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第1章:異世界転移編
第19話 ギルドマスター
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秘書風の女性によって、執務室のドアが開け放たれると、ギルドマスターのオルブロが立って、僕たちを迎えてくれた。
「おお、アリシア。よく来た!本当に会いたかったぞ。」
しかし、彼には、アリシアしか眼に入らなかったようで、手を大きく開いて迎え入れると、彼女をギュッと抱きしめたのだ。
オッサンとランディはオルブロの親バカぶりは知っているようで、勝手に執務室にあるソファーにどっかり座ると、お茶を要求していた。
アリシアの父、オルブロは、ランディと同じような容姿をしていたが、見た目は40歳位に見える。だが、すでに150歳は超えているらしい。だったらアリシアはいくつなんだ?と考えたが、女性に年齢を聞くのは止めにした。
アリシアも父親に抱きしめられ、久しぶりに甘えられるのが本当に嬉しそうだ。親子の対面は実に10年ぶりだったからだ。
オルブロは、森を出て10年。このターラントのギルマスになるまでも、なってからも、あまりの忙しさで、娘に会いに行けずにいたのだが、1人で森にいる娘が心配で仕方なかったようで、信頼できる冒険者を頻繁に派遣したり、物資を送ったりと、娘の為にこまごまと動いてはいたようだ。
「お父様、お久しぶりです。師匠から聞いたのですが、今とても大変だそうで。こんな時に来てしまって、本当に申し訳ありません。」
「何を言っている。お前だったら、いつ来てくれてもいいのだぞ。そうだ、このままずっと私の側にいたらいい。」
アリシアは、苦笑いしている。
「しかし、お前に、何度言っても、森から出ようとはしなかったが、そんなお前がわざわざ出てくるとは、いったい何があったのだ?」
「実は、是非、報告しないといけない案件がありまして、取り急ぎ参上いたしました。」
「その案件とは、ランディとの婚約を破棄したいと言うのであれば歓迎するぞ。」
ランディは、毎度の事なのだろう。苦笑している。
「いえいえ、もっと嬉しい知らせです。実は、紹介したい人がいるんです。ここにいる彼です。」
そう言うと、僕の方をみる。そこで、僕は、すかさず自己紹介をした。
「もしかしたら、新しい恋人か?ダメだ、娘はやらん!」
今度は、皆が苦笑した。
「お父様、落ち着いてください。このレンは、私たちエルフ族の恩人なんです。だって、彼が森のダンジョンを消滅させてくれたんですよ。」
一瞬の沈黙の後、
「な、なんだって!?」
全員が一斉に大声を上げた。
◇◇◇
「ここにいるレンは、異世界の日本という国からの来訪者です。」
そこで、アリシアは、僕から聞いた日本という国のこと、10年前に日本にダンジョンが出来た事、ダンジョン崩落に巻き込まれ、ダンジョンコアを破壊した事、そして本当にダンジョンが消滅していて、魔素の放出もなくなっていた事を逐一報告した。
アリシアが、説明を終わる所を見計らって、僕はスマホに入っていた写真を皆に見せたのだ。皆もアリシア同様に、眼を見開いていた。
「アリシアを疑っているわけではないが、とりあえず、森に調査団を派遣しなければ。話はそれからだ。とりあえず、ダンジョンが消滅したという前提で、私は動かないといけないな。」
精霊の森の復活が出来るよう、どう効率的に動くかだが、と、ギルマスは思う。
ダンジョンからの魔素放出はなくなったとして、まだまだ森は魔素だまりの瘴気で満ちている。どうやったら精霊樹を復活させ、精霊女神アルフォーニス様を目覚めさせられるかが、最大の懸案だ。
「精霊樹を復活させると言っても、森の中心まで行ける冒険者は、私かバッファぐらいだろう。ギルマスである私が、ここを離れるわけにはいかない。どうしたものか。」
「私も行かせてください。精霊の森は、私が生まれ育った場所です。どうか、私も同行させてください。」
ランディは、自分が行くと訴えたが。
