いちゃらぶSS

後輩は子猫ちゃん（真司×千晶）

千晶さん24歳になる③

「真司さん、今どこにいるんですか？」

千晶は泣いているようだった。俺はすっかり気が動転してしまった。

「千晶？どうしたんだ？」

電話をしながらレジで会計して店を出る。
まどかさんたちが頭を下げて、俺とは違う方向へ向かったのを見送った。
心配なのは千晶だ。
千晶は泣いているばかりでなにも答えてくれない。

「千晶、とにかく今から帰るから」

「早く帰ってきて」

千晶がそう言うと通話が切れた。

(心配させちまった)

千晶に喜んでほしくて、いろいろ考えていたのに、こうして泣かせてしまっては意味がない。

そういえば最近、千晶とあまり話せてなかったかもしれない。
俺は千晶の待つ家に帰った。

中に入ると千晶はちょこん、とソファに体育座りで座っていた。
こうして見ると千晶は本当に小さい。

「千晶？ごめんな」

「もう俺のこと、嫌いでしょう？だから毎日帰りが遅くて…っ！」

千晶の瞳からボロボロ涙が流れている。
ずっと泣いていたのか。

「真司さんを失うくらいなら、俺はもう死んだっていい！」

俺は千晶を強く抱き締めた。
いつも千晶は不安と戦っている。
お兄さんを亡くしたあの日からずっとだ。

千晶は可愛くて頭がいい。だから周りから妬まれやすい。
普段の千晶ならそれに対抗できる。
でも実際の千晶は周りにとても怯えている。不安を感じている。いつも千晶はそんな不安と果敢に戦っている。

「千晶、死ぬなんて簡単に言うな」

「でも真司さんがいなかったら、俺」

ぎゅう、と千晶にしがみつかれる。
俺は千晶の頭を撫でた。

「ごめんな、寂しい気持ちになっちゃったんだよな？
もうぶっちゃけるけど、帰りが遅かったのは千晶のプレゼントを何にしようか考えていたんだ。今日もまどかさんに千晶の欲しいものを聞いていて」

千晶がぽかん、としている。

「ぷれ…ぜんと？」

「あぁ、お前、もうすぐ誕生日だし、俺なりにかっこつけたかったんだけどさ」

「俺、こうして真司さんと一緒に暮らせて幸せだし、欲しいものは本当にないんです」

千晶は本当にいい子だな。
俺は千晶の頭を撫でた。
だったら。

「なぁ千晶。クリスマスはどこに行きたい？」

「真司さんとご飯食べます！水族館も行きます」

「わかった。ならそうしようか」

千晶がニッコリ笑う。
千晶の表情が明るくなってよかった。

「真司さん、ぎゅってして」

言われたとおりに千晶を抱きしめてやる。

「俺、真司さんが大好きです」

「俺もだよ」

クリスマス、もうすぐだな。
冬の水族館もいいかもしれない。

もう、千晶を不安にさせないようにしないとな。
ちょっと反省だ。