上 下
5 / 22
1

宇宙人

しおりを挟む
ある昼休み、僕は廊下で様子をうかがっていた。
さっきゆづくんが一人で部室に入っていったのだ。
突撃しようか悩んでいる。
ここまで僕が彼をつけていたことは、どうか不問にして欲しい。

「かーなーたーくん!」

「ひえっ!!」

背後から声をかけられて、僕は飛び上がった。

「何やってんの?」

振り返ると真理先輩だった。
僕はホッと胸をなでおろした。

「いや、えーと、友達が」

「それにしては慎重よね?」

「うっ」

真理先輩は鋭い。油断ならない。

「あ!」

真理先輩はキラキラと目を輝かせ始める。
何を思いついたんだろう、怖い。

「もしかして、彼が宇宙人とかそうゆうこと?」

「は?」

何を言ってるんだろう。
真理先輩はつまらなそうに口を尖らせる。

「え、違うのー?」

「ち、違いますよ、ゆづくんは人間です」

「そんなのわかんないじゃないー」

「わかりますって」

しばらく真理先輩と押し問答して、僕は内心ため息をついた。真理先輩と話すのは体力がいる。

「ま、カナタくんがあの子が好きってのはわかったわ!」

「え」

バレてる!なんで!!

「あたし、そういうのわかっちゃうのよね!
いいわ!花柳ゆづるくんをインタビューしましょう!我らが大平高校の期待のホープとして!」

「はぁ!?」

真理先輩はバンバンと僕の背中を叩いて頼むわね!とだけ言って去っていった。
面倒くさいことになった。
というか、真理先輩はゆづくんの名前を知っていた。
そういえば倉沢もゆづくんについて詳しかったような気がする。
もしかしてゆづくんって、有名人なの?
予鈴のチャイムが鳴って、僕は教室に慌てて戻った。
ゆづくんはちゃんと教室に戻れたのかな?
それにしてもインタビューどうしよう。
困ったことになった。
僕は授業中ずっと悶々としていた。
しおりを挟む

処理中です...