いちゃらぶSS

はやしかわともえ

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後輩は子猫ちゃん(真司×千晶)

千晶さん24歳になる④

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日が経って、クリスマスイブになった。
俺達は今、水族館にいる。
やっぱりクリスマスといえば恋人とデートをするのが最近の定番らしい。
さっきからカップルが楽しそうに二人の写真を撮ったりしている。

「真司さん、こっちです」

千晶は楽しそうに俺の腕を引っ張る。
大好きなペンギンの水槽に行きたいんだろう。
俺は思わず笑ってしまった。

「千晶、大丈夫だよ。ペンギンは逃げないから」

「あ、そうですよね、つい」

千晶は今日をずっと楽しみにしていてくれたらしい。毎日のように早く今日が来ないかな、なんてニコニコしながら言っていた。
可愛いなぁ。

「千晶は本当にペンギン好きだよな」

「よちよち歩いているのを見ると癒やされるんです。可愛いですよね!」

千晶がぱあっと明るく笑った。
俺は千晶の笑顔の方が癒やされるな。
ペンギンの水槽は屋外にあるせいか、人は少なかった。もう寒いもんな、当然か。
千晶が水槽に駆け寄るとすいー、とペンギンがこちらに泳いでくる。

「マルちゃん!」

千晶が叫ぶ。
そういえば千晶は何回かここに通ううちに個体差が分かってきたらしい。
それはなかなかできないことだ。
千晶はやっぱりすごいな。

「今日も可愛いよ」

千晶がスマホを掲げながら写真家みたいな声掛けをし始めた。
ペンギン(マルちゃんだったか)も満更じゃない様子で千晶を見つめている。

「わぁ、可愛い写真いっぱい撮れた!」

「よかったな、千晶」

「はい!」

それから二人で屋内に戻って、水族館内にあるカフェに立ち寄った。
さすがに寒くなったから温かい飲み物が飲みたくなったのだ。

千晶は迷わずホットココアを頼んでいた。
俺はコーヒーにする。

「楽しいですね!」

「あぁ。ここはいつも楽しいな」

多分楽しいのは千晶がいるからだけど、それは言わないでおく。

「今日はケーキも食べられるし幸せです」

「夕方受け取るんだよな?」

千晶は頷いた。

「俺、ずっと誕生日が嫌いだったんです。
兄貴と同じ年になった時が一番きつかった。
なんで兄貴はもういないんだって」

「千晶」

俺は千晶の頭を撫でた。
千晶がこうして自分を責める気持ちを、俺は100%理解できるわけじゃない。
でも出来ればわかってやりたかった。

「千晶がこうして、生きていてくれさえすれば、お兄さんはそれだけで救われると思う」

「真司さん…」

「まぁ、俺みたいな部外者が言うなって話だけどな」

千晶がブンブン首を横に振る。

「真司さんといるだけで、俺はすごく元気をもらってます!」

それならよかった。

それから昼ご飯に千晶としゃぶしゃぶ食べ放題を謳っている店に入った。
店内は個室になっていて、なんだか落ち着く。
千晶がコートを脱いでいる。
俺もそれに倣った。

「真司さんとしゃぶしゃぶ、初めてですね!」

千晶が目をキラキラさせている。

「ここ割と評判いいみたいでさ」

それから二人で、限界までしゃぶしゃぶを食べた。夕飯入るかな。ちょっと自信ない。

「あ、そうだ」

俺は大事なことを思い出した。

「千晶、これやる」

「真司さん、これ?」

千晶に渡したのは縦に長細い箱だった。
一応プレゼントだ。

「ほら千晶、今日で24歳になるだろ?
やっぱりお祝いしたくてさ。
これから仕事も頑張ろうな」

千晶が箱を抱きしめる。

「真司さんはずるいです…!」

千晶は慎重な手付きで包装紙を外して、箱の蓋を開けた。
中身はなんてことない腕時計だ。
ブランドですらない。

「可愛い」

千晶の細い腕にごつい時計も可愛いなと俺は思ったけど、やっぱりシンプルな方がいいと思ってシルバーの腕時計にした。

文字盤はメタリックのブルー。

千晶はそれを気に入ってくれたようだ。
すごくニコニコしてくれた。可愛い。

今年のクリスマスはなんだかいつもより充実感があった。
スーパーでケーキを受け取って帰る。
(ホールで3種頼んでいて驚いた)

「真司さんと家でケーキバイキングできますね!」

千晶が嬉しそうに笑う。

「俺は今日はもうしゃぶしゃぶで限界だ」

真面目に言ったら笑われた。

「真司さんとずっと一緒にいたいです」

大きな目でじっと見つめられる。
可愛いなぁ。

「千晶、お誕生日おめでとう」

「真司さんのお誕生日、俺頑張ります!」

なんか変な気合が入ったようだな。
家に帰ってから千晶と、二人きりのクリスマスを楽しんだ。
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