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第五章・女子部への誓い
女子部の絆
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昼下がりのブレバリーズ道場は、熱気が立ち込めていた。
女子部の体力トレーニングが終わった直後で、
床には汗が落ち、空気は白く霞み、
リングロープには女子選手たちの息遣いが乗っていた。
修平はその端で、膝に手をつきながら深く息を吸い込んでいた。
全身が痛い。
特に肩と腿は、志桜里のキックの跡がまだ赤く腫れていた。
「ほら、立って。まだ終わってないよ」
声の主は環だった。
いつも柔らかな物腰だが、練習となると目の色が変わる。
その落差がブレバリーズ女子部の魅力でもあった。
「は、はい……」
「よし、じゃあ受け身の続きね。三百回」
「さ、さんびゃ……」
「言ったよー? ほら、早く早く」
環のほんわかした声とは裏腹に、修平の日常はどんどん“女子部仕様”になっていった。
***
その日の練習後、
Satomiが一人、壁に向かって拳を何度も叩き込んでいた。
包帯の巻かれた拳から、じわじわ血が滲んでいる。
「Satomiさん……大丈夫ですか?」
修平が声をかけると、彼女は肩を震わせた。
「……あたしさ。もう33歳よ?
こんな若い子ばっかりの中で、何ができるってのよ……」
苦笑でもなく、泣き笑いでもなく。
ただ、心からの絞り出す声。
「でも、直美ちゃんが来てくれて……
また“闘いたい”って気持ち、取り戻せたのよ」
Satomiは拳を見つめた。
「だけど……
まだ自分に勝てない。
弱い自分が出てくるのよ、どうしても」
その横顔は、ずっと団体を支えてきた女の哀しさと誇りが混じっていた。
修平は、自分でも驚くほどすんなり言葉が出た。
「……でも、僕。Satomiさんの試合、全部見てきました。
あの気迫……男子にも負けてませんよ」
Satomiは目を伏せたまま、ぽつりと呟く。
「ありがと。でもね……あたし、まだ泣きたくなる日があるのよ。
それを直美ちゃんに見せるのが怖いの」
そのとき。
「泣いてもいいですよ」
穏やかな声が背後から響いた。
振り向くと――沙也加だった。
「泣くのは弱さじゃない。
むしろ“折れない人”の証です。
泣きながらでも立ち続ける人が、一番強い」
Satomiの肩に優しく手を置き、
沙也加は続ける。
「あなたのその気持ち、必ずリングで花になりますよ」
Satomiの目尻から、静かに涙がこぼれた。
***
その後、環が修平の隣に座り込み、笑顔でタオルを渡した。
「修平くん、がんばってるねー」
「環さんは……なんでそんなに優しいんですか?」
「うーん……それはね、女子部が“勝つため”だよ」
「勝つため……?」
環は自分の膝を抱えながら、空を見上げた。
「私ね、柔道出身でしょ?
女子だからって、途中で笑われたり、軽く扱われたりしたことがいっぱいあったの」
優しい声なのに、言葉には静かな炎が宿っていた。
「だからこの団体では、誰も軽んじたくないの。
修平くんも、仲間だよ?」
それを聞いた瞬間、修平の胸が熱くなった。
***
練習後。
志桜里が自分のバッグを持って歩いていると、
修平は思い切って声をかけた。
「志桜里。今日……その、ありがとな」
「は? なに急に」
「いや……すごくいい練習になった。ありがとう」
志桜里はそっぽを向き、
ぽつりと言った。
「……あたしが厳しくしてるの、別に修平さんのこと嫌いだからじゃないし」
「知ってるよ」
「違うからね? 本気で強くなってほしいだけ」
「うん。ありがとう」
志桜里は耳まで赤くして、
「べ、別に! 礼とか要らないし! ムカつく!
あ、明日もシゴくから覚悟しろよ!!」
と叫んで走り去っていった。
環とSatomiがその様子を見て爆笑する。
「志桜里ちゃん、ほんと素直じゃないねー」
「若いっていいわねぇ……」
修平は気恥ずかしさに頬を掻いた。
***
その日の筋トレが終わるころ。
道場の照明が少し落ちた静かな時間――
直美が沙也加とマンツーマンで組んでいた。
直美は汗を跳ね上げながら、信じられない速度でステップを刻み、
投げ、絞め、蹴り、すべてが洗練されていた。
彼女はすでに、
“女子レスラー”ではなく、“格闘の道具”
とも呼べるほど研ぎ澄まされていた。
沙也加が息を整えながら言う。
「……いいね、直美。
これなら帝プロでも絶対に埋もれない」
直美は無言で頷き、汗を拭いもせずにシャドーを続けた。
志桜里がつぶやく。
「……あの人、どこまで行っちゃうんだろ」
環が微笑む。
「みんなで押し上げるしかないよ」
Satomiが拳を握りしめる。
「そのためには……あたしも、もっと強くならなきゃね」
女子部全体が、ひとつの“軍隊”のような空気になっていた。
そして修平も――
その輪の中に、確かに足を踏み入れた。
***
夜。
道場の照明がほとんど落とされた時間。
沙也加が一人残って、リングロープを締め直していた。
すると、直美と修平がほぼ同時に入ってくる。
「えっ……」
二人は顔を見合わせるが、すぐに互いの目的を悟った。
“もっと強くなるために来た”――その一点だけは共通していた。
沙也加はロープを張り直しながら、ふと微笑んだ。
「いいね。
ブレバリーズ女子は、今が一番強い」
そして言葉を続ける。
「ここから先――
直美が頂点を掴む物語と、
修平が自分を取り戻す物語が、きっと始まるのよ」
修平は小さく頷く。
直美はわずかに口角を上げる。
三人の影が、リングの上に重なった。
それはまるで、
“これからのブレバリーズ”そのものだった。
女子部の体力トレーニングが終わった直後で、
床には汗が落ち、空気は白く霞み、
リングロープには女子選手たちの息遣いが乗っていた。
修平はその端で、膝に手をつきながら深く息を吸い込んでいた。
全身が痛い。
特に肩と腿は、志桜里のキックの跡がまだ赤く腫れていた。
「ほら、立って。まだ終わってないよ」
声の主は環だった。
いつも柔らかな物腰だが、練習となると目の色が変わる。
その落差がブレバリーズ女子部の魅力でもあった。
「は、はい……」
「よし、じゃあ受け身の続きね。三百回」
「さ、さんびゃ……」
「言ったよー? ほら、早く早く」
環のほんわかした声とは裏腹に、修平の日常はどんどん“女子部仕様”になっていった。
***
その日の練習後、
Satomiが一人、壁に向かって拳を何度も叩き込んでいた。
包帯の巻かれた拳から、じわじわ血が滲んでいる。
「Satomiさん……大丈夫ですか?」
修平が声をかけると、彼女は肩を震わせた。
「……あたしさ。もう33歳よ?
