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差し出された足
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◇
「智子、最近、石谷さんと仲いいんだね」
同じクラスの須藤さんが私の机に椅子を持ってきて一緒に給食を食べている智子を見て言った。
「えへへ、でも加奈ちゃん、お昼休みは忙しいんだよ」
「ちょっと、智子、それは秘密」慌てて智子を制する。
秘密にしているわけではないけど、あまり人が聞いて感じのいいものではない。
「加奈ちゃん、今日も音楽室に行くの?」
智子がいつものように訊ねてくる。その質問に安心している自分がいる。
「うん。そのつもり」私はいつものように返事をする。
「もっと加奈ちゃんとおしゃべりしたいな」私だってそうだ。
「発表会が近づいているから、しょうがないよ」
「そうだね。私って、加奈ちゃんの何の力にもなれないもんね」
私たちの席の近くでは伊藤さんという女の子が誰とも話さず一人で給食を食べている。
私も少し前までは彼女と同じだった。別に何の不自由もなかった。教科書を忘れてきたりしたら隣の子に見せてもらったりして別に寂しいとも思わなかった。
けれど、一度知ってしまうとダメだ。今は智子がいない自分をもう考えられない。
力になれないのは私の方かもしれない。
「音楽室、一緒に来る?」今日は智子に来て欲しかった。
「加奈ちゃん、いいの?」
一瞬で智子の表情が変わる。
「いいよ。発表会用の曲、智子に聴いてもらいたいの」
「いく、いく。私、はやく食べるね」
智子はいつも給食を食べるのが遅い。
「うーん。やっぱりパンは早く食べるの、無理だあ。残すよ」と言って智子はコッペパンを給食袋に入れた。
「お母さんに怒られるよ」慌てているのが微笑ましい。
「あとで食べる。パンさん、ごめんなさい。それより、はやく音楽室に行こうよ」
智子はパンに両手を合わせると嬉しそうな顔を私に見せて自分の席に椅子を片付けに行った。
給食袋をしまうと、急いでこちらに向かってきた。
たぶん誰かの足に躓いたのだろうか?
智子はずてーんっと前のめりにこけた。
川田さんという女の子の足が智子の足の前に急に出て智子はそれに躓いたのだ。
「智子、大丈夫?」
私は慌てて駆け寄った。智子はうつ伏せのまま「いたあっ」と言った。
「ごめん、ごめん」
川田さんは謝っているけど顔が少し笑っている。
「ちょっと、川田さん、智子が来るのに気づかなかったの?」
私は少し口調を荒げて言った。
「だってこんな狭い所、走ってくるなんて誰も思わないわよ」
川田さんは平気な顔で答える。
「いいよ、いいよ。加奈ちゃん、私がブスなんだから」
智子はよろよろと起き上がるなり私を見て微笑んだ。
「もうっ、智子、ブスじゃなくて、ドジでしょ。こんな時に変なこと言わないでよ」
智子の笑っている顔のおでこは赤くなっていた。
「おでこ、血が出てる!」
きっと机の角かどこかで頭をぶつけたんだ。
「智子、保健室に一緒に行こ!」
消毒くらいはした方がいい。内出血だってしてるみたいだ。
「いいよ、私、一人でいくから、加奈ちゃん、音楽室に行ってきて」
智子は私の背中を両手で押した。強い力に圧倒される。
「だって」
「本当に大丈夫だから。こんなの全然平気だから」
智子はおでこをポンと手で叩いてみせて保健室に走っていった。
「智子、最近、石谷さんと仲いいんだね」
同じクラスの須藤さんが私の机に椅子を持ってきて一緒に給食を食べている智子を見て言った。
「えへへ、でも加奈ちゃん、お昼休みは忙しいんだよ」
「ちょっと、智子、それは秘密」慌てて智子を制する。
秘密にしているわけではないけど、あまり人が聞いて感じのいいものではない。
「加奈ちゃん、今日も音楽室に行くの?」
智子がいつものように訊ねてくる。その質問に安心している自分がいる。
「うん。そのつもり」私はいつものように返事をする。
「もっと加奈ちゃんとおしゃべりしたいな」私だってそうだ。
「発表会が近づいているから、しょうがないよ」
「そうだね。私って、加奈ちゃんの何の力にもなれないもんね」
私たちの席の近くでは伊藤さんという女の子が誰とも話さず一人で給食を食べている。
私も少し前までは彼女と同じだった。別に何の不自由もなかった。教科書を忘れてきたりしたら隣の子に見せてもらったりして別に寂しいとも思わなかった。
けれど、一度知ってしまうとダメだ。今は智子がいない自分をもう考えられない。
力になれないのは私の方かもしれない。
「音楽室、一緒に来る?」今日は智子に来て欲しかった。
「加奈ちゃん、いいの?」
一瞬で智子の表情が変わる。
「いいよ。発表会用の曲、智子に聴いてもらいたいの」
「いく、いく。私、はやく食べるね」
智子はいつも給食を食べるのが遅い。
「うーん。やっぱりパンは早く食べるの、無理だあ。残すよ」と言って智子はコッペパンを給食袋に入れた。
「お母さんに怒られるよ」慌てているのが微笑ましい。
「あとで食べる。パンさん、ごめんなさい。それより、はやく音楽室に行こうよ」
智子はパンに両手を合わせると嬉しそうな顔を私に見せて自分の席に椅子を片付けに行った。
給食袋をしまうと、急いでこちらに向かってきた。
たぶん誰かの足に躓いたのだろうか?
智子はずてーんっと前のめりにこけた。
川田さんという女の子の足が智子の足の前に急に出て智子はそれに躓いたのだ。
「智子、大丈夫?」
私は慌てて駆け寄った。智子はうつ伏せのまま「いたあっ」と言った。
「ごめん、ごめん」
川田さんは謝っているけど顔が少し笑っている。
「ちょっと、川田さん、智子が来るのに気づかなかったの?」
私は少し口調を荒げて言った。
「だってこんな狭い所、走ってくるなんて誰も思わないわよ」
川田さんは平気な顔で答える。
「いいよ、いいよ。加奈ちゃん、私がブスなんだから」
智子はよろよろと起き上がるなり私を見て微笑んだ。
「もうっ、智子、ブスじゃなくて、ドジでしょ。こんな時に変なこと言わないでよ」
智子の笑っている顔のおでこは赤くなっていた。
「おでこ、血が出てる!」
きっと机の角かどこかで頭をぶつけたんだ。
「智子、保健室に一緒に行こ!」
消毒くらいはした方がいい。内出血だってしてるみたいだ。
「いいよ、私、一人でいくから、加奈ちゃん、音楽室に行ってきて」
智子は私の背中を両手で押した。強い力に圧倒される。
「だって」
「本当に大丈夫だから。こんなの全然平気だから」
智子はおでこをポンと手で叩いてみせて保健室に走っていった。
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