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23シリウスの変化
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※この辺りから恋愛モード展開に。
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◆シリウス
初めて私たちの前に姿を現した時の服装で披露目に出ている小娘は、いつの間にか傍に就いた者たちの心掴んでしまったようだ。
気難しいと言われているマーキュリアル公爵家夫人とその息子で宰相であるドミニク、そして大叔父まで。
披露目の服装を聞いて何故かモヤモヤとした気持ちになり反対をした。
真っ直ぐに伸びた友梨香の足は美しい。
それを好奇な目で見る貴族たちの前に晒したくはなかったのだ。
しかし、宰相に異世界という言葉を裏付ける様ためにも必要だと言われては、それに従うしかない。
乗馬が出来る事を聞いて驚いたが、ダンスまで踊れるとは思わなかった。
テーブルマナーもそれなりに出来ている。文化の違いはあれど、女官たちも彼女の知識の深さと理解力の高さを褒めていた。
異世界で彼女はどんな教育を受けていたのだろうか。
私はそんなユリカが気になって仕方がなかったゆえに、自ら保護者になる事を宣言した。
一応王城の中では畏まった姿を見せているユリカだが、キャンちゃんの中では素のままで、そんな彼女の姿は私の心をつかんで離さない。
着替えを手伝った時に触れた、ユリカの背中が頭の中から消えずに留まったままだ。
これまで一夜限りの閨事はいくつもあった。
だが、あくまでも仕事の一環であったと言って良い。
だからその相手に何も思う所はなかったのに、十も離れている娘の肌に見とれてしまうとは……。
侍女の話を聞き不自由をしていると思われるユリカに王妃の部屋を宛がうと大叔父に話しに行った。その時はユリカの希望を兼ねるためと貴族たちへの牽制の為としか考えてはいなかった。
大叔父からしてみたら妃候補とされていた令嬢たちに一つも靡かなかった私のこの様な行動に驚はしたものの、反対する事もしなかった。
そのとき大叔父は言った。
「シリウスはこのグランティア王国の国王であるが、国のために政略結婚をする必要はないと儂は思うぞ。そのような事をしなくては国の威厳が守れないのでは、グランティア国としての価値などないと思っておる。政略結婚で得た花嫁や側妃は相手国からすれば、人質に取られているようなものなのだからな。
今まで妃候補たちの中で、おまえの心に添った花嫁は見つからなったようだ。儂はお前の心を動かす者が出来たことを喜んでいる。ユリカ嬢にその様な思いを抱いているのなら儂は見守るつもりだ。
妃のための部屋を使わせることはお前の自由だ。だが、ユリカ嬢の気持ちが大切だという事を忘れてはならない。己の気持ちを押し付け、娶る様なことはしてはならんぞ」と。
その時は内をそこまでと思っていた私だが……
妃のための部屋を使わせること事に関し、やはりキャステルと侍女のメアリーアンは驚きを隠せなかったようだ。
あの二人とは気心が知れた仲だ。キャステルは幼い頃より、私の則近となるべく育てられた幼馴染みと言っていい。
メアリーアンは伯爵令嬢ではあるが、長く国に仕えた武将であり、王家の陰としても使えて来た家系にあった。彼女自身も暗器や剣を持ち戦う事が出来る侍女として、私の妃に仕えるべく育てらてきたのだった。
そんな彼らが突然現れた異世界人のユリカを突然妻に迎えるような行動をとった私に不安を抱かない訳がない。
「それではその前提で話を進めますが……今一度確認いたします。
彼女をこの部屋で囲うとなれば、妃候補の婚約者と周りに思われても良いという事ですね?」
至極真面目な顔でキャステルに問われた。
「ああ、面倒な縁談から逃れる、それも目的だからな。元々誰でも良いと思っていたが、まだ妃を貰う気にならなかっただけだ。私は独り身で良いし、メビウスたちの子に継がせてもいいと思っている。
たとえ私の婚約者と仮になってもユリカが何か自分でやりたいことが出来、好きな男でも出来たらこの部屋から出て行けば良いだけのことだ。
そうなったとしても貴族の令嬢のような柵もないだろう?」
