健気な騎士たちはわがまま姫に忠誠を誓う

はやしかわともえ

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十話・おまけ

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1・「姫、結婚式明日だね」

ここはアーモ公国だ。ジュアはエクリプスと婚約を結び、アーモに移り住んだ。そしてしばらくの同棲期間を経て、いよいよ結婚することになった。エクリプスは忙しい人だったが、ジュアのことを常に気にかけてくれる優しい人でもあった。明日の結婚式のことはアーモ公国全国民に知らされている。

「む…無理…」

ジュアががたがたしている。やっぱりなぁ、とクモリは思っていた。ジュアは今でも基本的に引きこもっている。時折、そーっと部屋を出てエクリプスから本を借りているようだ。クモリはそれを全て目撃している。咎めるつもりはないが、クモリは少し心配になっていた。ジュアが人見知りで今の環境にあまり順応できていないようだと思ったからだ。

「結婚式…無理…」

ジュアがまだがたがたしている。

「なにが無理なの?」

クモリは屈んで、ジュアの顔を覗き込んだ。顔色があまりよくないように思える。

「人…沢山…無理」

片言でしか話せないほどなのか、とクモリはますます心配になった。ジュアは美しい人だ。人前に出れば、目立つ。

「姫、もし無理なら」

「…!エクリプス様に話してみる」

クモリの提案にジュアはすぐさまエクリプスに確認しに行ったのだった。


2・「あんた、本当によくやるわね」

メアがため息を吐きながらクモリの顔にブラシを走らせる。

「姫様のためならえんやこらだな」

ははは、とハレが呑気に笑った。

「だってこうするしか仕方ないじゃん」

クモリはジュアにこう提案したのだ。「自分で良ければ代理を務める」と。エクリプスはそれにすごく驚いていたが、ジュアのためならと渋々条件を呑んでくれた。エクリプスの優しさにクモリは感謝しかない。
そして現在、クモリはジュア代理を務めるべく変装をしている。今は、メアのメイク技術をフルに活かして、自分をジュアに近付けてもらっている。

「兄ちゃん、俺、可愛い?」

ハレにふざけて聞いたら、ハレが真剣な顔でクモリを見つめた。

「姫様に似ている気がする」

「当たり前でしょ、似せてるんだから」

「じゃあ可愛いんだ」

ふむふむ、とクモリが呟くと二人は黙ってしまった。

「ねえ、クモリ、結婚式でなにするか分かってる?」

「ん?」

メアが言いにくそうに目を泳がせる。クモリは首を傾げた。

「なにって、指輪を交換して殿下と一緒にケーキを切るんでしょ?」

「う…うん。大体合ってるわね。ね、ハレ」

「うーん、まあ大丈夫だと思うしな」

二人はなにか言いたげだが言いづらいことらしい。ま、いいかとクモリは気にしなかった。

「ねえメア、早く支度しよ。このドレス、ウエストキツすぎだよ」

「そうね」

そして結婚式は始まった。

(やばあ…そういうことかぁ!!)

誓いの言葉を聞いているさなか、クモリはようやく気が付いていた。これから誓いの口づけをしなければいけないのだ。エクリプスとまさか、とクモリは戦いていた。大好きな姫のためとはいえ、口づけをするのはなんだか違う気がしてしまう。隣のエクリプスをちらっと見上げると、彼は笑う。任せておけ、ということらしい。だが、エクリプスは一体どうするつもりだろう、とクモリの不安は消えなかった。

「では誓いの口づけを」

(ひええ)

クモリはその場から逃げ出さないようにするので精一杯だった。
エクリプスが顔を寄せてくる。クモリの顎を掴んで、ちゅ、と口づけをされた。頬にだ。

「ふわ…」

「大丈夫」

エクリプスがウインクしてくる。クモリはホッとして崩れ落ちそうになったが、なんとか最後まで堪えきった。

3・「クモリ!!」

「姫…」

ぎゅむ、とジュアがクモリに抱きついてくる。もう二度とドレスなど着てやるものか、とクモリは決意していた。

「すごかった、見てたの、私」

どうやらジュアは式の様子を遠くから見守っていたらしい。

「うん、殿下は本当に優しいね」

ジュアが首を横に振る。彼女は少し興奮しているようだ。

「クモリがすごく綺麗だった」

「はぁ?!き、綺麗なわけ…」

「ううん、綺麗だった。ありがとう、私の代わりをしてくれて」

ぎゅうう、と再び抱き締められる。

「姫はもう殿下の奥様なんだから」

そう言って窘めたら、ジュアがクモリから離れる。彼女は不敵に笑っていた。

「クモリは私の弟よ」

「姫…」

「ハレも、メアも私の大事な家族なの」

「ひ…姫様…」

「おい!メア!!」

どうやらメアとハレも傍にいたらしい。メアが姫尊いの発作を起こしている。

「みんな、これからもよろしくね。一人でも欠けないって約束して」

ジュアの言葉に騎士たちは跪いた。

「仰せのままに」
 
おわり
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