どうか、幸せになれますように

はやしかわともえ

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僕の生まれた日

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今から28年前の三月のある日、僕はこの世に生まれた。
お母さんの記憶によると、僕が生まれた時、もう大分暖かくて過ごしやすかったそうだ。
春の訪れは人をわくわくさせる。
それだけ冬は厳しくて辛いものだ。
でも辛さを感じない世界なんてきっと退屈なんだろうな。
僕はずっとそう思っている。誰にも言ったことはないけれど。
ああ、もしかしたら千尋は知っているかもしれない。
僕のことをよく分かってくれているから。


その年は暖かくて、もう桜も咲いていたそうだ。僕が生まれる前に、お父さんとお花見にいく約束をしていたらしい。
この頃から今まで、ずっとラブラブなんだからすごいと思う。
夫婦円満の秘訣は感謝なのかもしれない。
僕も二人を見習いたいな。
千尋に感謝するのを忘れないようにしたい。
千尋はなんでもないって言うけれど、そんなことないと思うから。
それに「ありがとう」って言うと、千尋は嬉しそうにする。うん、そういう顔見たいよね。

話を戻すね。
お母さんは、出産予定日より二週間早くに破水して、救急車で病院に運ばれた。お母さんはそのまま分娩室へ向かったそうだ。
とても安産で、僕はすんなり生まれた。
四時間かからなかったって言っていたっけ。

僕が生まれて、お父さんはもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんを含めて親戚中が喜んでくれたらしい。
おじいちゃんやおばあちゃんにとっては、僕が初孫だったから余計だと思う。

僕の名前を決めてくれたのはお父さんだった。
「加那」という響きは元から決まっていて、そこに大きく育つようにと「太」を加えることになったらしい。
僕はこの名前をとても気に入っている。
皆からは「加那」って呼ばれると嬉しい。

お父さんは元々奄美の出身で、そこから一人上京してお母さんに出会ったらしい。
お母さんはそのとき、勤めていた会社を辞めて、小さな喫茶店を開いていた。
運命的な出会いだな、なんて僕は思っている。
お父さんはお母さんに偶然出会って、二人は惹かれあった。
そして二人は結ばれて僕が生まれた。

僕が生まれたそのすぐ後、お父さんは仕事の関係で新潟に単身赴任することになり、お母さんはおじいちゃん、おばあちゃんの手を借りながら育児と仕事、家事を一手に引き受けた。
大変だったと思う。
でもお母さんはずっと僕に笑顔で接してくれた。毎日僕に美味しいご飯を作ってくれた。
お父さんも僕を気にかけて、よく電話してくれたらしい。
小さかった僕は座れるようになってハイハイが出来るようになった。
それから二年が経過した。
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