女帝の遺志(第一部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語

kazu106

文字の大きさ
3 / 19
第一章・新たなる道/直美との邂逅

運命の対峙

しおりを挟む
 その噂を聞いたのは、ある地方興行の夜だった。
 試合後の打ち上げで、若手レスラーたちが笑いながら話していた。
 「最近、近くの街で“鬼女”ってレディースが暴れてるらしいですよ」
 「鬼女? まだそんな時代錯誤な連中がいるの?」
 「いや、それが、総長がすげえらしいっす。その女には、男でも勝てないとか」
 「へぇ、そうなの?」
 「はい、多くの男たちを力で倒して従えているようで、界隈の不良たちの中では我が物顔でのさばってるみたいですよ」

 沙也加の耳が、わずかに動いた。
 そして思わず、彼らの話を割って、入って来ていた。

 「ちょっと、……その子の名前は?」
 「はい、直美ってやつらしいっす。高校2年の17歳らしいけど、あれはもう怪物らしいですよ」

 ──直美。

 以前も聞いた名前であった。
 レディース総長があまりもの強さと暴れっぷりに、警察が格闘技関係者の可能性ありと疑念を抱き、
 ブレバリーズ女子部の責任者として話を聞かれたことがあったのだ。

 警察から参考として、その少女の姿を写真で見せられた。
 髪を後ろでひとつに束ね、革ジャンの背には「鬼女」の刺繍。
 堂々とした表情・四肢・姿勢を見て、ただの不良女子とは思えないものを感じていたのであった。

 沙也加は胸の奥の高まりを感じていた。
 直美に対する興味が、一気に高まっていた。

 後日、沙也加は“鬼女”のアジトを突き止め、単身で向かった。

 鉄のシャッター前にバイクがずらりと並び、タバコの煙と笑い声。
 不良たちが集まっている。
 外側を男子たちが立って取り囲み、
 中央には数人の女子が、輪になって座り込んでいる。
 彼女らがおそらく、鬼女の幹部であろう。

 いきなりやってきた沙也加に対し、幹部から一斉に怒号が飛んでくる。

 「おいっ、何の用だよ、こらぁ!」
 「勝手に入って来てるんじゃねぇよ、このばばぁ!」
 「とっとと出て行け、おらぁ!」

 沙也加は彼女らの威圧などびくともせず、口を開く。

 「直美って子は、誰かしら?」

 中心にいた一人が立ち上がる。

 (彼女が、直美ね)

 写真で見た通りのいで立ちで、きっとこちらを睨んでいる。
 心は既に戦闘態勢と見られる。

 「ちょっとあなたの力を、見せてほしいんだけど」

 直美は沙也加の目の前に歩み出てきた。

 「なんだぁ、この年増女が」

 睨みつける直美は、何かを感じ取ったように見える。
 沙也加も動じることなく、直美を睨みつける。
 アジトは緊張感に静まり返りながら、凍り付いたように二人を囲んでいた。
 男子の一人が沙也加を制する。

 「おばさん、やめときな。総長には、俺たちが束になっても、逆にやられちまったんだよ
 ケガしたくなかったら、やめて帰りな」

 直美は即座にその男子に近寄り、左手でジャブを放つ。
 男子は軽くぶっ飛んでしまった。

 「うるせぇ!、雑魚は黙ってろ!」
 「はい、...す、すみません」

 その一撃がこれから始まるタイマンの合図とばかりに、直美はつづける。

 「勇気あるおばさんだ。じゃぁ見せてやるよ。こっちに来な」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

バーチャル女子高生

廣瀬純七
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...