人生を。

おわり
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