いちゃらぶSS

はやしかわともえ

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気になるあのこは宇宙人!?SS

さらいたい2

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オレと花柳は地図を頼りに、鍵のある場所を目指していた。
こんな格好をしているせいか目立つらしく、あちこちで声を掛けられる。


「お兄さん!冷たいバナナジュースいかが?」

「こっち来て遊んでいって!!」

そんなとき、スマホが鳴る。
画面を見てみるとカナタからのメッセージだった。
写真が添付されている。鍵と地図の写真だ。


「千尋、鍵もらえたよ!」
そんな文が添えられている。

「カナタくん?」

花柳にも写真を見せる。
花柳はしばらく画面を見て、やっぱり、と頷いた。

「カナタくんの持ってる地図と僕らの地図は違うみたいだね」

「おいおい、手が込んでるな」

「僕ね、思い出した」

花柳が考え始める。
何を思い出したのか。

「このゲームって、来場者数で参加者を決める特別なやつなんだよ」

「じゃあオレたち?」

うん、と花柳は頷いた。

「多分君たちが100人目のお客さんだったんだろうね」

ついているのかついていないのか分からないけど、今は前に進むしかないらしい。
カナタともどこかで合流できるはずだ。

「倉沢くん、鍵あったよ!」

机の上に箱がある。蓋に鍵、と書かれていた。
そして「2」という謎の数字。
箱を開けてみると、「ょ」と書かれた鍵が入っていた。

「なんだ?この文字?」

「んー、わかんないけどメモっておくね」

花柳がメモ帳にそれを記している。

「そういや、花柳」

「なに?」

「お前、自分の持ち場大丈夫か?」

花柳はハッとなって青ざめた。
こいつ、こういうとこあるよな。

「僕行かなきゃ!!
後でまたメールする!」

花柳はそのまま走って行ってしまった。

(悪いことしたかな)

とりあえずオレはカナタに合流しないか、メッセージを送ってみた。
なかなか返事がこない。

(どうしちまったんだ?)

「僕、裏庭にいるから」

やっと返ってきたのはこんなそっけないもので、少し心配になる。

(行ってみるか)

オレは裏庭に向かうことにした。


裏庭は校舎の中から通っていかなければいけないらしい。
人はあまりいなかった。
カナタはなんでここを指定したんだろう?

中庭は日陰でひんやりしていた。
セミの声も遠く感じる。

草が鬱蒼と生い茂っていて、違う世界に迷い込んでしまったみたいだ。
そこに立ちすくんでいる人。

なんでカナタが返事を渋ったのか、ようやくわかった。

「カナタ」

名前を呼ぶと、カナタは振り向いてくれた。




「大丈夫か?」

一応声をかける。
カナタは口を尖らせた。

「大丈夫なわけないよ。
僕、こんな格好なんだよ?」

どうやらカナタは女子に間違われたようだ。
昔のことをつい思い出す。
可愛いと言ってしまった、あの時を。

「その、悪気はなかったんだろうぜ」

なんて言っていいか分からず、オレは取り繕うように答えた。

「僕、そんな女の子に見える?」

カナタは俺にぐい、と近付いてきた。

「男の僕じゃだめかな?」

カナタが腹を立てている様子が可愛くて、オレは思わずカナタを抱きしめてしまっていた。

「いや、今のお前が最高だから」

「ホント?」

確かにドレスを着ているカナタも可愛い。認める。
でも好きなのは格好じゃない。
カナタだ。

「前にさ、千尋、僕に可愛いって言ったよね?」

「ああ、言ったな」

「僕が女の子みたいだから可愛いのかなって、女の子にヤキモチ妬いたんだよ」

「そっか」

だからそんなに怒ってたのか。

「じゃあ、なんでオレを許してくれたんだ?」

そっとカナタの顔を覗き込む。



カナタは突然赤くなって、俺から目をそらした。

「だってさ」

「うん」

カナタはしばらく考えてこう言う。

「千尋、僕のこと、好きだって言ってくれたし」

「え?!」

そんなの全く記憶にない。
なにを言ってるんだ!オレ!
カナタは慌てているオレを見て、にやあ、と笑う。こいつは。

「千尋は小学生の時から僕が大好きなんだよね!」

事実だ、反論できなかった。

「千尋、ゲームの続きしよ!」

カナタの顔を見ると、いつもの元気なカナタだった。よかった。

「その格好でいいのか?」

「初め落ち着かなかったけど慣れてきた!」

カナタはぐ、と拳を俺に突き出してくる。

「千尋、絶対クリアするよ!」

「おう!」

オレも拳を突き合わせた。
途中、花柳も戻ってきて、最終的に三人で校内を回った。

最後の鍵をようやく手に入れる。
その鍵には「み」と書かれていた。
数字は1。
鍵は全部で6本あった。

「僕、他の人から聞いたんだけど、鍵が集まったら最初の場所に戻ったほうがいいんだって」


花柳がそんなことを言うので、オレたちは従うことにした。
今は少しでもヒントがほしい。
ゲームに参加させられた場所に戻ると、先程の学生が駆け寄ってきた。

「お兄さん達、鍵が見つかったんですね!」

オレ達は頷いた。
その学生がタブレットを差し出してくる。

「これにキーワードを打ち込んでください!」

「え?!」

カナタが首を傾げる。ここもノーヒントのようだ。
花柳が先程のメモを取り出して見せてくれた。

2「ょ」、5「ょ」、3「う」、4「じ」、6「う」1、「み」

三人でそれを見つめる。
なんかわかった気がする。
二人の顔を見つめると、頷かれた。
どうやらわかったらしい。

「僕が打ち込むね!」

カナタが鼻歌を歌いながら端末を操作する。

「み、ょ、う、じ、ょ、う、と」

そう、花柳の通う大学は明星大学だ。
数字は文字の配列を示している。

エンターをカナタが押すと、タブレットの画面が変わる。
おめでとうの文字が飛び交った。

「やったぁ!」

カナタとハイタッチする。
花柳ともだ。

「お兄さんたち、大正解です!
これ、景品です!」

渡されたのは、無料券だった。
三枚ある。

「好きなお店で使ってください!」

そうして、無事にオレたちはコスプレを終わりにすることができた。

「千尋!たこ焼き食べよ!
ゆづくんもいい?」

「うん、ここのたこ焼き美味しいって有名なんだよ」

二人がわいわいしているのを見て、なんだか懐かしいな、なんて思った。

高校の頃はこれが当たり前だったのに、いつの間にか遠くにいる。

「千尋ー、元気ないー!」

「大丈夫?倉沢くん」

二人に見上げられてオレは笑ってしまった。

「腹減ったな。たこ焼き行こうぜ」

「うん!」

そうしてオレ達は文化祭を楽しんだ。
ちら、とカナタを見ると、ニコ、と笑われる
カナタが許してくれた理由は意外だった。
でも、これでしばらく機嫌よく生活できそうだ。

「カナタくん、青のり、ほっぺについちゃってるよ」

「ホントだー」

たこ焼きを食べながらそっと、テーブルの下でカナタの手を握ると、カナタもやんわり握り返してくれた。

(可愛いよな、ホント。このままさらっちまいたいよ)

カナタの顔は少し赤くなっている。
さらうのはまだ先でもいい。
焦らされるのは案外平気だ。
というか、ずっと待っている。
カナタをこのまま大切にしよう。
オレはそう心に誓った。

おわり
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