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揺蕩い
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今までずっと眠っていたし、動いてもいなかったから僕は全然眠たくなかった。でも、病院には消灯時間なるものが存在するので、暗い中で大人しくしていたら、だんだん眠たくなってきた。人間って単純だな。
僕は目を閉じて眠気のままにしていた。それにしても、あの世界はなんだったんだろう?すごく不思議な世界だったなぁ。もしかしたら死の世界だったんだろうか。城で眠っていた獅子王、ぺらぺらな黒い人間たち。僕はうつらうつらしながら考えていた。怖い世界ではあったけど、僕を傷つける世界ではなかった。最後に僕が迷った時に喝を入れてくれたあの子。もしかしたら向こうの世界の獅子王だったのかな、なんて思う。こうして元の世界に戻ってこられて本当に良かったなぁ。
僕はあの時、すごく悩んで苦しんだけど、それは結果的に僕自身を変えるきっかけになったらしい。本当に些細な変化だけど僕にとっては大きな一歩だった。生きるって改めて難しいなぁ。特に自分の意思だけで、自分の力で生きるというのは。でも、僕はこれから獅子王に頼るんじゃなく、自分で、自分の力で生きていかなきゃいけないんだ。じゃないと今までと何も変わらない、灰色の世界にいた頃の僕と。獅子王によってそれは少し改善されたけど、それだけではまだまだだったんだなって改めて感じた。僕はずっと獅子王に寄り掛かっていたしね。僕は獅子王と対等になって、獅子王をちゃんと愛したい。ずっと僕は獅子王に甘えていたから。獅子王にも甘えてもらえるような人になりたい。獅子王のことだから嫌がるだろうけど、それがまた彼の愛おしい部分だ。
僕はごろりと寝返りを打った。もう、すごく眠たい。もう少しで年末だ。獅子王と温泉旅行にも行けそうだし、嬉しいな、幸せだなって僕は思えた。何でもないことでもひとつひとつ、ちいさなことが尊い、大切なことなんだ。改めて思う。この世に当たり前なんてないんだ。人間はそんな小さな大事なことを少しずつ積み上げて、でも、時々誤って崩してしまったりしながら生きてきた。それでいいんだと思う。失敗するのが人間だし、他人に責められることでもないと僕は思うから。僕はもう眠っていた。
✢✢✢
気が付くと隣に獅子王がいる。どうやら夜の街中にいるようだ。あ、これどうも夢みたいだぞ、と僕は思った。獅子王の胸元で僕のあげたハートのネックレスが光っている。周りの街頭や看板の光で反射してるのか、リアルだな。
「キョウ、どうしたんだ?ボーッとして」
獅子王はいつもの感じで話しかけてきた。
「獅子王、好きだよ」
僕は獅子王を抱き締めていた。獅子王が抱き着いてくる。こんな彼だから大好きなんだ。
「キョウ」
獅子王が僕を見上げて、きゅっと目を閉じる。うわ、キス待ち可愛い。僕は彼の唇に自分の唇を重ねた。好きだな、獅子王が。ハッ、夢の中でこれ以上はさすがにルール違反だよな。そう思ったところで僕は目を覚ました。まだ薄暗いな。そう思っていたら、ピロン、とスマートフォンが鳴る。な、なんだ?僕はサイドテーブルの上にあったスマートフォンを手に取った。獅子王からだ。
『おはよう、キョウ。夕方行くから帰る準備をしておくんだぞ』
そうだ。僕たち、一緒に暮らすようになってからこうして離れたことがなかったんだ。返信しないといけないんだけど、なんて返しても後で照れくさくなりそうだ。でも獅子王も心配するだろうし、僕は了解とだけ返した。獅子王が可愛いスタンプを送ってくれる。く、可愛い。とりあえずすっかり目が覚めた。獅子王はちゃんと僕のためにノートPCを家から持ってきてくれていた。電源を入れて病院のWi-Fiに繋げてメールを確認する。
