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本編 第2章
第9話
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それから二時間が経ち。
真白は実家から持ってきたワンピースを身にまとっていた。頭にはつばの広い帽子をかぶり、日差し対策もばっちりだ。
ちらりと隣を見つめれば、何処か申し訳なさそうな表情を浮かべる律哉がいる。
ここ三十分で何度聞いたかわからない「すまない」を聞き流しつつ、真白は「いえ」とゆるゆると首を横に振った。
「だが、女性を歩かせるなど悪いだろう。……お金さえあれば、いいのだが」
そう言った律哉のことが、若干うざくも感じてしまう。
(けれど、そう思ってはダメよ。律哉さんは私のためを思って謝罪を口にされているのだから……)
自分にそう言い聞かせつつ、真白は歩く。
降り注ぐ日差し。風があまりない所為で、余計に暑く感じてしまう。
そう思いつつ、真白は額に流れる汗を拭った。
(大体、私だって節約に賛成しているのだから……)
律哉の横顔を見つめて、真白は心の中だけでそう呟く。
律哉がここまで申し訳なさそうなのは、買い物に向かう際に真白を歩かせているためだ。
大体金持ちの家の娘は、馬車移動が基本だ。なので、真白も今まで例にもれず馬車で移動してきた。
そして、そこが律哉の罪悪感を煽ったらしい。
「……乗合馬車にでも、乗るか?」
そう問いかけられて、真白は「いえ」とはっきりと断った。
「乗合馬車に乗るとしても、乗るのは帰りのほうがいいです。荷物があるのですから」
「……それも、そうだが」
「往復で乗ってしまうと、多額のお金がかかってしまいます」
実際、今の桐ケ谷家ではほんの少しのお金でも大金である。そんな、ぽいぽい出せるような状態じゃない。
「だったら、俺が往復歩けばいいだろう。俺は軍人で、体力もある」
「だとしても、です」
さも当然のようにそう言う律哉は、本当に優しいのだろう。それは、ひしひしと伝わってくる。
合わせ、そこにある自己犠牲の精神もよく伝わってくるのだ。が、真白が欲しいのはそんなことじゃない。
「そうなってしまえば、私の罪悪感が凄まじいことになりそうです。なので、共に歩いて向かって、帰りに乗合馬車に乗りましょう」
「……あぁ」
ここまで言えば、さすがの彼も折れてくれた。
それに心の中だけでほっと息を吐いて、前を向く。視界の端の端に、遠目から見てもにぎわっている街がある。
「ところで、なにか必要なものはあっただろうか?」
「……まぁ、そうですね。一応、一覧にはしてみたのですが」
「準備が良いな」
感心したように律哉はそう言うが、真白からすればそれは当然のことだ。
商家の娘として、何事もメモする癖がついている。それに、頭を整理するためには文字にするのが一番だと、真白は思っているのだ。
「必要なものとしては……そうですね。まず、タオルとか必要かと」
「……タオル、か?」
「はい」
怪訝そうな律哉の顔を見て、真白は苦笑を浮かべてしまった。
多分、律哉はあのタオルでも構わないと思っているのだろう。でも、真白からすればたまったものじゃない。
そもそも――タオルは一枚じゃ到底足りないだろう。
「今後二人で暮らしていくのですから、二枚は必要でしょう。あと、純粋にあれは汚いです」
ほつれは目立ち、汚れも目立っている。あんなものをいつまでも使用するわけにはいかない。
(物を大切にするのは素敵だけれど、限度があるものね)
そう思い、真白はうんうんと頷く。律哉も、真白の言葉を聞いてちょっとは納得してくれたらしい。
「あとは、事細かな生活用品が必要ですね。ある程度は持ってきましたが、本当に最低限なので……」
生憎、消耗品は持たせてもらっていない。石鹸なども、購入する必要がありそうだった。
「消耗品の類、食材、あとは……」
「……ちょっと、待ってくれ」
真白が必要なものを挙げていく。……すると、途中で律哉にストップをかけられてしまった。
