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3章【第二の予知と】

※制裁

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 そして最後の幕。教会での結婚式のシーン。

 ヴィヴィはウェディングドレスと迄はいかないが白いドレスにベールを被り白い騎士服に身を包んだカミラに手を引かれ登場してきた。
 客席から歓声が上がる。
「うっ」と思わずうなり声を上げそうになるのを堪える。

+++++++++++++++++++++++++

「私、ジョシア・クレメントは死がふたりを分かつまでマリアンヌ・オルトランを・・・」

ーーーやめろカミラ、それは俺のセリフだーーー

「わたくしマリアンヌ・オルトランは死がふたりを分かつまでジョシア・クレメントを・・・」

ーーーやめてくれヴィヴィそれは俺に向けて誓う言葉だーーー

+++++++++++++++++++++++++

 芝居だと思いつつも俺はここの中で叫ぶのを止められない。

 誓いの言葉が終わりカミラがヴィヴィのベールを上げた。
 幕が徐々に下がって来る。
 そして額に口付けると同時に幕が幕が下り悪夢のような芝居が終わる・・・


 !!!!!!!!!!!


―――何が起こった?―――

 呆然と立ちすくむヴィヴィ。

 何とカミラは幕が下りる寸前に瞳を閉じていたヴィヴィの額ではなく唇にソレをしたのだった。
 本当に唇が触れていたのかは分からない。けれど俺の頭は真っ白になっていた。

 閉じた幕の向こう、客席からは割れんばかりの拍手が聞こえてくる。
 固まっているヴィヴィを残し赤い顔をして舞台から裾へと降りて来たカミラの腕を咄嗟に掴み舞台裏へ引きずるように連れ出した。
 カミラは驚いて声も出せずにいる。

 人目のないところで振り向きカミラの頬に一発。

 その場に腰を落としたカミラが涙目で俺の事を見上げ、
「あ、あにうえ・・・」と声を震わせた。

「なぜ殴られたか分かっているな」

 冷たい表情で上から降ろされる言葉に顔面蒼白のカミラの腕を掴んで立ち上らせる。

「申し訳ありません。台本通りに、ひ、額にしようと思って いたんですが、瞳を閉じていたヴィヴィアンの顔が余りに可愛くて・・・」

「芝居といえ婚約者のいる相手に許可も取らずやっていい行為だと言えるか?」

「・・・」

 そこへクラリネス騎士とヴィヴィがドレスを摘み上げなら走って来た。
「殿下!」
 クラリネスの声に振り向いたカミラは騎士と一緒に走ってきたヴィヴィを見てもう一度自責の念に苛まれる。

「ヴィヴィアン、ゆるし・・・」

 バチン!!!

 俺に殴られた反対の頬をカミラはヴィヴィに平手打ちされたのだ。

「カミラ様とは絶交です!」

 その言葉で唇が触れたのだと悟った。
 カミラは「ごめん」とヴィヴィの前で頭を下げた。

 クラリネスが頭を下げたままのカミラを見て慌ててを止めようと近づくのを俺は腕で遮り制した。

「クラリネスおまえもカミラがしでかしたのはしっかり見えていただろう?」

「はい、ウェルズ副団長殿」

 クラリネスは王宮専属の近衛騎士だが爵位身分では俺の方が上になるので背筋を伸ばして返答する。
 
 その後、カミラは少し腫れて来た頬を隠しながらクラリネス騎士と共に学院を後にし、舞台終了の挨拶では王子は急用で王城に戻ったとアナウンスされた。
 そんなアクシデントがあった事は知られず舞台は大盛況で終わったのだった。



 カミラは王城に戻り赤い頬を母である王妃に問い詰められる。
 黙っているカミラの代わりにクラリネスが事の次第を王妃に報告した。
 護衛騎士の話を聞いた王妃はカミラを正座させ説教をした後一週間の謹慎を命じたのだった。

 因みに俺はカミラが見た目でわかるほど強くは殴っていない。
 いくら何でも従兄弟王子なので手加減はしたつもりだ。
 まあ少し口の中を切っていたかもしれないが。
 それでも片方の頬に手の跡に近い痣が浮かびしばらく消えなかったのは俺の所為ではない事だけは言って置く。


 両陛下からヴィヴィに謝罪が来た。
 ヴィヴィは自ら制裁を加えたことでことに関して引き摺ってはないようだが俺の心が狭いのか、いまだにシーンが思い出される度に腹が立つ。

 当事者のカミラは謹慎中に婚約者候補を何人か決められた。
 卒業式後のパーティーではその中から選ばれた令嬢がパートナーを務める事になるだろう。
 先に婚約していた兄のジュリアス王太子の婚姻の日取りも決まった。
 これで王家も安泰というところだろうか。

 心配事が一つ消えあと二年とちょっと耐えればヴィヴィとの婚姻と云うところまで来た。
 
 もうすぐヴィヴィの十六才の誕生日が来る。
 プレゼントは何を贈ろう。
 あの髪飾り以外に身につけるものは送っていない。何故ならそういう類は両親がこれでもかと用意していたからだった。
 公爵家ではご用達の宝石商が屋敷まで来るが、サプライズでヴィヴィを連れて店まで出向き選ぶのも良いかもしれない。
 そんなアレヤコレヤを考えている今の俺は彼女が成人して王家の決まりごとが消えようがヴィヴィと結ばれると信じているからこその事だった。

 そろそろ少し大人の階段を上らせても良いかもしれない。

 「ふっ」と息が洩れる。

 トーマスは飲みを終えたカップを片付けながらそんな不埒なことを考えている俺の表情を見逃してはいなかったようだが俺がそれに気付くことはなかった。







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