年末だから来年のスケジュールの話が主だ。ふーむ、泊まりの研修か。ふーむ。
返信できるメールは返信して、僕は眠ることにした。病院の朝は早いからね。
僕は目を閉じて眠気のままにしていた。それにしても、あの世界はなんだったんだろう?すごく不思議な世界だったなぁ。もしかしたら死の世界だったんだろうか。城で眠っていた獅子王、ぺらぺらな黒い人間たち。僕はうつらうつらしながら考えていた。怖い世界ではあったけど、僕を傷つける世界ではなかった。最後に僕が迷った時に喝を入れてくれたあの子。もしかしたら向こうの世界の獅子王だったのかな、なんて思う。こうして元の世界に戻ってこられて本当に良かったなぁ。
僕はあの時、すごく悩んで苦しんだけど、それは結果的に僕自身を変えるきっかけになったらしい。本当に些細な変化だけど僕にとっては大きな一歩だった。生きるって改めて難しいなぁ。特に自分の意思だけで、自分の力で生きるというのは。でも、僕はこれから獅子王に頼るんじゃなく、自分で、自分の力で生きていかなきゃいけないんだ。じゃないと今までと何も変わらない、灰色の世界にいた頃の僕と。獅子王によってそれは少し改善されたけど、それだけではまだまだだったんだなって改めて感じた。僕はずっと獅子王に寄り掛かっていたしね。僕は獅子王と対等になって、獅子王をちゃんと愛したい。ずっと僕は獅子王に甘えていたから。獅子王にも甘えてもらえるような人になりたい。獅子王のことだから嫌がるだろうけど、それがまた彼の愛おしい部分だ。
僕はごろりと寝返りを打った。もう、すごく眠たい。もう少しで年末だ。獅子王と温泉旅行にも行けそうだし、嬉しいな、幸せだなって僕は思えた。何でもないことでもひとつひとつ、ちいさなことが尊い、大切なことなんだ。改めて思う。この世に当たり前なんてないんだ。人間はそんな小さな大事なことを少しずつ積み上げて、でも、時々誤って崩してしまったりしながら生きてきた。それでいいんだと思う。失敗するのが人間だし、他人に責められることでもないと僕は思うから。僕はもう眠っていた。
✢✢✢
気が付くと隣に獅子王がいる。どうやら夜の街中にいるようだ。あ、これどうも夢みたいだぞ、と僕は思った。獅子王の胸元で僕のあげたハートのネックレスが光っている。周りの街頭や看板の光で反射してるのか、リアルだな。
「キョウ、どうしたんだ?ボーッとして」
獅子王はいつもの感じで話しかけてきた。
「獅子王、好きだよ」
僕は獅子王を抱き締めていた。獅子王が抱き着いてくる。こんな彼だから大好きなんだ。
「キョウ」
獅子王が僕を見上げて、きゅっと目を閉じる。うわ、キス待ち可愛い。僕は彼の唇に自分の唇を重ねた。好きだな、獅子王が。ハッ、夢の中でこれ以上はさすがにルール違反だよな。そう思ったところで僕は目を覚ました。まだ薄暗いな。そう思っていたら、ピロン、とスマートフォンが鳴る。な、なんだ?僕はサイドテーブルの上にあったスマートフォンを手に取った。獅子王からだ。
『おはよう、キョウ。夕方行くから帰る準備をしておくんだぞ』
そうだ。僕たち、一緒に暮らすようになってからこうして離れたことがなかったんだ。返信しないといけないんだけど、なんて返しても後で照れくさくなりそうだ。でも獅子王も心配するだろうし、僕は了解とだけ返した。獅子王が可愛いスタンプを送ってくれる。く、可愛い。とりあえずすっかり目が覚めた。獅子王はちゃんと僕のためにノートPCを家から持ってきてくれていた。電源を入れて病院のWi-Fiに繋げてメールを確認する。
年末だから来年のスケジュールの話が主だ。ふーむ、泊まりの研修か。ふーむ。
返信できるメールは返信して、僕は眠ることにした。病院の朝は早いからね。
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