最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ

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九章

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1・ダンジョンがあった場所から少しだけ、来た道を引き返して、俺たちは再び砂らくだに乗って、エネミーの集落があるとされる場所を目指している。どうやらここから更に南に向かうらしい。最南端にそろそろ着くのか。さすが南の地域というだけあって、気温もそこそこ高いから体調に気を付けないといけないな。シャオは地図を確認しているようだ。

「騎士団のやつらと間もなく合流できる。エネミー殲滅はそれからだな」

「それならよかっ…」

俺は振り返った。あれ?なんか後ろから音が近付いてくる。それはだんだん低い地響きに変わってきた。なんだこれ、やばい。なにかが来る!!

「ましろ!避けろ!」

シャオが叫ぶ。俺は慌てて砂らくだごとジャンプしてそれを回避した。一体なんだ?砂らくだは今の衝撃で、消滅してしまったようだ。可哀想なことをしてしまった。なんとか着地には成功する。下が砂だったからなんとかなった。
振り返ると相手はかなりでかいモンスターだった。長さだけでも15メートルはある。口がとてつもなく大きなモンスターで、目が退化しているようだ。
目が退化しているのは、砂が目の中に入らないようにかな?やつは砂の中を泳ぐように行動できるようだ。クソ、厄介だな。

「ギュルルルル!!!」

 モンスターが叫ぶ。俺たちだって負けていられない。シャオが魔剣を構える。でも、ロザリアはやる気を出してくれていないようだ。ということは、そこまで強い敵じゃないのかな?それともロザリアの気分?理由は分からない。
とにかく今は相手に集中するしかない。

俺は妨害魔法の詠唱を始めた。ロッドをぎゅっと握りながら唱える。これは、師匠が俺のために作ってくれた専用のロッドだ。魔力を少しだけど底上げしてくれる。俺の大事な武器で相棒だ。
シャオがモンスターに斬りかかる。ブシュとかブシャとかモンスターの皮膚が剣に切り裂かれて青い体液が飛び散る。シャオはその体液を浴びて、青くなっていた。顔に付いた体液をシャオが手の甲で拭う。あ、シャオ、イライラしてるぞ。

「くっそ、こいつでけえな。クソめんどくせえ…」

シャオがそう悪態をついた時だった。

「はっ!!」

「ギュルギュアアア」

誰かの声がして、モンスターが急に苦しみ出す。何が起きたんだ?よく見ると、モンスターの体に矢が何本も突き刺さっている。いつの間に?

「貫け!!氷の刃!!」

ズガァンという容赦のない氷攻撃。これって。シャオが気が付いたように弾んだ声を出す。

「白蓮、睡蓮!」

「王よ、お迎えにあがりました」

「手をかけるな、お前たち」

ルシファー騎士団のみんなが迎えに来てくれた!

「再会を喜ぶのは後です。まずはこの不届き者を倒しましょう」

フギさんが冷静に言うのに、みんなが頷いた。その後モンスターは、あっけなく討伐されたのだった。タイムアタックだったのかな?っていうくらい瞬殺だった。

「ましろ姫、無事で何よりです。鍵も外れたようですね」

「はい」

俺がそう答えるとフギさんが笑う。

「今のあなたに相応しい贈り物をしましょう」

フギさんが杖を振る。するとあっという間に戦闘でボロボロだった服が新しい服になっている。淡い水色のモコモコセットアップだ。もちろんハーフパンツである。俺の足、そんなに見たいの?

「可愛い、さすが俺の嫁」

「姉御、エロいっす」

モウカも相変わらずのようだ。あとで怒っておこう。なんで俺がエロいんだ。

「それにしても、モンスターに襲撃されるとは不運でしたね、王」

フギさんがそう言うとシャオが苦々しげに舌打ちする。

「お前、なんか楽しんでないか?」

「私としましては王の本気を見たいのですよ」

「お前は本当に物好きだな」

シャオとフギさんが楽しそうに話している。ルシファー騎士団は基本的にみんな仲がいい。

「このままエネミーを殲滅にいくのか?」

イサールさんが尋ねて来る。俺たちはなるべく速やかにエネミーを倒さなければならないんだ。
みんなも同じ気持ちのようで、笑って頷いた。フルスロットルってやつだ。スカーさんはすでにエネミーの集落にいるようだ。斥候って大変だな。彼の情報がいかに大切か、ここまで戦ってきてよく分かっている。何をするにしても、情報というものを決して舐めてはいけない。

「それにしてもましろ姫の魔力が随分強くなっているよね?」

睡蓮が感心したように言う。俺はダンジョン内で起こったことをみんなに話した。

「え、ましろ姫、天使の属性を持っているんだ?」

「珍しいな」

睡蓮と白蓮が呟く。

「っていうかさ、ましろ姫のお師匠様って何者なの?そんな危険なダンジョンに簡単に入ってるけど」

睡蓮が俺に向かって身を乗り出してくる。確かに。でも、あの人は特別だからなあ。

「師匠はヒト族だけど、鬼人に変身できるんだ。能力も普通のヒト族よりはるかに高いし」

「すごいなあ。ヒト族にも色々なヒトが居るんだね」

睡蓮が感心したように言う。
俺と師匠が出会ったのは今から三年ほど前だろうか。伸び悩んでいる俺を見かねて声を掛けてもらったんだ。師匠のもとで、魔力が少なくても戦えるよう、毎日訓練した。師匠は優しい。俺が出来なくても毎回励ましてくれた。