「ダメだ。お前は、長老様達への連絡に走って貰わなければいけない。今は長老様のお知恵を拝借したいところだしな。お前は、お前しか出来ない仕事をしろ。」
ランディは、悔しそうではあったが、ギルマスに向かってうなずいた。そしてギルマスは、自分が出来る事を口にする。
「私がやることは、森を調査出来る冒険者の確保と、後は、浄化を行える聖女さまへの謁見を、領主に打診してみる事くらいか。」
すると、オッサンが、苦い顔で、首を振った。
「たぶん、聖女様は無理じゃな。」
「何故だ。浄化をできるのは聖女様くらいだ。自然に森が浄化されるのを待つだとか、気の遠くなる時間が必要だぞ。」
「それは解っとる。問題は隣の帝国じゃ。きな臭いのはお前もよく知っとるじゃろ?お前に頼まれていた、モントヴル王国の宰相に話を聞いてきたぞ。その事は後で報告したいんだが。」
「解った、後で時間を取ろう。」
「こんな逼迫した情勢で、ラウド聖教国が国から聖女様を出すとは思えんのだ。それにだ、聖女様はかなりのお年じゃ。魔の森と化した所へ行けるほどの体力はないと思うぞ。」
その話を聞いて、皆が、頭を抱えている時、アリシアが僕に声をかけてきた。
「レン、もしかして、あなた浄化を使えるんじゃない?」
アリシアは、魔素だまりの水を飲料水に変えた所を見ているのだ。浄化が関わっているかもしれないと察したのかもしれない。それを聞いたギルマスは、驚いて僕に問いかけてくる。
「それは、ほんとか?、どうなんだ、ほんとに使えるのか?」
ギルマスに真剣な表情で問われたので、正直に答えた。
「えっと、スキルで浄化はありますが、そんな広範囲には使えませんよ。だって、僕、レベル15だし。聖女様の足元にも及びませんって。」
「え!スキルだって!魔力は使わないのか?」
「はい、魔力量減らないですし。たぶん、使ってないですね。」
すると、オッサンはソファーから立ち上がり、僕の方にズカズカとやってくると、肩を掴んで勢いよく揺さぶった。
うわぁーーー!やめてくれ、死ぬ死ぬ!そんなにゆすったら、色んなものが出ちゃうってー!眼がまわり、頭がぐわんぐわんする。
すると、突然オッサンがニヤリと笑って、叫んだ。
「よし、解った!俺が鍛えてやる。明日からレベル上げだ!」
オッサンは、僕に向かって親指を立てた。
「おお、アリシア。よく来た!本当に会いたかったぞ。」
しかし、彼には、アリシアしか眼に入らなかったようで、手を大きく開いて迎え入れると、彼女をギュッと抱きしめたのだ。
オッサンとランディはオルブロの親バカぶりは知っているようで、勝手に執務室にあるソファーにどっかり座ると、お茶を要求していた。
アリシアの父、オルブロは、ランディと同じような容姿をしていたが、見た目は40歳位に見える。だが、すでに150歳は超えているらしい。だったらアリシアはいくつなんだ?と考えたが、女性に年齢を聞くのは止めにした。
アリシアも父親に抱きしめられ、久しぶりに甘えられるのが本当に嬉しそうだ。親子の対面は実に10年ぶりだったからだ。
オルブロは、森を出て10年。このターラントのギルマスになるまでも、なってからも、あまりの忙しさで、娘に会いに行けずにいたのだが、1人で森にいる娘が心配で仕方なかったようで、信頼できる冒険者を頻繁に派遣したり、物資を送ったりと、娘の為にこまごまと動いてはいたようだ。
「お父様、お久しぶりです。師匠から聞いたのですが、今とても大変だそうで。こんな時に来てしまって、本当に申し訳ありません。」
「何を言っている。お前だったら、いつ来てくれてもいいのだぞ。そうだ、このままずっと私の側にいたらいい。」
アリシアは、苦笑いしている。
「しかし、お前に、何度言っても、森から出ようとはしなかったが、そんなお前がわざわざ出てくるとは、いったい何があったのだ?」
「実は、是非、報告しないといけない案件がありまして、取り急ぎ参上いたしました。」
「その案件とは、ランディとの婚約を破棄したいと言うのであれば歓迎するぞ。」
ランディは、毎度の事なのだろう。苦笑している。
「いえいえ、もっと嬉しい知らせです。実は、紹介したい人がいるんです。ここにいる彼です。」
そう言うと、僕の方をみる。そこで、僕は、すかさず自己紹介をした。
