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第一章
44 -ルークside- ⑭
しおりを挟む街の裏路地に到着すると、さっそく俺は冒険者ギルドに向かった。今回は上級ポーションを数本生成できたから、それなりの値で買い取ってくれるはずだ。それが終わったら、急いで孤児院に帰ろう。ここ数日は特にユイと一緒にいる時間を削っていたから、何か口実をつくって<秘密基地>に連れ込みたい。
冒険者ギルドの扉を開くと、鎧や厳つい装備をした冒険者たちが右往左往していて、相変わらず騒がしかった。朝のこの時間帯は、冒険者たちがクエストの受注や報告をするためにギルドに殺到する。各受付窓口には行列ができていて、ギルド職員も慌ただしく動いている。
今日はギルドマスターがこの時間しか空いていないって言っていたし、仕方ないか…。
一番列が短い窓口に並んだが、それでも自分の番がくるまでかなりの時間を要した。窓口担当にギルドマスターへの取り次ぎを頼み、さっさと壁際に寄って声がかかるのを待つ。
「ルークさん、お待たせしました。マスターのお部屋へご案内します」
しばらくして、ギルド職員が声をかけてきた。何度も来ているからギルドマスターの部屋の場所は覚えているが、ギルド職員と一緒でないと入れない場所だから、毎回案内人がつく。
ギルドマスターの部屋の前に到着すると、職員がドアをノックして来訪を知らせた。
「マスター、ルークさんをお連れしました」
「おぅ、入れ」
中から声が聞こえると、ギルド職員がドアを開けて入室を促した。俺が中に入るとギルド職員も後に続き、ドアを閉めてその近くに控えた。
「待たせて悪かったな、先客の用件が長引いた」
「いえ、大丈夫です。早速ですが、今週納品分の確認をお願いします」
自作のマジックバッグから上級ポーションを数本と通常のポーション、そして調薬した薬を出してテーブルに広げた。
ギルドマスターは元冒険者だけあって、屈強な体つきをしている。現役時代に培った鑑識眼は衰えるどころか磨きがかかり、引退してマスターの任に就いた今でもその威圧感は最盛期と変わらないと聞く。そんな人が自分が作ったポーションを評価してくれるというのは、錬金術師を目指す者として喜ばしいことだ。
「うん、確かに上級ポーションだな。他のポーションや薬も高品質だ」
「ありがとうございます。では、買い取りをお願いします」
俺がそう言うと、ギルドマスターはドアの近くにいたギルド職員に目配せし、ソファに深く座り込んだ。
「しかし、勿体ないな。これだけのものを作れるような魔法を使えて、腕っぷしも申し分ないのに、冒険者じゃなく錬金術師だなんて」
「その話、何度目ですか」
冒険者ギルドは12歳を過ぎたら誰でも登録できる。だからギルドマスターは、こうやって度々勧誘してくる。
「魔法は魔法具に効果付与するのに必要不可欠ですし、身体を鍛えていたら危険な場所でも自分で素材採取ができるでしょう?」
「そうだ!何ならギルド専属の錬金術師になるのはどうだ?報酬ははずむぞ」
「そうですね。気が向いたら」
雑談しているうちに、さっきのギルド職員が硬貨の入った革袋と書類を乗せたトレイを持って部屋に入ってきた。俺は買い取り価格を確認して書類にサインすると、部屋を出ようと立ち上がった。
「そうだ、ルーク」
「何です?」
「最近、タチの悪い魔法具を売りさばいている輩がこの近辺に出るらしい。もし不審なヤツや、変な魔法具を見かけたら教えてくれ」
「わかりました」
冒険者ギルドへの納品を終え、建物の外に出てから裏路地に向かう途中、いつもより露店に出ている品が多いことに気づいた。今日はいつもより早く用が済み、客がそこまで多い時間帯じゃないからだ。
まだ昼前だし、少し見て回ろうかな。何かいいものがあったら、お土産に買っていこう。
「あれっ?ルーク!?」
露店を巡っていたら、後ろから聞き覚えのある声で俺の名前を呼んだ。振り返ると、そこにはいつもより着飾ったサラが立っていた。
「奇遇ね!ルークもお買い物?」
「ああ、まぁ…」
「じゃあ一緒にお店を回らない?私、今日は一人で来てて…」
「悪いけど、もう帰るところだから」
そう言ってその場を離れようとしたら、サラは俺の服を引っ張り、行く手を阻んだ。怪訝に思って振り返ると、サラは涙を堪えるような顔をして俺を見ていた。
「お願い!これで最後にするから!」
いつもだったらそんなことはしないのに、今日はやけに食い下がってくる。
「私、ルークが誰を好きか分かってる。そこに私が入り込む隙もないってことも。それに、18歳になったら孤児院を出て、どこかに行くんでしょ?だったら最後に、ルークとの思い出をちょうだい?」
「………」
サラが自分に好意を抱いていることは知っていた。彼女はそれを隠そうとせず、これまで積極的にアプローチしてきた。だから、変に望みを持たせないように接してきたつもりだった。
でも、好きな人に見てもらえない辛さは、俺にも理解できる…。
「………はぁ、分かったよ」
「…っ!本当!?」
「でも、これっきりだ。今後はこういうことはしないからな」
「ありがとう!」
こうして俺は、予期せずサラと街を巡ることになった。
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