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本編
第33話 『不安だらけ』 ③
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「ねぇ、ヴィニー。お話を、聞いてくれないかしら?」
自室に戻った私は、お部屋の掃除をしていたヴィニーにそんな風に声をかけました。ヴィニーは「珍しいですね、改まって」とだけ言うと、すぐに掃除道具を片付け始めてくれます。あぁ、ヴィニーのお仕事の邪魔をしてしまったかなぁ。そう思ってしまいますが、ヴィニーからすればきっと私のお話を聞くのもお仕事だと思ってくれていると思います。だから大丈夫……ですよね?
「少々お待ちくださいね。すぐにお茶を淹れますので……」
ヴィニーはその後、お茶を淹れ始めました。良い香りが鼻腔をくすぐり、自然と心が落ち着きます。どうやら、ヴィニーは私の気持ちもよくわかってくれているようです。心が焦っていたことも、分かってくれていたよう。だからこそ、落ち着くブレンドを選んでくれたのでしょうね。
「どうぞ、モニカ様」
そんなことを考えている間に、ヴィニーがお茶を私が座っているソファーの前のテーブルに出してくれます。まだ、湯気が出ている温かい紅茶。その香りに、やっぱり心が落ち着く。私はゆっくりとカップを手に取って、その紅茶を一口飲みました。いつも通り落ち着く味だわ。これは、私が好きなブレンドでもあります。だから、尚更落ち着く。
「それで、どうなさったのですか?」
私が紅茶のカップをテーブルに戻すのとほぼ同時に、ヴィニーがそう声をかけてくれる。だから、私は意を決したように口を開きました。
そして、ヴィニーに今日あった出来事をすべて話しました。アイザイア様が、レノーレ様とお会いしていたということ。それと同時に、私の心が痛んだということ。心が、もやもやとしたということ。すべてを、ヴィニーに話しました。それを聞いた感想を私が求めると、ヴィニーはしばらく考え込んだ後、言ったのです。
「モニカ様は、アイザイア様が大好きなのですね」
と。
(……大好きって、確かに兄のような存在としては好きだと思っているけれど……)
そう、私はアイザイア様のことを「兄のような存在」として、大好きなのです。決して、ヴィニーの思っているようなことじゃない……はず。そう、そうです。そうに決まっています。私は……アイザイア様のことを、兄のように慕っていて……。
「……あら、モニカ様は気が付いていらっしゃらなかったのですか? モニカ様はアイザイア様のことが大好きですよ?」
「そ、それは、気が付いているわ。でも……ヴィニーの想像するような感情ではなくて……」
「いいえ、モニカ様はアイザイア様のことを『恋愛感情で』好いていますよ」
ヴィニーはそう言って、手のかかる妹のことを見るような視線で私のことを見つめてきます。その視線は、とても生温かいもので。私は……居心地が悪くなってしまいました。だからこそ、お話を変えたい。そう思ったのですが、そもそもこのお話という名の相談を切り出したのは私の方。そう簡単に、お話を変えることは出来ませんでした。
「モニカ様は、レノーレ様に嫉妬していらっしゃるのでしょう? それは、当然のことですよ」
「……嫉妬?」
嫉妬なんて、したことがない……はず。私は物分かりの良い婚約者……のはず。だから、問題なんてないはずなんです。
「えぇ、アイザイア様のことが好きすぎて、レノーレ様に嫉妬していらっしゃるのでしょう? でも……」
「で、でも……?」
「アイザイア様もアイザイア様ですわ。モニカ様がこんなにも苦しんでいるのに……」
そんなことを思っている間に、ヴィニーが次から次へと私に何かを伝えてきます。でも、その言葉の数々を私は真面目に聞いていませんでした。……だって、私は――……。
(……嫉妬、しているのかしら?)
