僕らのもう一つの物語

はやしかわともえ

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リバーズ

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それから僕たちは、朝ご飯をご馳走になっていた。
こんな時でも食欲はあるんだから、僕は意外と図太いのかもしれない。

それに、朝ご飯は驚くほど和食だった。見慣れたラインナップが机に並んでいる。
こういう部分がやっぱりゲームっぽい。
どうやら、千尋が昨日お願いしていたもののようだ。
千尋のお母さんは、いつも遊びに行くと、美味しい煮物やご飯に合うおかずを沢山出してくれる。千尋もお母さんの作るご飯が好きなんだな、なんて思ってちょっとほんわかした。


ひとまず僕はまず一口、ご飯を口に入れた。
甘くて美味しい!
炊きたてのほかほかご飯に脂ののった塩鮭はとても合う。
他にも辛子明太子や、かずのこがたっぷり入った松前漬け、とろろと玉子の入った納豆もあった。
それを食べると、ご飯が恋しくなって、ついつい山盛り掻き込んでしまう。
他にもぶり大根や、きんぴらごぼう、厚く切られたお刺し身の盛り合わせまである。
朝からなんて豪華なんだろう。
こんなの旅館でなきゃ味わえない。

「おかわりいる?」

オネストさんのお母さんにお願いして、ご飯を山盛りによそってもらう。
千尋もおかわりをもらっていた。

「二人共、沢山食べるんだぞ」

オネストさんが楽しそうに言った。

「すみません。俺もおかわり頂きたいです」

そろーっとチヒロさんが言う。

「久しぶりだわ、こんなにご飯炊いたの。若い人っていいわね!」

オネストさんのお母さんは嬉しそうにご飯を盛る。
なんだか知らないけれど、喜んでもらえているようだ。

「カムイ、今日はどうする予定だ?
まだ電車は動かないようだぞ」

オネストさんの言葉にチヒロさんは考えているようだ。

「それなら他のルートを探すまでだ」

「お前ならそう言うと思ったよ。なら私が車を出そう」

「お前、仕事はいいのか?」

「生憎昨日から、長期休暇を取っていてね。特にやることもないんだよ。ほら、今は働き方も変わってきているし」

「そうか。なら悪いが頼む」

「当然だ」

美味しいご飯を満足するまで食べて、僕たちは出かける準備をし始めた。
いよいよエアリスに行ける。
僕は拳を握りしめた。

「加那、そろそろ行くみたいだぞ」

「うん!今行く!」

朝、枕元にあった花束はオネストさんがいくつかの花瓶に分けて活けてくれた。
そっと花瓶の花を撫でる。

(僕、行ってくるよ。君のこと、もっと知りたいんだ)

彼の笑顔がふと過る。
もう彼は、亡くなってしまっているんだろうか?
それすらも今はわからない。

僕はオネストさんの車に乗り込んだ。
助手席にはチヒロさんが座っている。
車は静かに走り出した。

「なあカムイ、加那太たちに前の世界について話しておこうと思うんだが構わないか?」

「そうだな。その方がいいのかもしれない」

オネストさんが話し始めた。

ー今から一年程前、前の世界、リバーズでは新しい病が蔓延し始めた。
その病は感染力が高く、広がるのはあっという間だった。
政府は感染した可能性のある者を一箇所に集めて隔離した。
これで、病は収束するかと思われたが、そうはならなかった。


「その病気ってどういうものだったんですか?」

僕はずっと聞きたかったことを聞いた。

「うすれ病というんだが、体がだんだん薄れてくるんだよ。
そして、凶暴化して人の血を欲するんだ。実際に襲われて亡くなった者もいる。そしてついには人間ではなくなってしまうんだ」

なんて怖い病気なんだろう。
オネストさんはまた話し始めた。

ーなぜ病が収束に向かわなかったのか。それは、ある宗教団体のためだった。
彼らはうすれ病に罹った患者を神の子と呼んで軟禁した。
そして彼らはあるものを造り上げた。うすれ病の「ワクチン」と呼ばれるものを。
何十人もの患者の血液から精製したものだ。
だが、それはワクチンではなかった。
むしろそれが、私達がヴァーズに移住した要因だ。ー

「そのワクチンは一人の少年に使われた。その後、彼は化物となり、リバーズを破壊し始めたんだ」

チヒロさんの声が震えている。彼は拳で膝を叩いた。

「そのワクチンを使われたのは、俺の弟だ」

車内に車のエンジン音だけが響く。
みんな何も言わなかった。

「チヒロさん、弟さんはその後どうされたんですか?」

「俺が封印した。
だから他の生物はリバーズには住めなくなった」

そうゆうことだったのか。
僕はなんとなく不安になって、座席の背もたれに寄りかかった。
オネストさんが言う。

「ヴァーズに来たばかりの頃、エネルギーの豊富さに喜んだものだ、しかし」

「彼はワクチンに込められた力で、本当の神になっていたの。彼はあたしたちの調査の場に姿を現した。そしてヴァーズに呪いをかけたの。滅びの呪いを。エネルギーの力が膨大になったのはそれが原因」

彼方姫が言う。

「あのエネルギーはこのヴァーズにほころびをもたらしているんだ」

「それが広がるとどうなるんです?」

千尋が聞く。

「そうだな。また引っ越しになる」


オネストさんはそう言って口をつぐんだ。
話がここで繋がった。

「それって彼の復讐ってことですか?」

「そうなるだろうな、封印した俺を憎んでいるんだろう」

チヒロさんが疲れたように答える。僕はそれ以上何も聞けなかった。
車が静かに停まる。
道が岩で塞がれていた。

「カムイ、やはりここは通れないようだぞ。ここからしばらく行けばエアリスなんだが」

「俺の技で道を作ろう、少し待っていてくれ」

チヒロさんは車を降りた。
そして刀を具現化する。
それは緑の宝石で装飾されていた。剣からの威圧感がすごい、怖いくらいだ。

「二人共、カムイの技をよく見ておくんだ。なかなか拝めないからね」

オネストさんの言葉に僕たちは頷いた。
チヒロさんが構えた途端、空気が変わった。
流れるような動作でチヒロさんが刀を鞘から抜く。静かな一閃。
次の瞬間、大きな音が響いて、前方が砂煙で見えなくなった。

「すごい!」

「カムイは世界でもトップクラスのパワーを持っているんだ」

チヒロさんが車に戻ってくる。

「オネスト、岩を壊してみたが車は通れそうにないぞ」

「ふむ、それならば歩くか」

刀で岩を壊してしまうチヒロさんは、本当に人間なんだろうか。
驚いている間もなく、オネストさんに車を降りるように言われる。

「加那太、千尋。ここからは戦闘が発生する可能性が高い。気を付けてくれ」

「大丈夫だ。その子達は十分戦える。俺が仕込んだんだからな」

「またお前は子供に戦闘を教えたのか?」

「いずれは戦わなきゃいけないだろう」

なんだかんだ言い合いながらもどこか楽しそうで、二人は本当に仲がいいんだな、と思った。
僕たちも気を集中する。
本当に戦闘する日が来るなんて。

僕の背中から翼が生える。
千尋もまた黒の太刀を握りしめていた。
オネストさんが歓声をあげる。

「これは心強いな!だが無理するなよ」

僕たちはエアリスに向けて歩き出した。
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