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朝食を終えて、宮殿に隣接する小さな神殿に赴いたメンティス。
その神殿の奥にある『秘儀の間』――占術を行うための部屋――は二つの部屋からなる。
奥の部屋には彼の仕事道具が集められた棚、数多の書籍が集められた棚、それといくつかの机がある。一度、中を見たことがあるが、かなり重厚な内装になっている。
どのような内装か。ここで敢えて触れることはあるまい。あの空間にこそ、彼の秘儀の真髄がある。
手前の部屋は占いをするための机のみ。その天井は宵闇色に塗られ、数多の星が点々と描かれている。内壁は上部が朝焼け色に染められ、下部はそれぞれの四方で異なる景色が描かれている。
海、山、森、川辺。それぞれの景色。自然との調和がなされた幻想的な空間の中での占い。それこそが自然体で彼が神々からの思し召しを受ける秘訣である。
部屋に窓は存在せず、照明によって明るさが変わる。更にいえば、占いをしている間は神々の『奇跡』がこの部屋に顕現するのだが、それについては後ほど詳しく触れることにしよう。
「はぁああ。どうしたものかねぇ。今日見た内容はプラディに伝えるべきなのか。伝えないべきなのか。それすらも占ってみるべきか、どうなのか。悩ましいねぇ」
秘儀の間に着くなり、どかっと机の奥にある椅子に座ったメンティス。大きなため息をつきながら、独りごちる。
上着の内ポケットから紙を取り出して、それを眺めては、また大きなため息。取り出した紙には、寝室で先程書き記した夢の内容。
悩みの大きさがため息の大きさによく表れている。
先程見出した答え。見つけたときは大いに喜んだのに、今は苦悩に苛まれている。あまりにも違いすぎる。
朝食を挟んでの、この大きな落差。一体、何が彼をそんなに悩ませると言うのか。
そもそも、プラディとは何者か?
建国王プラドルモース・アリクサンズ・メザンスポリー=ブラーデマーゲスのことだ。
いと尊き存在をプラディと渾名で呼ぶくらいには親しい。それこそプラドルモースの幼少期からなので、かれこれ二十年以上にもなる長年の付き合いである。
卓越した知見を余すことなく国王陛下に教え込んだのもメンティスである。だからこそ、国王陛下からの信頼も篤い。
それ故に、占った内容については、何をいつ伝えるか、どう伝えるかの裁量を、陛下より任せられている。
尤も、その大きすぎる裁量が故に、メンティスが日々こうして悩ませているわけだが。
ご多分に漏れず、今回の予知夢の内容はあまりにも大きすぎた。
間違いなく、間違いなく、自らが住まう国に影響を及ぼすことになる。
その影響が吉として表れるのか、凶として表れるのか。今の時点ではわからないのだ。
だからこそ、今、彼は悩んでいるのだ。国の一大事であるが故に。
果たしてどうすべきなのか。ただ座して考えていても、埒が開かないのは彼にはわかりきったことだった。
「うーん。そうだねぇ。考えていても仕方ないから占ってみるかな。流星がいつ来るのかを」
パンと両手で太ももを叩いた彼。
――となると、暫くは誰もこの部屋へは入れたくないな。
秘儀の間と外界の連絡を絶つべく、内側から施錠してから、彼は奥の部屋に入ってゆく。
これより彼は占いのための入念なる準備を進めていくことになる。
暫くの間、奥の部屋に篭りっきりになるであろう。
こちらとしては、彼を待つより他あるまい――。
その神殿の奥にある『秘儀の間』――占術を行うための部屋――は二つの部屋からなる。
奥の部屋には彼の仕事道具が集められた棚、数多の書籍が集められた棚、それといくつかの机がある。一度、中を見たことがあるが、かなり重厚な内装になっている。
どのような内装か。ここで敢えて触れることはあるまい。あの空間にこそ、彼の秘儀の真髄がある。
手前の部屋は占いをするための机のみ。その天井は宵闇色に塗られ、数多の星が点々と描かれている。内壁は上部が朝焼け色に染められ、下部はそれぞれの四方で異なる景色が描かれている。
海、山、森、川辺。それぞれの景色。自然との調和がなされた幻想的な空間の中での占い。それこそが自然体で彼が神々からの思し召しを受ける秘訣である。
部屋に窓は存在せず、照明によって明るさが変わる。更にいえば、占いをしている間は神々の『奇跡』がこの部屋に顕現するのだが、それについては後ほど詳しく触れることにしよう。
「はぁああ。どうしたものかねぇ。今日見た内容はプラディに伝えるべきなのか。伝えないべきなのか。それすらも占ってみるべきか、どうなのか。悩ましいねぇ」
秘儀の間に着くなり、どかっと机の奥にある椅子に座ったメンティス。大きなため息をつきながら、独りごちる。
上着の内ポケットから紙を取り出して、それを眺めては、また大きなため息。取り出した紙には、寝室で先程書き記した夢の内容。
悩みの大きさがため息の大きさによく表れている。
先程見出した答え。見つけたときは大いに喜んだのに、今は苦悩に苛まれている。あまりにも違いすぎる。
朝食を挟んでの、この大きな落差。一体、何が彼をそんなに悩ませると言うのか。
そもそも、プラディとは何者か?
建国王プラドルモース・アリクサンズ・メザンスポリー=ブラーデマーゲスのことだ。
いと尊き存在をプラディと渾名で呼ぶくらいには親しい。それこそプラドルモースの幼少期からなので、かれこれ二十年以上にもなる長年の付き合いである。
卓越した知見を余すことなく国王陛下に教え込んだのもメンティスである。だからこそ、国王陛下からの信頼も篤い。
それ故に、占った内容については、何をいつ伝えるか、どう伝えるかの裁量を、陛下より任せられている。
尤も、その大きすぎる裁量が故に、メンティスが日々こうして悩ませているわけだが。
ご多分に漏れず、今回の予知夢の内容はあまりにも大きすぎた。
間違いなく、間違いなく、自らが住まう国に影響を及ぼすことになる。
その影響が吉として表れるのか、凶として表れるのか。今の時点ではわからないのだ。
だからこそ、今、彼は悩んでいるのだ。国の一大事であるが故に。
果たしてどうすべきなのか。ただ座して考えていても、埒が開かないのは彼にはわかりきったことだった。
「うーん。そうだねぇ。考えていても仕方ないから占ってみるかな。流星がいつ来るのかを」
パンと両手で太ももを叩いた彼。
――となると、暫くは誰もこの部屋へは入れたくないな。
秘儀の間と外界の連絡を絶つべく、内側から施錠してから、彼は奥の部屋に入ってゆく。
これより彼は占いのための入念なる準備を進めていくことになる。
暫くの間、奥の部屋に篭りっきりになるであろう。
こちらとしては、彼を待つより他あるまい――。
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