副団長は次期公爵~幼き婚約者との10年

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1章【我が家に天使がやって来た】

※いきなり婚約ですか②

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「父上話を先に進めて下さい」

「ああそうだった。すまん、マリアに褒められるとつい嬉しくてな。
 で、先ほど一緒に連れて来たメイド、ドリーという名だがそのドリーが言うには、ヴィヴィアンは五歳の加護認定で自らの意思で加護が消えてしまったように見せかけたのではないかというのだ」
「えっ、加護封じを?幼い子にそんな事が可能なのでしょうか」
「その辺は俺にも良く判らんが。だが生まれ付き魔力も強い子だったと。それでな、信じられないがヴィヴィアンが授かったのは『先読み』ではないかと彼女は云うのだ」

「まぁ、『先読み』だなんて……でも、それって、開花するまで何の加護か分からないのではなかったかしら?」
「確かにそう言われている。生まれて初めて洗礼を受けた時に加護持ちの赤子には額に魔法陣のような文様が現れるという。その文様はすぐに消えるがそれが何の加護かは分からない。五歳になった時加護判定を受け水晶が輝くと加護の力が開花とされ、現れた色で加護の種類が分かる訳だ。それで初めて認定される。光を発せなければその子の加護は消えたという事になる。しかしドリーはそれよりもっと前、ヴィヴィアンが三歳頃から不思議なことを言っていたというんだ」
「不思議な事?」
「うむ。雨が降るから洗濯物を入れた方が良いとかその梯子は折れるから上らないでと親しい人には忠告をしていてそのどれもが当たっていたと言うのだよ」

「予知ですか。でもその程度では・・・」
「まあ聞け、ある時砂遊びをしていてオークの森の川にはキラキラした砂がいっぱいあるのに」と言ったのを父親が聞き捜索したところ、その川から砂金が出て領主は一財産作ることが出来た。
 そこで両親は自分の娘には加護があると云われたが「先読み」ではないかと思い娘の事を大事にした。その後幾つか言い当てそれをうまく利用した領主夫婦はどんどん力を付けて行った訳だ」
「なるほど」
「しかしある時から娘が何も言わなくなった」
「何かあったんですか?」

「ああ。お前「カリアスの津波」を覚えているか?」

「ええ、確か四年ほど前に海岸沿いの二つの漁村と町が壊滅状態になった」
「そうだ。その前日ヴィヴィアンが四歳の時にドリーだけに「遠いところで地が揺れて海が怒ってみんな飲み込まれちゃう」と言ったそうだ」
「なんと、あの津波を予知したと云うのですか!」
「後日領地で起きた津波の惨事を聞いたヴィヴィアンはそれから様子が少し変わり寡黙になっていった。ドリーが思うには自分が言った事が現実となり多くの人が犠牲になったと聞き、怖くなり自ら封じ込めたのではないかと言っている」
「それが本当だとしたら凄いですね」

「ただ両親は津波の予知の事は知らないから、娘が予知をしなくなったのはただ単に子供の気まぐれでそのうちまた先読みが出来ると信じて疑わなかった。しかしそれが判定で覆され加護が消えたと告げられてしまい娘に裏切られたと激怒し軟禁した」

「全く身勝手な両親ですわね」

「ああ、娘のお陰で採掘された砂金は直ぐに採り尽くし事業を拡大して大盤振る舞いしてきた領主はあっという間に借金まみれになる。だが娘が国から「加護持ち」と認定されれば、その家族も多くの恩恵を受けることが出来るという事もあり、それがあれば借金も清算でき自分たちの地位と生活は安泰だと思っていた訳だからと宣言された娘を恨んだのだ」

「「はぁ……」」

 俺と母上から同時にため息が漏れる。

「軟禁されたヴィヴィアンは強欲な両親からも放置され虐げられた生活の中でも満足気だったとドリーは言うのだよ。ドリーだけには心を開き閉ざしていた口も開く様になった。そして我々が領主の屋敷に入る前日「もうすぐここに知らない人が来てこの小屋から出してくれるわ」とドリーに告げ翌日我々が乗り込んだと云う訳だ」

「『先読みの加護』は消えていなかった……本物なんですね」

「その話を馬車の中でドリーから聞きここへ戻る前に王城へ向かいあの子の加護の話を兄上に報告に行ったのだが」
「加護持ちとなれば陛下への報告は必須で御座いますものね」

 母上も真剣な面持ちで言葉を発した。

「ああ、兄上に報告しそこで司教と神官を呼び付けたところでっかい水晶玉を持って来てヴィヴィアンに手を翳させた結果、『先読み』に次いで『治癒』の加護迄持っていることが判った」
「加護が二つ?」
「二つ何て今まで有りませんでしたでしょう?なんでまぁ、そんな大変なものを2つも背負ってしまったんでしょうか、可哀そうに」
「全くだ」
 母の言葉に父はため息を漏らした。


「ヴィヴィアンが加護持ちである事は分かりました。身寄りのなくなった子を養女に迎える事も。で、何故私の婚約者となるのですか?」
「それはだな、王家に伝わる決まり事だ」
父はその王家の決まり事を話し始めた。

 数年否、数十年に一度加護持ちの赤子が誕生するが開花できる子も少ない。ましてや二つの加護を持つ事は稀な存在である。
「過去にも二人いたと王家の極秘文書に書かれいるがその一人が我々の曾祖母だ」
「えっ、初めて知りました」
「王家の一部にしか知られていないからな」
「なるほど」
 そして【王家の決まりごと】というのは二つの加護を持った者が現れた場合、王家の血を引く者と婚姻を結び加護持ちを守らなければならないと云うものだった。

「だが兄上の所の第一王子のジュリアスには既に御婚約者が居られる」
「なら、第二王子のカミラでも」
「カミラはまだ十歳だ。ヴィヴィアンを守るには幼過ぎる」
「伯母上の所は女二人」
「あとは……残りの二公爵家だって元は王家の出ではありませんか?」
「確かにそうだが、あやつらの血はもうとうに薄れている」

「それで私という事ですか……」

「これはもう決定事項だアクセル。王命故諦めろ」
「はぁ」

「ただな、ヴィヴィアンが成人を迎えた時、第二の関門があってその時にまだ二つの加護が有ればそのままお前と婚姻を結び、どちらかの加護が消え一つになった場合は【王家の決まりごと】は解除される。ヴィヴィアンは通常の加護持ちと同じ扱いになるから婚約の解消も可能で別の伴侶を選ぶことが出来るって訳だ」

──それって……10年間足枷を嵌められて【王家の決まりごと】が無くなってしまったら18歳の娘に30歳の俺が捨てらるかもってことだよな。

──くっ、とんだ道化だがそれもまあ面白いかもしれない──





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