僕らのもう一つの物語

はやしかわともえ

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文化祭

おしごと

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文化祭実行委員の仕事は思っていたよりずっとハードだった。
クラスのだしものの準備をしながら、放課後には委員会として集まり、アーチをはじめとする学校の飾りを作る。
委員会の仕事はその他にも、体育館や講堂のステージで行われる部活の発表についての時間調整や、行う内容の確認、文化祭用のポスターの発注や、なにやらこまごまとした仕事までいろいろあった。
それをこなしつつ、文化祭後に控えている期末テストの勉強もしなければならない。
僕は毎日死にそうになっていた。朝が辛い。

(忙しい、疲れた・・・)

昼休み、疲れて机に突っ伏していると、誰かが近寄ってくる気配を感じた。
でもそれを確認する気も起きなくて、僕はそのままでいた。
どす、と頭に冷たい固い物が載る。
なんだろう?
頭に手をやると、物の正体が分かった。
紙パックのジュースだ。

(イチゴオレか)

こんなことをしてくれるのはあいつしか考えられない。
僕は嬉しくなって、それを飲み始めた。

(あとでお礼言おう)

千尋と両想いだという事が分かっても、僕達の関係はあまり変わっていなかった。
ただ前より気安く話すようになったくらいだ。
でも、そのおかげで、実行委員の仕事も少し楽しくなった。
それだけでも全然違う。

「本田っちー、今いい?」

この前の三人組の一人、吉田くんが声をかけてきた。

「どうしたの?」

「ミスコンなんだけどさ、当日何着る?」

忙しくて、そんなことすっかり忘れていた。僕と千尋が出ることになってたっけ?

吉田君はにやっと笑ってこう言う。

「俺の姉貴、レイヤーだしいろいろ服持ってるんだ。倉沢と俺んち来てくれれば衣裳貸すよ?」

「え、いいの?」

吉田君は頷く、そして困ったようにはにかんだ。

「いやさ、巻き込んだの俺だし、協力して当たり前じゃん」

「ありがとう」

「今日来れる?」

「うん、委員会終わったらでいいなら」

「わかった、教室で待ってる」

吉田くんは照れたように笑って走って行ってしまった。

なんだか嬉しい。高校に入ってもうしばらく経つけれど、あまり親しいと言える友人は僕にはいなかった。(千尋は除く)同級生と何を話していいかよくわからないし、そんなきっかけもない。

(高校の同級生の家に行ける!)

それってすごくレアなケースじゃないか。
もっと親しくなれるかもしれないし。

(よし、頑張れ僕)

「加那ー」

千尋が困ったという顔でやってくる。
なにに困っているかすぐわかった。
千代紙の花を作るのに盛大に失敗していた。

「直るか?」

僕の手元を見ながら千尋が言う。

「もう、不安なら一人でやらないでよ」

「だって、加那忙しそうだし」

ぶつぶつ言われておかしくなってしまう。
変わってないな。

「あ、そういえば」

吉田君に言われたことを僕は伝えた。

「お、いよいよ女装か」

「千尋、そういうの平気なの?」

千尋は首を傾げる。

「初めてだしなあ」

のんびり言う彼に僕は脱力した。
そうだった、こういうやつだった。

「委員会の仕事マッハで終わるよ?」

「気を付ける」

千尋の気を付けるは怖いなあ。
そんな感じで午後の授業が始まった。
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