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気になるあのこは宇宙人!?SS
千尋'sキッチン
しおりを挟む「ねえ、千尋!たまに千尋の作った餃子食べたいな!」
「餃子?」
カナタは大きく頷いてニコニコしている。千尋はしばらく考えてこう言った。
「じゃあ、花柳呼んでみんなで餃子食べるか?」
「する!!それする!!楽しそう!」
その会話がされたのはある夜のこと。
千尋とカナタは一緒に暮らし始めていた。
なかなかカナタの踏ん切りがつかず、千尋が同棲を迫ってから一年近くが経過していた。
千尋は既に諦めていたが、ある日、カナタがリュックサック一つで転がり込んできたのである。
千尋は驚いたが、嬉しかったのもあって受け入れたのだった。
千尋は専門学校を無事卒業し、就職していた。
初めは緊張したものの、今ではすっかり慣れたものだ。
カナタも無事進級し、三年生になっている。
もう四月も終わりか、なんて千尋は思う。大型連休も直ぐだ。
「カナタ、花柳にメールしてくれ。作るの今度の金曜日でいいよな?」
「うん!あれ?、材料は僕が買っておけばいい?」
「あぁ、頼む」
「了解!」
こうして金曜日を迎えたのだった。
カナタによると、ゆづるの了解も取れたらしい。
千尋は仕事をなるべく早く終わらせてさっさと帰ることにした。
残業なんて始めからするつもりはない。
それに、これからスーパーマーケットに寄る必要がある。
材料はカナタに買ってもらうよう頼んだが、足りなければ困る。
「お疲れ様でした、お先に失礼します」
そう周りに告げて、千尋は会社を出た。早足で歩く。社内で親しい人間はいなかったが、まぁまぁうまくやっている方だろう。
スーパーマーケットに入ると、ひんやりした空気に包まれる。
もうすぐ閉店するためか、割引になっているひき肉が手に入った。
ニラやキャベツ、生姜、にんにくもかごに入れてある。
会計を済ませたところで、ポケットに入れていたスマートフォンが振動したのを感じた。
画面を見るとカナタからだ。
「ゆづくん、来たよー」
そんなメッセージに千尋は「すぐ帰る」、と返信した。
「ただいまー」
千尋が家に入ると、カナタとゆづるが出迎えてくれた。
「おかえり、千尋!」
「お邪魔してます」
「おう、よく来たな」
カナタがご飯を炊いておいてくれたようで、炊飯器が稼働している。
「あのね、倉沢くん」
ゆづるが困ったように言う。
「どうした?」
ゆづるが袋を差し出してくる。
「僕も材料買ってきちゃったんだ」
どうやらゆづるも、足りなければいけないと買ってきてくれたらしい。
カナタに頼んで買ってもらった材料も合わせるとかなりの量だ。
「こりゃ、100個はできそうだな」
「すごーい!」
「みんなで作れば早そうだね!」
そんなこんなで三人は餃子を作り始めることにした。
まずは包む餡を作らなければいけない。
千尋は野菜を細かく切り、生姜とにんにくをすりおろした。
調味料も入れて混ぜ合わせてこねる。
大きなボウルいっぱいの餡ができた。
「すごーい、たくさん!」
「倉沢くん、上手だね!」
二人がこうして賑やかなのはいつものことだ。千尋はいつも笑ってしまう。
「ほら、ここからが本番だろ」
「はーい」
三人は餡を無言で皮に包み始めた。
テレビだけが賑やかだ。
「待て、カナタ」
千尋がふと声をあげる。
「お前、餃子作ったことないのか?」
カナタの餃子は口が開いてしまっている。ひき肉が皮のあちこちから飛び出していた。餡を入れすぎてしまっている。
「だってさ、難しいんだもん!」
カナタはむう、と頬を膨らませた。
千尋はため息をついて言った。
「いや、もうひだは作らなくていいから口を閉じてやれよ」
「わかったよー」
そんな光景を見てゆづるが笑い出す。
「二人共、相変わらずだね」
「千尋ってばすぐ怒るんだよ!」
「お前が怒らせてるんだろ!」
ますますゆづるが笑いだして、二人も笑った。
「じゃ、焼き始めるからお前ら先飲んでろよ」
「えー、僕も焼く!」
「僕もやってみたいな」
全員で順番に焼くことにして、千尋はホットプレートに餃子を並べた。
美味しそうな匂いが漂ってくる。
待ちきれずにカナタがビールを取り出してきて三人で乾杯した。
「倉沢くん、お仕事どう?」
「ん、慣れてきた」
三人で最近の状況を話す。
こうして集まるのは、ゆづるの文化祭に行った時以来だろうか。
「花柳は卒業したらどうするんだ?」
もうカナタもゆづるも就職に向けて動き出さなければいけない。
「僕は今、教授のお手伝いしててね、そのままそこに行くことになりそう」
「よかったな」
ゆづるは嬉しそうに笑う。
「カナタくんは?」
千尋もカナタを見ると、目を反らされる。
一緒に住んでいたが、カナタからちゃんと聞いたことはなかった。
「ぼ、僕はえーと」
カナタは自分のリュックサックから冊子を取り出した。
二人にそれを向ける。
その冊子は教員資格の案内だった。
「お前、教師になりたいのか?」
カナタは照れたように頷く。
「図書館司書の資格も一緒に取りたいなって」
「カナタくん、すごい!」
「お前、最近勉強頑張ってるもんな」
カナタは真っ赤になって笑った。
「じゃ、お邪魔しましたー」
「泊まってけばいいのに」
終電が迫っているから帰る、とゆづるは言い出した。
千尋は引き止めたが、ゆづるは首を横に振る。
「明日も早いし、二人といたらもっと頑張ろうと思えたんだ」
「あんまり、無理すんなよ」
「うん」
じゃあね、と手を振ってゆづるは帰っていった。
中ではカナタが丸くなって床で寝てしまっている。
量はそれほど飲んでいないのに、真っ先に酒に酔って潰れていた。
千尋はため息をついて、カナタをゆらゆら揺する。
「おい、カナタ、ここで寝るな、ベッドいけよ」
「やだー」
わがままな恋人だな、なんて思いながら千尋はカナタを抱き上げる。
相変わらず軽くて毎回驚かされる。
ベッドに投げて布団をかけてやる。
「ゆづくんはー?」
千尋がベッドに腰掛けると、夢見心地でカナタが聞いてくる。布団にくるまっていてさなぎのようだ。
「帰った。あいつも忙しいみたいだな」
「うん」
カナタの声が寂しさを含んでいるのに気が付いて、彼の頭を撫でてやる。
「千尋、僕も頑張るよ」
「あぁ」
カナタが少し泣いているのに気が付いて、千尋は彼を抱き寄せた。
カナタも抱き付いてくる。
二人はそのままの勢いでキスをした。
「千尋のすけべ」
「なんとでも言えよ」
す、とカナタは千尋の頬を触る。
「もう一回して」
千尋は言われるがままにカナタに口づけた。
(カナタにはホント敵わないよな)
そんなことを思いながら、カナタの上半身を撫でる。
びく、と身をよじられて悪い気はしない。
千尋はカナタにいよいよ襲いかかった。
おわり
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