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本編 第5章
第1話
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けど、やっぱり。私だけでは、解決策は見つかりそうになかった。
(王妃殿下の言動を思い出そうにも、全部を完璧に覚えているわけでもないし……)
そうなれば、これを証拠にするのは難しいと思う。そもそも、物証がない。この状況では、誤魔化されて終わりだろう。
「……明日、ね」
あっという間に日は流れて、明日、私はここを出て行かねばならない。
ラインヴァルトさまとは一日一度、連絡を取り合っている。が、それだけ。……それ以外は、なにもしていない。
お顔を見ることも出来なくて、声を聞くことも出来ない。彼が綴った文字を目で追うことしか出来ない。
「本当、いつの間にこんなにも好きになってしまったのかしら……」
ぽつりとそう言葉を零す。
いつの間にか、ラインヴァルトさまに心を奪われていた。
だって、初めの頃ならば。傷ついていたところを優しくされたから……で、納得できた。
なのに、会えないうちに気持ちはしぼむどころか、どんどん膨らんでいく。
本当に認めるしかない。私は、彼に完全に恋をしている。
(今までもそうだと思っていた。……でも、今。それは、確かなものになった)
そう心の中で呟いて、私は書き物用の机に突っ伏す。……ラインヴァルトさま。少しでも、お会いしたい。
(もちろん、無理だっていうことは、わかっているのだけれど……)
すぐにそう思いなおそうとして。……ゆるゆると頭を横に振った。
「ダメよ、弱気になってはダメ。私は、今までのように諦めることはしたくないの」
今までなにもかもをあきらめて、手放してきた。私はそれを当然だと思っていたし、仕方のないことだと思っていた。
……だけど、今は違う。
私は貪欲に生きたい。ラインヴァルトさまのお隣で、生きていきたい。
「……頑張らなくちゃ」
頬を軽く叩いて、気合を入れる。
その後、私はもう一度目の前の紙に向き合った。
「と、いうか。……どうして、王妃殿下は。私のことを……」
普通に考えれば、ラインヴァルトさまの近くにいることが許せないのだと思う。
……彼の王太子としての立場を確たるものにするためには、身分の高い令嬢が妻になることが望ましい。
それはわかる。ラインヴァルトさまも、王太子という身分を確たるものにしたほうが、幸せだと思うし……。
(……本当に、そう?)
彼女は、本当にラインヴァルトさまの幸せを望んでいらっしゃるのだろうか?
だって、そうじゃない。王妃殿下がラインヴァルトさまの幸せを望んでいるのならば。
……彼の意見を、少しでも取り入れようとされるのでは、ないだろうか?
「だって、それが親……じゃ、ないの?」
少なくとも、私の親は違うけれど……。
私の親は、私に利用価値しか見出していなかった。
……そんな私の親と同じだったとすれば。
「お優しい、女性だと評判なのに」
なのに、心の中ではラインヴァルトさまを道具として見られているのではないか。
そう思ったら、胸の中にふつふつとした怒りが湧き上がってくる。
「ラインヴァルトさまは、とても素敵な、素晴らしいお方よ」
もしも、私の考えが間違っているのならば。私は、大人しく身を引く。
でも、当たっているのならば。……彼女にはラインヴァルトさまと向き合ってほしいと思う。
……恩着せがましい、かも、だけれど。
(王妃殿下の言動を思い出そうにも、全部を完璧に覚えているわけでもないし……)
そうなれば、これを証拠にするのは難しいと思う。そもそも、物証がない。この状況では、誤魔化されて終わりだろう。
「……明日、ね」
あっという間に日は流れて、明日、私はここを出て行かねばならない。
ラインヴァルトさまとは一日一度、連絡を取り合っている。が、それだけ。……それ以外は、なにもしていない。
お顔を見ることも出来なくて、声を聞くことも出来ない。彼が綴った文字を目で追うことしか出来ない。
「本当、いつの間にこんなにも好きになってしまったのかしら……」
ぽつりとそう言葉を零す。
いつの間にか、ラインヴァルトさまに心を奪われていた。
だって、初めの頃ならば。傷ついていたところを優しくされたから……で、納得できた。
なのに、会えないうちに気持ちはしぼむどころか、どんどん膨らんでいく。
本当に認めるしかない。私は、彼に完全に恋をしている。
(今までもそうだと思っていた。……でも、今。それは、確かなものになった)
そう心の中で呟いて、私は書き物用の机に突っ伏す。……ラインヴァルトさま。少しでも、お会いしたい。
(もちろん、無理だっていうことは、わかっているのだけれど……)
すぐにそう思いなおそうとして。……ゆるゆると頭を横に振った。
「ダメよ、弱気になってはダメ。私は、今までのように諦めることはしたくないの」
今までなにもかもをあきらめて、手放してきた。私はそれを当然だと思っていたし、仕方のないことだと思っていた。
……だけど、今は違う。
私は貪欲に生きたい。ラインヴァルトさまのお隣で、生きていきたい。
「……頑張らなくちゃ」
頬を軽く叩いて、気合を入れる。
その後、私はもう一度目の前の紙に向き合った。
「と、いうか。……どうして、王妃殿下は。私のことを……」
普通に考えれば、ラインヴァルトさまの近くにいることが許せないのだと思う。
……彼の王太子としての立場を確たるものにするためには、身分の高い令嬢が妻になることが望ましい。
それはわかる。ラインヴァルトさまも、王太子という身分を確たるものにしたほうが、幸せだと思うし……。
(……本当に、そう?)
彼女は、本当にラインヴァルトさまの幸せを望んでいらっしゃるのだろうか?
だって、そうじゃない。王妃殿下がラインヴァルトさまの幸せを望んでいるのならば。
……彼の意見を、少しでも取り入れようとされるのでは、ないだろうか?
「だって、それが親……じゃ、ないの?」
少なくとも、私の親は違うけれど……。
私の親は、私に利用価値しか見出していなかった。
……そんな私の親と同じだったとすれば。
「お優しい、女性だと評判なのに」
なのに、心の中ではラインヴァルトさまを道具として見られているのではないか。
そう思ったら、胸の中にふつふつとした怒りが湧き上がってくる。
「ラインヴァルトさまは、とても素敵な、素晴らしいお方よ」
もしも、私の考えが間違っているのならば。私は、大人しく身を引く。
でも、当たっているのならば。……彼女にはラインヴァルトさまと向き合ってほしいと思う。
……恩着せがましい、かも、だけれど。
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