驚いて彼のほうを見れば、彼はなんとも言えない表情を浮かべている。
真白は実家から持ってきたワンピースを身にまとっていた。頭にはつばの広い帽子をかぶり、日差し対策もばっちりだ。
ちらりと隣を見つめれば、何処か申し訳なさそうな表情を浮かべる律哉がいる。
ここ三十分で何度聞いたかわからない「すまない」を聞き流しつつ、真白は「いえ」とゆるゆると首を横に振った。
「だが、女性を歩かせるなど悪いだろう。……お金さえあれば、いいのだが」
そう言った律哉のことが、若干うざくも感じてしまう。
(けれど、そう思ってはダメよ。律哉さんは私のためを思って謝罪を口にされているのだから……)
自分にそう言い聞かせつつ、真白は歩く。
降り注ぐ日差し。風があまりない所為で、余計に暑く感じてしまう。
そう思いつつ、真白は額に流れる汗を拭った。
(大体、私だって節約に賛成しているのだから……)
律哉の横顔を見つめて、真白は心の中だけでそう呟く。
律哉がここまで申し訳なさそうなのは、買い物に向かう際に真白を歩かせているためだ。
大体金持ちの家の娘は、馬車移動が基本だ。なので、真白も今まで例にもれず馬車で移動してきた。
そして、そこが律哉の罪悪感を煽ったらしい。
「……乗合馬車にでも、乗るか?」
そう問いかけられて、真白は「いえ」とはっきりと断った。
「乗合馬車に乗るとしても、乗るのは帰りのほうがいいです。荷物があるのですから」
「……それも、そうだが」
「往復で乗ってしまうと、多額のお金がかかってしまいます」
実際、今の桐ケ谷家ではほんの少しのお金でも大金である。そんな、ぽいぽい出せるような状態じゃない。
「だったら、俺が往復歩けばいいだろう。俺は軍人で、体力もある」
「だとしても、です」
さも当然のようにそう言う律哉は、本当に優しいのだろう。それは、ひしひしと伝わってくる。
合わせ、そこにある自己犠牲の精神もよく伝わってくるのだ。が、真白が欲しいのはそんなことじゃない。
「そうなってしまえば、私の罪悪感が凄まじいことになりそうです。なので、共に歩いて向かって、帰りに乗合馬車に乗りましょう」
「……あぁ」
ここまで言えば、さすがの彼も折れてくれた。
それに心の中だけでほっと息を吐いて、前を向く。視界の端の端に、遠目から見てもにぎわっている街がある。
「ところで、なにか必要なものはあっただろうか?」
「……まぁ、そうですね。一応、一覧にはしてみたのですが」
「準備が良いな」
感心したように律哉はそう言うが、真白からすればそれは当然のことだ。
商家の娘として、何事もメモする癖がついている。それに、頭を整理するためには文字にするのが一番だと、真白は思っているのだ。
「必要なものとしては……そうですね。まず、タオルとか必要かと」
「……タオル、か?」
「はい」
怪訝そうな律哉の顔を見て、真白は苦笑を浮かべてしまった。
多分、律哉はあのタオルでも構わないと思っているのだろう。でも、真白からすればたまったものじゃない。
そもそも――タオルは一枚じゃ到底足りないだろう。
「今後二人で暮らしていくのですから、二枚は必要でしょう。あと、純粋にあれは汚いです」
ほつれは目立ち、汚れも目立っている。あんなものをいつまでも使用するわけにはいかない。
(物を大切にするのは素敵だけれど、限度があるものね)
そう思い、真白はうんうんと頷く。律哉も、真白の言葉を聞いてちょっとは納得してくれたらしい。
「あとは、事細かな生活用品が必要ですね。ある程度は持ってきましたが、本当に最低限なので……」
生憎、消耗品は持たせてもらっていない。石鹸なども、購入する必要がありそうだった。
「消耗品の類、食材、あとは……」
「……ちょっと、待ってくれ」
真白が必要なものを挙げていく。……すると、途中で律哉にストップをかけられてしまった。
驚いて彼のほうを見れば、彼はなんとも言えない表情を浮かべている。
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