「もしかしたら、新しい恋人か?ダメだ、娘はやらん!」
今度は、皆が苦笑した。
「お父様、落ち着いてください。このレンは、私たちエルフ族の恩人なんです。だって、彼が森のダンジョンを消滅させてくれたんですよ。」
一瞬の沈黙の後、
「な、なんだって!?」
全員が一斉に大声を上げた。
◇◇◇
「ここにいるレンは、異世界の日本という国からの来訪者です。」
そこで、アリシアは、僕から聞いた日本という国のこと、10年前に日本にダンジョンが出来た事、ダンジョン崩落に巻き込まれ、ダンジョンコアを破壊した事、そして本当にダンジョンが消滅していて、魔素の放出もなくなっていた事を逐一報告した。
アリシアが、説明を終わる所を見計らって、僕はスマホに入っていた写真を皆に見せたのだ。皆もアリシア同様に、眼を見開いていた。
「アリシアを疑っているわけではないが、とりあえず、森に調査団を派遣しなければ。話はそれからだ。とりあえず、ダンジョンが消滅したという前提で、私は動かないといけないな。」
精霊の森の復活が出来るよう、どう効率的に動くかだが、と、ギルマスは思う。
ダンジョンからの魔素放出はなくなったとして、まだまだ森は魔素だまりの瘴気で満ちている。どうやったら精霊樹を復活させ、精霊女神アルフォーニス様を目覚めさせられるかが、最大の懸案だ。
「精霊樹を復活させると言っても、森の中心まで行ける冒険者は、私かバッファぐらいだろう。ギルマスである私が、ここを離れるわけにはいかない。どうしたものか。」
「私も行かせてください。精霊の森は、私が生まれ育った場所です。どうか、私も同行させてください。」
ランディは、自分が行くと訴えたが。
「ダメだ。お前は、長老様達への連絡に走って貰わなければいけない。今は長老様のお知恵を拝借したいところだしな。お前は、お前しか出来ない仕事をしろ。」
ランディは、悔しそうではあったが、ギルマスに向かってうなずいた。そしてギルマスは、自分が出来る事を口にする。
「私がやることは、森を調査出来る冒険者の確保と、後は、浄化を行える聖女さまへの謁見を、領主に打診してみる事くらいか。」
すると、オッサンが、苦い顔で、首を振った。
「たぶん、聖女様は無理じゃな。」
「何故だ。浄化をできるのは聖女様くらいだ。自然に森が浄化されるのを待つだとか、気の遠くなる時間が必要だぞ。」
「それは解っとる。問題は隣の帝国じゃ。きな臭いのはお前もよく知っとるじゃろ?お前に頼まれていた、モントヴル王国の宰相に話を聞いてきたぞ。その事は後で報告したいんだが。」
「解った、後で時間を取ろう。」
「こんな逼迫した情勢で、ラウド聖教国が国から聖女様を出すとは思えんのだ。それにだ、聖女様はかなりのお年じゃ。魔の森と化した所へ行けるほどの体力はないと思うぞ。」
その話を聞いて、皆が、頭を抱えている時、アリシアが僕に声をかけてきた。
「レン、もしかして、あなた浄化を使えるんじゃない?」
アリシアは、魔素だまりの水を飲料水に変えた所を見ているのだ。浄化が関わっているかもしれないと察したのかもしれない。それを聞いたギルマスは、驚いて僕に問いかけてくる。
「それは、ほんとか?、どうなんだ、ほんとに使えるのか?」
ギルマスに真剣な表情で問われたので、正直に答えた。
「えっと、スキルで浄化はありますが、そんな広範囲には使えませんよ。だって、僕、レベル15だし。聖女様の足元にも及びませんって。」
「え!スキルだって!魔力は使わないのか?」
「はい、魔力量減らないですし。たぶん、使ってないですね。」
すると、オッサンはソファーから立ち上がり、僕の方にズカズカとやってくると、肩を掴んで勢いよく揺さぶった。
うわぁーーー!やめてくれ、死ぬ死ぬ!そんなにゆすったら、色んなものが出ちゃうってー!眼がまわり、頭がぐわんぐわんする。
すると、突然オッサンがニヤリと笑って、叫んだ。
「よし、解った!俺が鍛えてやる。明日からレベル上げだ!」
オッサンは、僕に向かって親指を立てた。
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