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第1章
③
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「そうだ。最近下町でまたうわさになってるよ。――王太子の話」
「……あぁ、あれね」
ロジアネの言葉にリリアンは肩をすくめた。
現在、このバルビゼ王国に王太子はいない。というのも、現在王宮では熾烈な次期王位争いが起きているのだ。
「どっちが優勢とかないの?」
純粋な問いかけに、リリアンは首を横に振った。
「優勢とか劣勢とか、そういうのないのよ。完全に互角なの」
第一王子と第二王子。二人はそれぞれ貴族を取り込み、自身の派閥を作っている。
「お妃さま方も自身の息子を次期国王にしようと必死だし。積極的に息子の派閥に貴族を引き込んでいるわ」
そのせいか、貴族の世界は今、とてもごちゃごちゃしているという。
庶民のリリアンには直接関係のあることではないが、王宮で働いている以上無視はできない。
「王妃殿下にご子息がいらっしゃったら一番よかったのだけどね」
現在の国王には三人の妃がいる。
侯爵家出身の王妃と、伯爵家出身の二人の側妃だ。
国王は王妃を一途に愛していたが、政治的な絡みで側妃を持つことを強制された。
そして、代々国の重鎮だった二つの伯爵家から妃を迎えたのだ。
国王は義務的に側妃の元に向かい、二人は同時期に懐妊した。さらに、二人とも王子を産んだことにより――この問題が勃発したのだ。
王妃との間にも二人の子がいるが、共に王女。ゆえにこの問題が収まる気配はない。
「陛下も優柔不断ね」
「まぁ、当然じゃない? 側妃さま方のお父上って未だに王宮で権力を持ってるし」
そのせいで、国王も大胆な行動に出ることが出来ないのだろう。
どちらかの王子を立太子すると、逆の王子の親族から不満が出る。八方ふさがりだ。
「そういうの聞くと、私たち庶民でよかったよね」
ロジアネが水を飲む。リリアンも同意だ。
「私たちにお貴族さまの考えなんてわからないし、一生わかることもないわよ」
「……お義姉ちゃんは関わることあるじゃん」
「あっても同じよ。私たちとお貴族さまの間には分厚い壁があるの」
女官だって、出世するのは決まって貴族出身だ。そのため、リリアンは出世が見込めない。
(給金はいいし、仕事もやりがいがある。……でも、やっぱり)
自分と貴族出身の女官たち。明らかに待遇に違いがあった。
たとえリリアンのほうが仕事ができても、優遇されるのは貴族出身の女官たち。正直、やる気が低下する。
(と、こんなこと思っていても仕方ないわ! 私は借金を返さなくちゃならないんだから!)
こぶしを握って、リリアンはオムレツを口に入れた。
「ごちそうさま! 荷物のチェックしてくるね」
「うん。私はもうすぐ出るから、戸締りよろしく」
「オッケー」
ロジアネの言葉にうなずいて、リリアンは食器を台所に持っていき、私室に引っ込む。
このときのリリアンは、まさか自分が貴族の世界に足を踏み入れるなんて――想像もしていなかった。
「……あぁ、あれね」
ロジアネの言葉にリリアンは肩をすくめた。
現在、このバルビゼ王国に王太子はいない。というのも、現在王宮では熾烈な次期王位争いが起きているのだ。
「どっちが優勢とかないの?」
純粋な問いかけに、リリアンは首を横に振った。
「優勢とか劣勢とか、そういうのないのよ。完全に互角なの」
第一王子と第二王子。二人はそれぞれ貴族を取り込み、自身の派閥を作っている。
「お妃さま方も自身の息子を次期国王にしようと必死だし。積極的に息子の派閥に貴族を引き込んでいるわ」
そのせいか、貴族の世界は今、とてもごちゃごちゃしているという。
庶民のリリアンには直接関係のあることではないが、王宮で働いている以上無視はできない。
「王妃殿下にご子息がいらっしゃったら一番よかったのだけどね」
現在の国王には三人の妃がいる。
侯爵家出身の王妃と、伯爵家出身の二人の側妃だ。
国王は王妃を一途に愛していたが、政治的な絡みで側妃を持つことを強制された。
そして、代々国の重鎮だった二つの伯爵家から妃を迎えたのだ。
国王は義務的に側妃の元に向かい、二人は同時期に懐妊した。さらに、二人とも王子を産んだことにより――この問題が勃発したのだ。
王妃との間にも二人の子がいるが、共に王女。ゆえにこの問題が収まる気配はない。
「陛下も優柔不断ね」
「まぁ、当然じゃない? 側妃さま方のお父上って未だに王宮で権力を持ってるし」
そのせいで、国王も大胆な行動に出ることが出来ないのだろう。
どちらかの王子を立太子すると、逆の王子の親族から不満が出る。八方ふさがりだ。
「そういうの聞くと、私たち庶民でよかったよね」
ロジアネが水を飲む。リリアンも同意だ。
「私たちにお貴族さまの考えなんてわからないし、一生わかることもないわよ」
「……お義姉ちゃんは関わることあるじゃん」
「あっても同じよ。私たちとお貴族さまの間には分厚い壁があるの」
女官だって、出世するのは決まって貴族出身だ。そのため、リリアンは出世が見込めない。
(給金はいいし、仕事もやりがいがある。……でも、やっぱり)
自分と貴族出身の女官たち。明らかに待遇に違いがあった。
たとえリリアンのほうが仕事ができても、優遇されるのは貴族出身の女官たち。正直、やる気が低下する。
(と、こんなこと思っていても仕方ないわ! 私は借金を返さなくちゃならないんだから!)
こぶしを握って、リリアンはオムレツを口に入れた。
「ごちそうさま! 荷物のチェックしてくるね」
「うん。私はもうすぐ出るから、戸締りよろしく」
「オッケー」
ロジアネの言葉にうなずいて、リリアンは食器を台所に持っていき、私室に引っ込む。
このときのリリアンは、まさか自分が貴族の世界に足を踏み入れるなんて――想像もしていなかった。
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