「ましろには今、俺が居るんだからな!!」

シャオが慌てたように言う。

「俺もいますよ!姉御!!」

モウカが食いぎみに言う。俺は二人に笑いかけた。

「ありがとうね、二人共」

「おやおや、姫の笑顔は格別ですからな」

とランスロットさんが笑う。

「僕たち、みんな姫が大好きだよ。ね、兄さん」

「ああ」

みんながうんうん、と頷いてくれて、俺は幸せな気持ちになった。
俺をこのヒトたちは受け入れてくれる。すごく嬉しいな。

2・「王よ、報告致します。
エネミーの集落はこの辺り一帯を支配しているようです」

俺たちは砂漠地帯を抜けて、湖のほとりにやってきていた。
澄んだ色の湖面が風に撫でられてそよいでいる。スカーさんとも無事合流できた。他の斥候部隊のヒトはさらに新しい情報を集めてくれているらしい。ヤナくん、元気かな。
絶対にこの戦いを終わらせるぞ。

「スカー、ありがとう。兵士たちも随分酷使させたな。レエヤから連絡があったが、エネミーはだんだん力を失いつつあるようだ」

「本当なの?シャオ」

俺の言葉に、シャオは頷いた。

「エネミーのほとんどは捕縛したしな。そして俺のところにこんなもんが届いた」

シャオが取り出したのは真っ赤な封筒だった。シャオが封筒を開けて中に入っていた便箋を俺たちに見せてくれる。あのサインは。

「ご丁寧なことにエリザ様からの招待状だ」

シャオが皮肉めいた口調で言う。

「この手を活かさないのはもったいないだろ?エネミーを誰が先導しているのか、この際はっきりさせようぜ」

「そのパーティーはヒト族の暮らす町で?」

睡蓮の言葉にシャオは答える。

「エリザ様とやらの御殿はこのあたりにあるようだ。偶然かどうか分からないが、俺たちはちょうど近くにいるらしい。こんなところにあって、エネミーの襲撃に遭わないのが不思議だよなぁ」

「そうだな、油断できない」

シャオの言葉に白蓮が呟く。沈黙があたりを包んだ。みんな、同じことを思っている。その招待状は何かの罠なんじゃないかって。エリザ様がそんなことをするなんて思いたくないけれど、シャオの言うことも頷ける。

「シャオ、どうするの?」

俺の問い掛けにシャオは笑った。

「もちろん行くに決まってる」

「でも、もし何かされたら」

「俺は最強魔王だぞ。みすみすやられるか」

確かにそうなんだけど。

「とりあえず、パーティが行われるのは明日だ。今日はこの辺りで休もう」

確かにここまでの移動で、クタクタになっている。俺たちは周りが見渡せる場所に陣取った。夜、こうして野宿をする場合、交代で見張りを立てる。俺たちは素早く食事を摂って休んだ。
明日、何が起きるか分からない以上、体調は万全にしておかなければ。

3・次の日、俺たちは二手に分かれて行動することになった。エネミーの捕縛をする班と、エリザ様のパーティーに行く班の二つだ。エリザ班はもちろん、シャオの護衛にあたる。

「スカー、フギ、白蓮、テンゲ、モウカ、ランスロットは、引き続きエネミーの捕縛を頼む。
睡蓮、イサール、ましろは俺と来い。この際だ、色々はっきりさせようぜ」

「はい」

みんながそれぞれ返事をする。エネミーとの戦いもこれで終わればいい。俺はロッドをぎゅっと握った。前より強くなれたとはいえ、周りのみんなと比べれば、俺はまだまだ弱い。もし、何かあった時、シャオたちの足手まといにならないようにしないと。師匠の優しい笑顔を思い出す。俺、頑張ります。

【ましろ、聞こえるかい?】

「え?」

みんなはもう行動を始めている。でも俺はそこから動けなかった。

「セレアなの?」

【君は真実を知りたいよね?エネミーを先導する者が誰なのか】

知りたくないって言ったら嘘になってしまう。俺は目を閉じた。
セレア、君の声がまた聞けて嬉しい。

「俺は真実を知りたい」

「それは好都合か」

「へ?」

目を開けると、よく知った笑顔があった。こんなところで出会うなんて。

「師匠?なんで?」

「弟子の動向を把握するくらい訳ないよ」

俺は師匠に抱き着いた。師匠によしよしと頭を撫でられる。

「ほらほらましろさん。まずはやるべきことをしよう」

「はい」

俺たちがこれからすること。口で言うのは簡単だけど、実行は難しいかもしれない。それでもやる。師匠がこうして来てくれたのにもなにか理由があるはずだ。
俺はこれから、エリザ様のお屋敷を調べるのだ。もちろんこっそりと。みんな、パーティーの方に気を取られている。侵入するなら今しかない。そして、探し出す。エネミーとエリザ様になにも関係がないことを。

「じゃあ行こうか」

師匠がパチン、と指を鳴らすと俺たちの体が浮かび上がった。そういえばセレアは?
もう一度問い掛けてみたけれど、彼から返事はなかった。
あっという間に俺たちは移動して、茂みの陰に着地していた。
少し先に立派なお屋敷が見える。あれがエリザ様のお屋敷。

「ましろさん、これから私たちは建物に侵入するよ。真実を突き止めるために」

「はい」

師匠が再び指を鳴らす。すると、師匠の姿が消えた。

「ましろさん、気配感知は昔教えたよね?」

「大丈夫です」

「うん、君は本当に優秀な弟子だ。魔王が君を気に入るのも分かる気がするよ」

「ありがとうございます」

師匠の気配を確認する。よし、俺はいつでもいけるぞ!

「じゃ、行こうか」

「はい!」

俺たちは屋敷に向かって走り出した。
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