こんな若い子ばっかりの中で、何ができるってのよ……」
苦笑でもなく、泣き笑いでもなく。
ただ、心からの絞り出す声。
「でも、直美ちゃんが来てくれて……
また“闘いたい”って気持ち、取り戻せたのよ」
Satomiは拳を見つめた。
「だけど……
まだ自分に勝てない。
弱い自分が出てくるのよ、どうしても」
その横顔は、ずっと団体を支えてきた女の哀しさと誇りが混じっていた。
修平は、自分でも驚くほどすんなり言葉が出た。
「……でも、僕。Satomiさんの試合、全部見てきました。
あの気迫……男子にも負けてませんよ」
Satomiは目を伏せたまま、ぽつりと呟く。
「ありがと。でもね……あたし、まだ泣きたくなる日があるのよ。
それを直美ちゃんに見せるのが怖いの」
そのとき。
「泣いてもいいですよ」
穏やかな声が背後から響いた。
振り向くと――沙也加だった。
「泣くのは弱さじゃない。
むしろ“折れない人”の証です。
泣きながらでも立ち続ける人が、一番強い」
Satomiの肩に優しく手を置き、
沙也加は続ける。
「あなたのその気持ち、必ずリングで花になりますよ」
Satomiの目尻から、静かに涙がこぼれた。
***
その後、環が修平の隣に座り込み、笑顔でタオルを渡した。
「修平くん、がんばってるねー」
「環さんは……なんでそんなに優しいんですか?」
「うーん……それはね、女子部が“勝つため”だよ」
「勝つため……?」
環は自分の膝を抱えながら、空を見上げた。
「私ね、柔道出身でしょ?
女子だからって、途中で笑われたり、軽く扱われたりしたことがいっぱいあったの」
優しい声なのに、言葉には静かな炎が宿っていた。
「だからこの団体では、誰も軽んじたくないの。
修平くんも、仲間だよ?」
それを聞いた瞬間、修平の胸が熱くなった。
***
練習後。
志桜里が自分のバッグを持って歩いていると、
修平は思い切って声をかけた。
「志桜里。今日……その、ありがとな」
「は? なに急に」
「いや……すごくいい練習になった。ありがとう」
志桜里はそっぽを向き、
ぽつりと言った。
「……あたしが厳しくしてるの、別に修平さんのこと嫌いだからじゃないし」
「知ってるよ」
「違うからね? 本気で強くなってほしいだけ」
「うん。ありがとう」
志桜里は耳まで赤くして、
「べ、別に! 礼とか要らないし! ムカつく!
あ、明日もシゴくから覚悟しろよ!!」
と叫んで走り去っていった。
環とSatomiがその様子を見て爆笑する。
「志桜里ちゃん、ほんと素直じゃないねー」
「若いっていいわねぇ……」
修平は気恥ずかしさに頬を掻いた。
***
その日の筋トレが終わるころ。
道場の照明が少し落ちた静かな時間――
直美が沙也加とマンツーマンで組んでいた。
直美は汗を跳ね上げながら、信じられない速度でステップを刻み、
投げ、絞め、蹴り、すべてが洗練されていた。
彼女はすでに、
“女子レスラー”ではなく、“格闘の道具”
とも呼べるほど研ぎ澄まされていた。
沙也加が息を整えながら言う。
「……いいね、直美。
これなら帝プロでも絶対に埋もれない」
直美は無言で頷き、汗を拭いもせずにシャドーを続けた。
志桜里がつぶやく。
「……あの人、どこまで行っちゃうんだろ」
環が微笑む。
「みんなで押し上げるしかないよ」
Satomiが拳を握りしめる。
「そのためには……あたしも、もっと強くならなきゃね」
女子部全体が、ひとつの“軍隊”のような空気になっていた。
そして修平も――
その輪の中に、確かに足を踏み入れた。
***
夜。
道場の照明がほとんど落とされた時間。
沙也加が一人残って、リングロープを締め直していた。
すると、直美と修平がほぼ同時に入ってくる。
「えっ……」
二人は顔を見合わせるが、すぐに互いの目的を悟った。
“もっと強くなるために来た”――その一点だけは共通していた。
沙也加はロープを張り直しながら、ふと微笑んだ。
「いいね。
ブレバリーズ女子は、今が一番強い」
そして言葉を続ける。
「ここから先――
直美が頂点を掴む物語と、
修平が自分を取り戻す物語が、きっと始まるのよ」
修平は小さく頷く。
直美はわずかに口角を上げる。
三人の影が、リングの上に重なった。
それはまるで、
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