47 / 128
第一章
43 -ルークside- ⑬
しおりを挟む成人を間近に控えて、これからのことをより具体的に考えるようになった。錬金術師として身を立てるという目標は、今までと変わらない。ただ気がかりなのは、俺が進もうとする道にユイを巻き込もうとしていることだ。しかも、自分の素性もまだ明かせていない。
ユイがいない未来なんて考えられない。でも、ユイが俺と一緒に生きることを、望んでいない可能性だってある。
早いうちに話をしないとと考えていたら、夜の礼拝堂でユイの方から話を振ってきた。
「ルークは孤児院を出たあと、どうするつもりなの?」
「それなんだけど、…ユイ。俺が成人したら、一緒にこの村を出ないか?」
質問に質問で返すのは良くないと分かっているのに、つい気持ちが急いてしまった。
「俺、この孤児院にきた事情が他の子たちとは少し違って…。家族とは、たまに連絡をとってるんだ。成人したら一度家に戻って、これから自分がどうするのかを改めて話すつもり。それで──、ユイはどうする?」
色よい返事をもらえなくても、説得するつもりだ。それに、ユイがここで暮らしていきたいと言ったら、<秘密基地>を改築してそこに住めばいい。移動は転移魔法を使えば何処へでも行ける。ただできれば、ユイと一緒に世界を見て回りたいとも思っていた。
するとユイは、思いのほか早く応えてくれた。
「僕も一緒に行く。ルークと一緒なら、どこへでも行ける気がする」
微笑みながらそう言うユイを見て、愛しさが込み上げて思わず抱きしめた。この先、俺の隣にはユイがいてくれると思うと、嬉しくて仕方がなかった。
「うん。どこへでも連れて行ってあげる。……だから、ずっと俺のそばにいて?」
「だったらルークも、僕のことを離さないでね」
「頼まれたって、離してやらないから」
ユイと一緒にこの村を出る約束をしてからは、今まで以上に魔法薬や魔法具の製作に力を注いだ。とはいっても、手持ちの素材をかき集めても納得のいく魔法具はあまり作れない。だからポーション作りがメインになった。ほかにも、少しでも今後の生活の資金の足しになればと、薬草を調合していろいろな効能の薬も作った。
作ったものは、村からほど近い街にある冒険者ギルドで買い取ってもらう。ユイと過ごす時間は減ってしまったのは寂しかったが、着実に資金を貯めて、これからのユイとの時間のためだと自分を奮い立たせた。
その日も、ポーションを納品するために、教会裏で転移魔法陣を展開させた。
ユイは俺が街に行くとき、必ず見送ってくれる。
「今日はそんなに量が多くないから、お昼ごろには帰れると思う」
「うん、わかった。気を付けて」
「いってきます」
ユイを抱き寄せて、触れるだけのキスをした。別れ際にするお決まりの行為なのに、ユイは毎回恥ずかしがって俺を窘める。
「ははっ、そんなに怒らないで?じゃあ今度こそ、いってきます」
魔法を発動させた瞬間、声は聞こえなかったが、ユイの唇が「いってらっしゃい」と動き、柔らかく微笑んでいた。
それが、ユイとの甘い時間を過ごした最後の瞬間となることを、俺はこの時、想像すらしていなかった。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる