ブラーデマーゲスの王宮占術師 ――神より夢に託されし、秘匿された未来――

山村久幸

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(三)

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 朝食を終えて、宮殿に隣接りんせつする小さな神殿しんでんおもむいたメンティス。

 その神殿の奥にある『秘儀ひぎ』――占術を行うための部屋――は二つの部屋からなる。

 奥の部屋には彼の仕事道具が集められた棚、数多あまたの書籍が集められた棚、それといくつかの机がある。一度、中を見たことがあるが、かなり重厚じゅうこうな内装になっている。

 どのような内装か。ここでえてれることはあるまい。あの空間にこそ、彼の秘儀の真髄しんずいがある。


 手前の部屋は占いをするための机のみ。その天井は宵闇よいやみ色にられ、数多の星が点々と描かれている。内壁ないへきは上部が朝焼け色に染められ、下部はそれぞれの四方で異なる景色が描かれている。

 海、山、森、川辺。それぞれの景色。自然との調和がなされた幻想げんそう的な空間の中での占い。それこそが自然体で彼が神々からのおぼしを受ける秘訣ひけつである。

 部屋に窓は存在せず、照明によって明るさが変わる。さらにいえば、占いをしているあいだは神々の『奇跡きせき』がこの部屋に顕現けんげんするのだが、それについてはのちほど詳しく触れることにしよう。


「はぁああ。どうしたものかねぇ。今日見た内容はプラディ丶丶丶丶に伝えるべきなのか。伝えないべきなのか。それすらも占ってみるべきか、どうなのか。なやましいねぇ」

 秘儀の間に着くなり、どかっと机の奥にある椅子に座ったメンティス。大きなため息をつきながら、独りごちる。

 上着の内ポケットから紙を取り出して、それを眺めては、また大きなため息。取り出した紙には、寝室で先程書きしるした夢の内容。

 悩みの大きさがため息の大きさによく表れている。

 先程見出みいだした答え。見つけたときは大いに喜んだのに、今は苦悩くのうさいなまれている。あまりにも違いすぎる。

 朝食をはさんでの、この大きな落差。一体、何が彼をそんなに悩ませると言うのか。


 そもそも、プラディ丶丶丶丶とは何者か?

 建国王プラドルモース・アリクサンズ・メザンスポリー=ブラーデマーゲスのことだ。

 いとたっとき存在をプラディ丶丶丶丶渾名あだなで呼ぶくらいには親しい。それこそプラドルモースの幼少期からなので、かれこれ二十年以上にもなる長年の付き合いである。

 卓越した知見を余すことなく国王陛下に教えんだのもメンティスである。だからこそ、国王陛下からの信頼しんらいあつい。

 それゆえに、占った内容については、何をいつ伝えるか、どう伝えるかの裁量を、陛下より任せられている。

 尤も、その大きすぎる裁量が故に、メンティスが日々こうして悩ませているわけだが。


 ご多分にれず、今回の予知夢の内容はあまりにも大きすぎた。

 間違いなく、間違いなく、自らが住まう国に影響をおよぼすことになる。

 その影響がきちとして表れるのか、きょうとして表れるのか。今の時点ではわからないのだ。

 だからこそ、今、彼は悩んでいるのだ。国の一大事であるが故に。


 果たしてどうすべきなのか。ただして考えていても、らちが開かないのは彼にはわかりきったことだった。


「うーん。そうだねぇ。考えていても仕方ないから占ってみるかな。流星がいつ来るのかを」

 パンと両手で太ももをたたいた彼。


 ――となると、しばらくは誰もこの部屋へは入れたくないな。


 秘儀の間と外界げかい連絡れんらくつべく、内側から施錠せじょうしてから、彼は奥の部屋に入ってゆく。


 これより彼は占いのための入念なる準備を進めていくことになる。

 暫くの間、奥の部屋にこもりっきりになるであろう。

 こちらとしては、彼を待つより他あるまい――。

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