「はぁ、そんな事をお考えになっていたんですか。まだ出会って数日ですが、彼女が陛下の元を離れても宜しいと」
キャステルが大きく息を吐く。
「彼女の意思を尊重するまでだ」
「では彼女が妃になると言えば?」
「ユリカがそう願うなら受け入れいる。さっきも言っただろう?お飾りの妃なら誰でも良いと」
まだ私自身の気持ちはハッキリとしたものではない。
あの時は見栄もあったが彼女気持ちを束縛するつもりは本当に無かったのだ。
キャステルには悪態を吐きながらも応援してやると言われ、そこまではと思いつつも妃になる可能が無いとは言えないなどと言ってしまった。
だがその時「娶る」という言葉を大叔父に言われたことを思い出した。
そして初めて恋愛対象として彼女の事を意識する様になった。
部屋を移れば妃候補として見られることは分かっている。キャステルも味方であるし、城内での女たちの争いはメアリーアンが上手くやってくれるだろう。
披露目の前にあの部屋に移した理由とカモフラージュで妃候補になってほしい旨を彼女に伝えた。
最初は私の勝手な行動を怒っていたが、彼女は協力してくれると言ってくれたのだった。
そしてパーティーではそれらしくも振舞ってくれた。
ドレスに着替えたユリカは年相応の女性で、色香も漂っていた。
男どもの視線が彼女に集まっている事が気に入らず、見せつけるように彼女の腰を引き寄せ、ホールの中央へとエスコートしてしていく。
固いコルセットをしなくてもユリカのスタイルは完璧だった。
それはあの、水着を着た写真という物を見た時から知っている。
彼女はワルツも卒無く熟し、優雅に踊ってみせた。
異世界のデザートも貴族たちには受け入れたようだ。
彼女を好意的に見る者が増えたことは間違いない。
そして、何よりユリカが黒髪黒目でも聖女ではないという事も分かり、ホッとしている自分がいた。
パーティーがつつがなく終わりユリカを部屋と送っていく。
彼女があの部屋に移ってからまだ日が浅く、隣が私の部屋である事も倉庫だと取り繕った鍵のかかった扉で繋がっている事も知らない。
それもその筈だ。ユリカが起きる前に執務に向かい、寝た頃を見計らって自室に戻るという事を繰り返しているのだから。
そろそろあの部屋のことを告げた方が良いだろうかと考えるが、まだ早いようにも思えてしまうのだった。
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◆シリウス
初めて私たちの前に姿を現した時の服装で披露目に出ている小娘は、いつの間にか傍に就いた者たちの心掴んでしまったようだ。
気難しいと言われているマーキュリアル公爵家夫人とその息子で宰相であるドミニク、そして大叔父まで。
披露目の服装を聞いて何故かモヤモヤとした気持ちになり反対をした。
真っ直ぐに伸びた友梨香の足は美しい。
それを好奇な目で見る貴族たちの前に晒したくはなかったのだ。
しかし、宰相に異世界という言葉を裏付ける様ためにも必要だと言われては、それに従うしかない。
乗馬が出来る事を聞いて驚いたが、ダンスまで踊れるとは思わなかった。
テーブルマナーもそれなりに出来ている。文化の違いはあれど、女官たちも彼女の知識の深さと理解力の高さを褒めていた。
異世界で彼女はどんな教育を受けていたのだろうか。
私はそんなユリカが気になって仕方がなかったゆえに、自ら保護者になる事を宣言した。
一応王城の中では畏まった姿を見せているユリカだが、キャンちゃんの中では素のままで、そんな彼女の姿は私の心をつかんで離さない。
着替えを手伝った時に触れた、ユリカの背中が頭の中から消えずに留まったままだ。
これまで一夜限りの閨事はいくつもあった。
だが、あくまでも仕事の一環であったと言って良い。
だからその相手に何も思う所はなかったのに、十も離れている娘の肌に見とれてしまうとは……。
侍女の話を聞き不自由をしていると思われるユリカに王妃の部屋を宛がうと大叔父に話しに行った。その時はユリカの希望を兼ねるためと貴族たちへの牽制の為としか考えてはいなかった。
大叔父からしてみたら妃候補とされていた令嬢たちに一つも靡かなかった私のこの様な行動に驚はしたものの、反対する事もしなかった。
そのとき大叔父は言った。
