ちょこちょこ話(短編まとめ)

はやしかわともえ

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競馬場デートと日常(大地×翼)

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「翼さん、痛いよー」
「っ…!!」
翼は今、大地の経営する整体院で施術をしてもらっている。明日は競馬場に遊びに行く予定だ。翼はそのために仕事を頑張った。お陰で体がすっかりバキバキである。大地もそれを見かねて、施術をしてくれている。先程から右腕、肩、腰をメインに揉んでもらった。
「はい、おしまい。どうかな?」
「うん、体が軽くなった。ありがとう」
「良かった。今日はもうゆっくり休んでね」
「そうする」
大地はまだ仕事があるらしい。翼は先に戻ることにした。
「翼さん、お風呂入りなよ。新しい入浴剤買ってあるから」
「嬉しい。沸かしておくね」
翼はるんるんしながら自宅に戻った。
「明日は競馬場か。これ、デート…だよね?」
風呂を沸かしながら翼は呟いた。仕事をしている間は必死だったのでそこまで考えるゆとりはなかったが、改めて思うとドキドキしてくる。
「ちょっと競馬場のこと調べてみよう」
風呂が沸くまでの間、翼はスマホであれこれ調べてみることにした。

翌日になっている。翼はなるべく暖かい服装を選んだ。今は2月だ。今日の天気予報を見るに雪が舞う時間帯もあるらしい。
「翼さん、準備万端だね」
コートを着てマフラーを巻いていると、大地がやって来る。
「馬の写真撮れるといいね」
「うーん、どうかなぁ。一応テレビで放映されるから録画しておいたけど」
「あ、そっちなら確実だね」
「だから気負わなくていいの。2人で楽しもうね」
「うん」
競馬場まで電車移動だ。2人は出掛けた。
「翼さん、タブレット持ってきたの?」
「うん、馬を見ていたら絵が描きたくなるかなって」
「楽しみだね。競馬場なんて初めて行くな」
「俺も。ちょっと賭けてみる?」
「あー、そっか。夢あるよねー、三連単」
「そうなの」
いつの間にか2人は手を繋いでいた。電車に乗り込み、目的地に向かう。
「翼さん、お昼も色々食べようね」
「うん」
入場料を払い、競馬場内に入る。日曜日ということもあり、既に人で賑わっていた。
「大地くん、あそこで馬券が買えるみたいだよ」
「本当だ。おっと、次のレースに出るんだなシュンソク」
「シュンソク?」
「おじいさまの馬の名前。速そうでしょ?」
「うん、速そう。馬券買ってみる!他の馬はどうなんだろう?」
「新聞買ってみようか。予想が載ってるよ」
「面白いねえ」
「ね。俺は穴を狙ってみようかな」
馬券を買い、2人は外に出てみることにした。眼下には馬が走るコースが広がっている。
「わぁ、ここを馬が走るんだね」
「うん。今、出走したよ。向こうに見える」
馬たちが全力で走ってくるのが見えた。客席からの歓声がすごい。
「馬って速いんだ!」
「本当だね」
いよいよ次のレースがシュンソクの出番になる。
「翼さん、三連単で賭けたの?」
「うん、ひとつ100円だから何通りか買ったよ」
「いいね」
馬たちが出走した。全頭良好なスタートを切る。
翼はシュンソクを応援した。大地は動画を撮っていた。ゴール直前、歓声が更に沸く。馬たちが僅差でゴールした。シュンソクも入賞している。
「翼さん、どうだった?」
「うん、シュンソクすごく速かった。当たったのかな?」
「確認しに行こうか」
2人は一度中に戻った。結果は外れていたが翼は満足した。
「翼さん、なにか食べよう。今日は朝食も軽めにしたし」
「うん、お腹空いたね。もつ煮込み食べたいな」
「うん、飲み物はどうする?」
「ジュースにしとく。酔っぱらったら危ないもん」
「翼さん、千鳥足になるもんね」
2人は初めての競馬場を楽しんだ。

「あー、楽しかった」
「本当だね」
翼と大地は帰り際にスーパーに寄って夕食の買い物をした。ふと、翼は気が付く。道の隅に汚れた段ボールが置かれていた。
「なんだろ?」
翼は屈んで蓋を開けた。小型犬が横たわっている。
「え!ワンちゃん?」
「捨て犬かな。随分弱ってる」
翼はどうしたものかとオロオロした。
「翼さん、俺が持つから落ち着いて」
「うん」
大地が段ボールを持ち上げる。
「この辺りに獣医あったよね?」
「うん、あっち!」
2人は走り出した。

「きゅうう」
犬の切ない鳴き声に翼は心配になった。獣医に見せた所、栄養失調とのことで点滴をしてもらった。他にもケアしてもらい、家に帰ってくることが出来た。ケージを買ったので大地が組み立てたのだ。
「翼さん、大丈夫だよ。まだ慣れてないから不安なんだよ」
「うん。そうだね」
「夕飯、もうすぐ出来るからね」
「ありがとう」
翼はそれでも落ち着かずタブレットを開いていた。今日大地が撮ってくれたシュンソクの動画を観る。
「…あれ?」
翼はシュンソクと犬を見比べた。
「どうしたの?翼さん」
「なんかね、シュンソクとワンちゃんの毛並みが似てるの」
「本当だ。面白いね」
「ね!じゃあワンちゃんはしゅんって呼ぼうかな」
「いいんじゃない。呼び名があった方が」
2人は飼うという選択を保留にしていた。
動物を飼うというのは容易いことではない。翼はしゅんに近寄った。
「しゅん、君は今日からしゅんだよ」
「くうん」
しゅんのつぶらな瞳がウルウルしている。まだ体が震えていた。
「怖いよね、大丈夫だからね」
翼はそっとその場を離れた。
「翼さん、ご飯にしようか」
「うん」

しゅんを預かり、2週間が経過している。翼は今日休みだった。撮り溜めていたアニメを観ている。
手元にはタブレットを置いて時折スケッチをしていた。
「可愛いなぁ、このデザイン」
「きゅう…」
翼はハッとなった。しゅんに呼ばれた気がしたのだ。
「どうしたの?しゅん。あ、ご飯食べたんだね」
最近、しゅんは普通に食事や排泄が出来るようになって来ていた。
「よかった」
まだ触ることこそ出来ないが、翼はホッとした。そうだと思いつく。
「しゅん、おやつ食べる?美味しいんだよー」
翼は指に液状のおやつを付けてしゅんに近付けた。
しゅんは興味深そうにおやつを見ている。舌でぺろっと翼の指を舐めた。翼は嬉しくなったが自身を律する。
「美味しい?」
しゅんが翼を見つめる。初めて目線が合った。
「しゅん、大丈夫だからね」
「きゅう」

「ただいま」
昼になり大地が帰ってきた。
「お帰りなさい、大地くん。あのね、しゅんがおやつを食べてくれたの」
「すごいじゃない」
大地がケージを覗き込む。
「しゅん、眠いの?」
「きゅう」
よしよし、と大地がケージに指を入れてしゅんを撫でている。翼はそれを見て驚いた。
「え、大地くん触れるの?」
「今、試しにね」
「ずるいー!」
大地が吹き出す。
「翼さんも撫でてあげて。喜ぶよ」
ドキドキしながらしゅんを撫でてみる。威嚇されるかと思ったがそれはなかった。
「しゅん、ふわふわだね」
「癒されるよね。今お昼作るからね」
「俺も手伝うー」
2人の日常は今日も過ぎていく。

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