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白銀の雷鳴4
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「え?戦うってなに?
どういうこと?」
「そのままの意味よ、兄さん。
蜜音、泣いても知らないわよ?」
愛、本当にやる気なんだ!
蜜音と名乗った女の子は笑顔のままだ。
さっきまであんなに人がいたのに、今は誰もいない。
「愛!だめだよ!
怪我でもしたら!」
愛は微笑んだ。
「兄さん、半獣のメリット知ってるかしら?」
「え?」
愛の体が輝きだす。
「回復力が高いのよっ!」
銀色の狼がそこにいた。蜜音は?
僕は恋に引っ張られる。
「お兄ちゃん、危ないよ」
恋に手を引かれて、僕らは距離をとった。
蜜音の姿は相変わらず見えない。
だが、愛は変わらず臨戦態勢だ。
「優しいのね、お兄さん。
愛ちゃん、私に勝ったことなんてないくせに」
蜜音の声だけが響き渡る。
「今回は分からないじゃない。
行くわよ、蜜音!!」
愛の体からバチバチと音がする。
「あいは雷を起こすことができるの」
恋が呟く。
愛は円を描くように走り出した。
すさまじく速い。
愛の周りに雷が発生している。
「姿が見えなくてもあなたが逃げられなければ一緒よね!」
「負け惜しみ」
蜜音の嘲笑う声。
愛はがむしゃらに雷を打ち続ける。
それがしばらく続いた。
愛が疲れはてている?
「愛!!」
僕は思わず叫んだ。
蜜音が愛の後ろにいたからだ。
「くっ!」
愛は振り返ったが遅かった。
蜜音から生えている緑色の尾が、愛の首元で止まる。
「降参したらぁ?」
「っ、嫌と言ったら?」
蜜音は凶悪に笑う。
「おい、蜜音!!」
声のした方を見ると、鯨がいた。
地面を泳いでいる。
「もう帰る時間なのね」
蜜音は残念そうに言うと歩き出した。
愛が崩れ落ちる。
「あい!!」
僕と恋は彼女に駆け寄った。
人間の姿に戻っている。
「愛、大丈夫?」
愛は泣いていた。
「悔しい!勝てないなんて!!」
愛の背中をさする。
彼女はしばらく泣き続けた。
「帰ろう、愛。
僕にはわからないことだらけだ」
「兄さん、そうね。
あなたには知ってもらいたい。
私たちのことを」
私たち?
愛の言葉が引っ掛かる。
それから愛は黙り込んでしまった。
聞けそうなときに聞いていこう。
それが僕に今、できることだ。
ホームにはまた人が集まってきている。
なにか不思議な力が人を寄せ付けないようにしているのかもしれないな。
僕たちは帰路についた。
つづく。
どういうこと?」
「そのままの意味よ、兄さん。
蜜音、泣いても知らないわよ?」
愛、本当にやる気なんだ!
蜜音と名乗った女の子は笑顔のままだ。
さっきまであんなに人がいたのに、今は誰もいない。
「愛!だめだよ!
怪我でもしたら!」
愛は微笑んだ。
「兄さん、半獣のメリット知ってるかしら?」
「え?」
愛の体が輝きだす。
「回復力が高いのよっ!」
銀色の狼がそこにいた。蜜音は?
僕は恋に引っ張られる。
「お兄ちゃん、危ないよ」
恋に手を引かれて、僕らは距離をとった。
蜜音の姿は相変わらず見えない。
だが、愛は変わらず臨戦態勢だ。
「優しいのね、お兄さん。
愛ちゃん、私に勝ったことなんてないくせに」
蜜音の声だけが響き渡る。
「今回は分からないじゃない。
行くわよ、蜜音!!」
愛の体からバチバチと音がする。
「あいは雷を起こすことができるの」
恋が呟く。
愛は円を描くように走り出した。
すさまじく速い。
愛の周りに雷が発生している。
「姿が見えなくてもあなたが逃げられなければ一緒よね!」
「負け惜しみ」
蜜音の嘲笑う声。
愛はがむしゃらに雷を打ち続ける。
それがしばらく続いた。
愛が疲れはてている?
「愛!!」
僕は思わず叫んだ。
蜜音が愛の後ろにいたからだ。
「くっ!」
愛は振り返ったが遅かった。
蜜音から生えている緑色の尾が、愛の首元で止まる。
「降参したらぁ?」
「っ、嫌と言ったら?」
蜜音は凶悪に笑う。
「おい、蜜音!!」
声のした方を見ると、鯨がいた。
地面を泳いでいる。
「もう帰る時間なのね」
蜜音は残念そうに言うと歩き出した。
愛が崩れ落ちる。
「あい!!」
僕と恋は彼女に駆け寄った。
人間の姿に戻っている。
「愛、大丈夫?」
愛は泣いていた。
「悔しい!勝てないなんて!!」
愛の背中をさする。
彼女はしばらく泣き続けた。
「帰ろう、愛。
僕にはわからないことだらけだ」
「兄さん、そうね。
あなたには知ってもらいたい。
私たちのことを」
私たち?
愛の言葉が引っ掛かる。
それから愛は黙り込んでしまった。
聞けそうなときに聞いていこう。
それが僕に今、できることだ。
ホームにはまた人が集まってきている。
なにか不思議な力が人を寄せ付けないようにしているのかもしれないな。
僕たちは帰路についた。
つづく。
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