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3章【第二の予知と】

※貴族令嬢の恋愛事情

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 ※少しだけ、ほんの少しだけ♡
_______________________________

 俺はヴィヴィを自室に連れ込み・・・否、部屋に自分がソファーに座りその膝の上に座らせた。

「あらためてデビュタントおめでとう。今日の会場の中でヴィ―が一番綺麗だった」

「アクセル様こそ女性の注目の的って感じでした。エスコートしてもらって会場に入った途端女性の皆さんが熱い目で見てきて・・・」

「ん、ヤキモチを妬いてくれたのか?」

「しりません!」

ーーーああ、俺の婚約者はなんてかわいいんだろう、このまま食べてしまいたい。
「もし成人の時に加護の一つが消え「王家の決まり事」がなくなって自由に相手を選ぶ権利を得てもヴィ―は俺を選んでくれるんだな?」

「はい、アクセル様。ヴィヴィはアクセル様とずっと一緒にいたいです」

「ありがとう。俺もヴィーをこれから先、一生大切にしたいと思っている」

「嬉しいです…」

「これからは社交界にも堂々とヴィーを連れていける。もう遠慮はしないぞ」

「は、はい」

 俺は小さな体を抱き寄せ何度となく優しく口づけたあとしばらくの間彼女の体を抱き締めていた。

 一度部屋に戻り湯あみを終えたヴィヴィがベッドのもぐりこんできた。
 約束したかのように優しいキスを何度も繰り返す。

「少しヴィーに触れても良いか?」
 髪を撫でていた手でそっと首筋から鎖骨をなぞって行くとヴィヴィは頬を染めながらこくんと頷いた。
 長い口づけの後少しだけ開いた口にするりと舌を滑り込ませ歯列をなぞり口腔内をまさぐる。
 ヴィヴィの舌は俺に弄ばれ戸惑っている様が手に取るように分かった。顔を見ると目尻に涙が溜まっている。何とも言えない色香を感じ俺の気持ちも高まって行く。
 寝着の前を少しだけ広げ唇を這わすと小さな吐息が洩れて体に力が入った。
 菫色の瞳が俺を見つめ返す。
 口づけをしながらそっと豊かに育った胸の上に手を当て布越しにやさしく揉み解すと「あっ」と声を上げて俺の手首を掴んできた。
 何かを訴えるように見つめて来るヴィヴィ。

「分かった。これ以上はしないから」
 瞳を潤ませたヴィヴィが頷く。
 そのまま額に口づけ
「この先はもう少し大人になってからな」
 胸に乗せたままの手を下し手首を掴んでいた手を取り指先にも口づけた。

「おやすみ愛しいヴィー、良い夢を」

 まだまだ俺の苦行は続く・・・


◇◇◇


 仲良しの二人も一緒にデビュタントを迎えた。

「社交界って艶やかですわね」
「皆さんとても素敵なドレスで圧倒されてしまいましたわ」
「その中でもヴィヴィアン様とアクセル様の姿に皆さん釘付けでしたわね」
「そ、そんなことはありませんわ」

「わたくし最初にお二人を拝見した時から憧れのカップルでしたのよ」

「えっ!」

 マリン嬢は肩をすくめて微笑みながら二人について語った。
「アクセル様は専属護衛ですから常にヴィヴィアン様をご覧になっているのは当然ですけど、男子が近くに来ると傍に寄るなオーラを放たれて目で威嚇されておりましたもの」

「うそっ。」

「ウソじゃ御座いませんよ。三年前の歓迎パーティーの時なんかねぇ、アリエル?」
 一緒にいた男爵令嬢のアリエル嬢に振る。

「ええ、そうですわ。ヴィヴィアン様が微笑まれたお顔を見た男子がそれこそ釘付けになっているのを苦虫を噛みつぶした様なお顔で遠くからご覧になっていらっしゃいましたわ」

「愛されているんですね。本当に羨ましいですわ」
 二人に羨ましがられてしまうがそういうマリン嬢も婚約が決まっている。

「もう、口づけは交わされましたでしょう?」

 ヴィヴィアンは一昨日の夜を思い出し真っ赤になってしまった。

「えっ、ああ。そんな事よりマリン様も近々ご婚約が整うとお聞きいたしましたけどっ」

 慌ててごまかすヴィヴィアン。

「ん~、わたくしの場合は親が決めた事ですからアクセル様の様に熱い目で見てくださる事はありませんわ」
「でも婚約期間に恋愛感情が芽生えるって事もありますから。そういうわたしも親が決めたお相手になるんでしょうけれど。仕方ないですよね」
 マリン嬢とアリエル所が遠い目で空を見ている。

 十五才の夢る少女たちは一瞬にして現実に戻されたような気分になった。

 そうか、多くの貴族令嬢はそうやって結婚していくのね。
 恋愛して結ばれるって身分も関係してくるからごく僅かの人たちしか出来ない事なのかもしれない。
 わたしはモントレー公爵家に来た時から養女になりアクセル様の婚約者になったけど、それが嬉しかったしどんどんアクセル様のことが好きになって・・ 好きな人と結婚できる。
 でもアクセル様は本当のところはどうなのかしら?
 いきなり八才の子供と婚約させられて結婚まで決められた訳で、わたしが成人した時に加護の一つが消えて『王家の決まりごと』がなくなった時、婚約の解消を望んでいるとしたら・・・

 そんな事を考えていたらどんどん不安が膨らんで来てしまいデビュタントの夜にアクセル様が言ってくれた言葉も霞んでしまいそうになり胸が痛んだ。

 そんなの絶対いやだ。アクセル様の隣にずっと居たい。
 加護が一つ消えても愛してもらえるようにしなくっちゃ!

 ヴィヴィアンの中でアクセルへの思いが好きから愛へと変わったのでした。


 屋敷に戻る馬車の中でアクセルの横顔をチラチラと見ながら胸に芽生えた愛に思いを寄せるヴィヴィアン。

「どうした熱っぽいのか?」

 赤らんだ顔に心配してくるアクセル。

「ううん、ちょっと疲れただけ」

 心の内を知られるのが恥ずかしくて顔を伏せるようにアクセルの肩に頭を預けた。

「ならいいけど、疲れたら寝ても良いぞ」

 そう言ってヴィヴィの額に口づけを落とす。

『このままずっと一緒にいられます様に』

 ヴィヴィは心の中でつぶやいたのでした。
 






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