わがまま姫(♂)でしたが、元皇太子様とラブラブ生活を送り始めました。

はやしかわともえ

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ローゼは明日の支度をしている。秋祭りが終わり、もう1週間が経過している。ローゼとヴァルドは明日、入院しているリズウィットに面会するつもりでいた。まだ小さい彼女だが、自発呼吸が出来るようになったとのことだった。医師が言うには、驚異的な生命力だという。退院も間もなくとのことだ。
「ローゼ、明日の準備しているの?」
ヴァルドの声にローゼは振り返った。ローゼの手にはベビー服が握られている。
「あぁ。リズウィットのおくるみを母様が送ってくれてね。明日着せようかと思ってるんだ」
「可愛いね。きっと喜ぶよ」
「あぁ」
ローゼはトランクにリズウィット用の衣類を全て詰め終えた。病院にはちょくちょく顔を出している二人である。いつの間にか看護師たちから顔を覚えられてしまっていた。ローゼは傍の椅子に座った。ヴァルドもやって来て座る。ローゼはとん、とテーブルに置いたトランクを軽く叩いた。
「リズウィットは随分大きくなったね」
「うん。生まれた時は1000グラムもなかったものね」
「今はどれぐらいなんだい?」
「1800って聞いたよ。沢山ミルクを飲むって」
「そうか、たくましい子だね。よかった」
ローゼはリズウィットの本当の両親にリズウィットに近付くなと厳命している。だが、それを後悔する気持ちもあった。
「僕は間違えたのかなと度々思うんだ」
「そんなことはないよ。あの子たちは一度リズウィットを捨てたんだから」
「そうだね。僕は今更恐ろしくてね」
「ローゼ。大丈夫だよ。リズウィットは君が助けたんだからね」
「あぁ。そうだといいんだけど」
ローゼはなんだか落ち着かない気持ちだった。命を、リズウィットを預かると言ってしまったことが少しプレッシャーだったからだ。
「そうだ。ローゼ、クッキー食べない?」
「道理で甘い匂いがするわけだよ」
「うん、何かしてないと俺も落ち着かなくてさ」
ヴァルドも自分と同じ気持ちだったのだとわかり、ローゼはホッとしていた。
「にー」
カリカリと何かが扉を擦る音がする。ローゼは立ち上がり扉を開けた。
「ノーラ、お入り」
猫のノーラは夜、基本的に室内で遊ぶ。その後ろから犬のクーフが現れた。一緒に遊ぼうとついてきたのだろう。二匹はとても仲がよかった。ローゼが屈んで二匹を撫でてやると嬉しそうに目を細める。
「もう、ローゼとすっかり仲良しだね」
「あぁ。歓迎されているようだ」
ヴァルドがお茶を淹れてくるとキッチンに向かう。ローゼは椅子に座り、再び立ち上がった。引き出しからメモ帳とペンを取り出す。それにほぼ殴り書きで文字を記した。トランクにそれをサッと詰める。
「ローゼ、お待たせ」
茶器を持ったヴァルドが戻ってきた。
「ありがとう、ヴァルド。クッキー、沢山焼いたのだね」
「うん。もう無限なくらいに焼いてきたよ」
「明日病院に持って行ったらどうだい?」
「ローゼ天才。熱が取れたら後でラッピングしよう」
二人は焼きたてのクッキーと茶を楽しんだ。

次の日になっている。ローゼはなんとかベッドから這い出た。空気はすっかり冷たくなり、冬の様相だ。眠いながらも階下に向かう。
「おはよう、ローゼ」
「おはよう、ヴァルド。君は毎朝早いね」
「この生活に慣れているからね。大体朝は走ってるし」
「運動してるのかい?」
ローゼは驚いてしまった。
「うん、一応健康のためにね。ローゼも最近早く起きられるじゃない」
「それならいいがね」
むう、とローゼが膨れるとヴァルドが笑った。
「ローゼはローゼのペースでね」
この男には敵わないとローゼは心の中で白旗を上げていた。
「さ、ローゼも起きたし、ご飯にしようか。今日のスープはショウガが入っていて体が温まるよ」
「それはいいね」
二人は笑い合っていただきますをした。

病院に着き、ヴァルドが面会手続きをする。まだ直接リズウィットには会えないが、ガラス越しでも様子を見られるのは嬉しい。
「あの、このおくるみを預けたいのですが」
ローゼはおくるみやタオルをトランクから出し、看護師に渡した。
「あら、可愛いおくるみですね」
「母がリズウィットに送ってくれて」
「まぁ。リズウィットちゃんも喜ぶわ」
看護師が去るのを待って、ローゼはヴァルドに言った。
「僕はお手洗いに行くよ」
「うん、行ってらっしゃい」
ローゼは頷いた。手洗いに行くというのは嘘である。ローゼが向かったのはリズウィットの本当の母親である女の病室だった。病室をノックすると、か細い返事が返ってくる。
「入るよ」
ローゼはそう一言告げて扉を開けた。
「あなたは…」
ローゼの出現に彼女は驚いたのだろう。目を見開いている。
「君にこれを渡しに来た」
ローゼが差し出したのは昨日殴り書きしたメモである。
「これ…」
「リズウィットの退院日さ。あとは君に任せるよ」
ローゼは彼女が返事をする間もなく病室を後にした。
「ローゼ…」
「ヴァルド…」
病室を出るとヴァルドがいた。なんで、と思ったがヴァルドに嘘がつけるわけがないと改めて思う。それくらい二人は親密だ。
「ローゼ」
薄暗い廊下でヴァルドに抱き締められていた。
「ローゼ、君は本当に優しいね。俺はそんな君だから愛しているんだよ」
「怒らないのかい?」
ローゼが驚くとヴァルドは静かに首を横に振った。
「確かにあの子には今でも怒っているよ?でも、ローゼがしたことは間違いじゃないと思う」
「そうか」
「リズウィットのところに戻ろうか」
「あぁ」
二人が戻ると、リズウィットは泣いていた。他の赤ん坊も泣き出している。
「ぱ、パワフルに泣くね」
「子猫どころじゃないよ、これは。でも楽しみだね、ローゼ」
「あぁ」
ローゼは三人の暮らしを思い描いていた。
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