それよりも、考えることがあったからです。嫉妬なんて、しないと思っていたのに。だから、自分が抱いている感情が嫉妬だと、信じたくなかったのです。
「ねぇ、ヴィニー。お話を、聞いてくれないかしら?」
自室に戻った私は、お部屋の掃除をしていたヴィニーにそんな風に声をかけました。ヴィニーは「珍しいですね、改まって」とだけ言うと、すぐに掃除道具を片付け始めてくれます。あぁ、ヴィニーのお仕事の邪魔をしてしまったかなぁ。そう思ってしまいますが、ヴィニーからすればきっと私のお話を聞くのもお仕事だと思ってくれていると思います。だから大丈夫……ですよね?
「少々お待ちくださいね。すぐにお茶を淹れますので……」
ヴィニーはその後、お茶を淹れ始めました。良い香りが鼻腔をくすぐり、自然と心が落ち着きます。どうやら、ヴィニーは私の気持ちもよくわかってくれているようです。心が焦っていたことも、分かってくれていたよう。だからこそ、落ち着くブレンドを選んでくれたのでしょうね。
「どうぞ、モニカ様」
そんなことを考えている間に、ヴィニーがお茶を私が座っているソファーの前のテーブルに出してくれます。まだ、湯気が出ている温かい紅茶。その香りに、やっぱり心が落ち着く。私はゆっくりとカップを手に取って、その紅茶を一口飲みました。いつも通り落ち着く味だわ。これは、私が好きなブレンドでもあります。だから、尚更落ち着く。
「それで、どうなさったのですか?」
私が紅茶のカップをテーブルに戻すのとほぼ同時に、ヴィニーがそう声をかけてくれる。だから、私は意を決したように口を開きました。
そして、ヴィニーに今日あった出来事をすべて話しました。アイザイア様が、レノーレ様とお会いしていたということ。それと同時に、私の心が痛んだということ。心が、もやもやとしたということ。すべてを、ヴィニーに話しました。それを聞いた感想を私が求めると、ヴィニーはしばらく考え込んだ後、言ったのです。
「モニカ様は、アイザイア様が大好きなのですね」
と。
(……大好きって、確かに兄のような存在としては好きだと思っているけれど……)
そう、私はアイザイア様のことを「兄のような存在」として、大好きなのです。決して、ヴィニーの思っているようなことじゃない……はず。そう、そうです。そうに決まっています。私は……アイザイア様のことを、兄のように慕っていて……。
「……あら、モニカ様は気が付いていらっしゃらなかったのですか? モニカ様はアイザイア様のことが大好きですよ?」
「そ、それは、気が付いているわ。でも……ヴィニーの想像するような感情ではなくて……」
「いいえ、モニカ様はアイザイア様のことを『恋愛感情で』好いていますよ」
ヴィニーはそう言って、手のかかる妹のことを見るような視線で私のことを見つめてきます。その視線は、とても生温かいもので。私は……居心地が悪くなってしまいました。だからこそ、お話を変えたい。そう思ったのですが、そもそもこのお話という名の相談を切り出したのは私の方。そう簡単に、お話を変えることは出来ませんでした。
「モニカ様は、レノーレ様に嫉妬していらっしゃるのでしょう? それは、当然のことですよ」
「……嫉妬?」
嫉妬なんて、したことがない……はず。私は物分かりの良い婚約者……のはず。だから、問題なんてないはずなんです。
「えぇ、アイザイア様のことが好きすぎて、レノーレ様に嫉妬していらっしゃるのでしょう? でも……」
「で、でも……?」
「アイザイア様もアイザイア様ですわ。モニカ様がこんなにも苦しんでいるのに……」
そんなことを思っている間に、ヴィニーが次から次へと私に何かを伝えてきます。でも、その言葉の数々を私は真面目に聞いていませんでした。……だって、私は――……。
(……嫉妬、しているのかしら?)
それよりも、考えることがあったからです。嫉妬なんて、しないと思っていたのに。だから、自分が抱いている感情が嫉妬だと、信じたくなかったのです。
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