「シリウスはこのグランティア王国の国王であるが、国のために政略結婚をする必要はないと儂は思うぞ。そのような事をしなくては国の威厳が守れないのでは、グランティア国としての価値などないと思っておる。政略結婚で得た花嫁や側妃は相手国からすれば、人質に取られているようなものなのだからな。
今まで妃候補たちの中で、おまえの心に添った花嫁は見つからなったようだ。儂はお前の心を動かす者が出来たことを喜んでいる。ユリカ嬢にその様な思いを抱いているのなら儂は見守るつもりだ。
妃のための部屋を使わせることはお前の自由だ。だが、ユリカ嬢の気持ちが大切だという事を忘れてはならない。己の気持ちを押し付け、娶る様なことはしてはならんぞ」と。
その時は内をそこまでと思っていた私だが……
妃のための部屋を使わせること事に関し、やはりキャステルと侍女のメアリーアンは驚きを隠せなかったようだ。
あの二人とは気心が知れた仲だ。キャステルは幼い頃より、私の則近となるべく育てられた幼馴染みと言っていい。
メアリーアンは伯爵令嬢ではあるが、長く国に仕えた武将であり、王家の陰としても使えて来た家系にあった。彼女自身も暗器や剣を持ち戦う事が出来る侍女として、私の妃に仕えるべく育てらてきたのだった。
そんな彼らが突然現れた異世界人のユリカを突然妻に迎えるような行動をとった私に不安を抱かない訳がない。
「それではその前提で話を進めますが……今一度確認いたします。
彼女をこの部屋で囲うとなれば、妃候補の婚約者と周りに思われても良いという事ですね?」
至極真面目な顔でキャステルに問われた。
「ああ、面倒な縁談から逃れる、それも目的だからな。元々誰でも良いと思っていたが、まだ妃を貰う気にならなかっただけだ。私は独り身で良いし、メビウスたちの子に継がせてもいいと思っている。
たとえ私の婚約者と仮になってもユリカが何か自分でやりたいことが出来、好きな男でも出来たらこの部屋から出て行けば良いだけのことだ。
そうなったとしても貴族の令嬢のような柵もないだろう?」
「はぁ、そんな事をお考えになっていたんですか。まだ出会って数日ですが、彼女が陛下の元を離れても宜しいと」
キャステルが大きく息を吐く。
「彼女の意思を尊重するまでだ」
「では彼女が妃になると言えば?」
「ユリカがそう願うなら受け入れいる。さっきも言っただろう?お飾りの妃なら誰でも良いと」
まだ私自身の気持ちはハッキリとしたものではない。
あの時は見栄もあったが彼女気持ちを束縛するつもりは本当に無かったのだ。
キャステルには悪態を吐きながらも応援してやると言われ、そこまではと思いつつも妃になる可能が無いとは言えないなどと言ってしまった。
だがその時「娶る」という言葉を大叔父に言われたことを思い出した。
そして初めて恋愛対象として彼女の事を意識する様になった。
部屋を移れば妃候補として見られることは分かっている。キャステルも味方であるし、城内での女たちの争いはメアリーアンが上手くやってくれるだろう。
披露目の前にあの部屋に移した理由とカモフラージュで妃候補になってほしい旨を彼女に伝えた。
最初は私の勝手な行動を怒っていたが、彼女は協力してくれると言ってくれたのだった。
そしてパーティーではそれらしくも振舞ってくれた。
ドレスに着替えたユリカは年相応の女性で、色香も漂っていた。
男どもの視線が彼女に集まっている事が気に入らず、見せつけるように彼女の腰を引き寄せ、ホールの中央へとエスコートしてしていく。
固いコルセットをしなくてもユリカのスタイルは完璧だった。
それはあの、水着を着た写真という物を見た時から知っている。
彼女はワルツも卒無く熟し、優雅に踊ってみせた。
異世界のデザートも貴族たちには受け入れたようだ。
彼女を好意的に見る者が増えたことは間違いない。
そして、何よりユリカが黒髪黒目でも聖女ではないという事も分かり、ホッとしている自分がいた。
パーティーがつつがなく終わりユリカを部屋と送っていく。
彼女があの部屋に移ってからまだ日が浅く、隣が私の部屋である事も倉庫だと取り繕った鍵のかかった扉で繋がっている事も知らない。
それもその筈だ。ユリカが起きる前に執務に向かい、寝た頃を見計らって自室に戻るという事を繰り返しているのだから。
そろそろあの部屋のことを告げた方が良いだろうかと考えるが、まだ早いようにも思えてしまうのだった。
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