異世界結婚

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4話 別れと再会

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あれから三年…私は、十歳になった。
文通で、ファミール様とラザニエル様と親しくなった。ファミール様からは勿論あまり乗り気に見えなかったラザニエル様からも頻繁に届いた。不思議に思ったが返事を出すと、直ぐに返事がきたのだ。
そして、いつの間にか 二人に尊敬を向けるようになった。
フィオレンティーナは、まだこの時は違った感情もある事に気づかなかった。

今日は、私の誕生祭が行われ、久しぶりにファミール様とラザニエル様がお越しになり、一緒に祝ってくれる。

「さぁ、フィオレンティーナ様!準備が出来ました。とても、美しく可愛らしいですわ」

「ありがとう。マリー」

メイドからの過大賛辞を貰い、鏡を見た。
美の女神「黄金のヴィーナス」と呼ばれているお母様に私は、少しも届かないと思った。
お母様は、金髪の美しく華やかな女性だ。
兄二人は、お母様の美しさを受け継ぎ金髪の美男子だ。お父様も銀髪の美男子で、私はお父様と同じ銀髪だが、美しさは遺伝しなかったらしい。
その証拠に、民の前に出ると、私だけ普通で可哀想と言われているみたいな ため息が出るからだ。
私だって、ため息を吐きたいですよ!!

トン、トン

「フィオレンティーナ様 そろそろお時間です。」

「わかりました。今 行きます」

扉をノックされ、いよいよと思うと緊張が増し吐きそうだった。
そこへ、懐かしい声が聞こえた。

「久しぶり ティーナ」

「元気にしてたか?」

一年に数回しか会えず、忙しかったのか最後に会ったのは約1年ぶり会う王子様達が笑顔で言った。

「エスコートしに来たよ」

「ぼやぼや するなよ」

久しぶりに会った二人は、相変わらずの美男子で少し大人っぽくなり背もかなり延び、声も低くなった感じがした。前よりもかっこ良くなっていて 私は何故か 顔が熱く感じた。

「お久しぶりです。ファミール様、ラザニエル様。本日は、よくお越しくだ…」

「ストップ!」

「…えっ?」

途中でラザニエル様に止められ 何か、間違えたかしら?と不安を抱いたが、二人の両腕は広げられていた。

「「おいで、ティーナ」」

「?!」

そう言われ 何も考えずに二人の胸に飛び込んでいた。
初めの頃は、絶対にありえない事だ。しかし この3年間交流を深めて今では、兄達にするように抱きついている。

「そんなに会いたかったの?」

「しかたね~な」

二人は笑って優しく抱き締めてくれた。
照れながら小さく頷くと両頬にキスをされた。
今までは、手の甲だったのに初めての行為だ。驚き、二人の顔を見たが何事もなかったように手を差し伸べられ、フィオレンティーナは、自然と二人の手を取ってエスコートされた。

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誕生祭も優雅な二人にエスコートされ無事に終わりホッとしていると、ノックの音がした。お父様とお母様とお兄様達が来た。

「フィオレンティーナ?入っても良いかい?」

「はい。もちろんです。」

「明日の準備は、出来たかい?」

お兄様達は、沢山の荷物を見て寂しそうな声で言った。

「はい。皆が頑張って下さいました。」

「そうか…寂しくなるな……」

あれ?お父様が泣きそう?

「…ぐっ…うっ!…何もかも……あの、くそじじいが悪いんだっ!私が居ない時に!!居たら全力で阻止したものを!!可愛いティーナに近づく男なんて、この私が虫のように、こう!プチっと、して」

違いましたね…お父様、口が悪いですよ…
後ろでお兄様達も頷いてますし…

「あなた?」

側で 聞いていたお母様も流石にと思ったのか 止めに入った。

「ん…ゴホン!すまない。興奮し過ぎた。…ティーナよ。結婚の事は兎も角、自分の為に勉強をしておいで、もし本当に辛くなったら 何も心配せずに帰っておいで。誰も責めんし 皆、歓迎すると思うぞ。寂しくなるが、いつもお前の事を私達は、想っているぞ」

「俺達もだからな」

「…ありがとうございます。お父様、お母様、お兄様。私、いっぱい勉強をして参ります。」

我慢をしてるつもりはなかったが、当分 会えないと思うと、やっぱり寂しさから涙が零れた。その夜は、遅くまで沢山話しをして沢山泣いて眠った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

パッパッラパーーーーーーパッパッパーー

雲一つない晴天の日、大きな音楽と大歓声の中 豪華な馬車に乗り ファミール様とラザニエル様と共に笑顔で手を振り国を出た。
門が見えなくなると、ラザニエル様が手を引っ張ってきて 膝の上にのせた。

「よっと」

「なっ!何ですか?!」

「隣国って言っても、休み休み行くから7日ぐらいかかるからな。長時間は辛いから座っとけ。」

そういうもんなのかしら?長時間の馬車は初めてだから、分からない…そう言うのなら、従おう。

「ありがとうございます。ラザニエル様。」

「ティーナ…違うだろ?」

頬っぺたを優しくプニ~と摘ままれた。

「…はい。ラル様」

ラザニエル様は、文通をしている時、自分もティーナみたいに愛称が欲しいとの事で 安易に最初と最後を取ってラル、 と提案したら 決まってしまった。
ファミール様は、そのままの名前で呼ばれるのが好きみたいだ。

「俺達しか、いない時は、そう呼べって言っただろ?様も、いらない。」

「…はい。ラル」

「あまり、困らせるなラザニエル。」

助け舟を出してくれた。ファミール様に微笑み返すと また頬っぺにキスをされた。

「?!!!!」

「困った顔も可愛いけどね」

「全く、兄貴は…なら、俺も」

馬車の中は、またチュッとされ恥ずかしさでバタバタ暴れているティーナと、それをからかって遊んでいる王子達の賑やかな声がする。それを楽しそうに聞いてるかのように馬達は軽快に馬車を走らせた。


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「ほら、ティーナ。見えてきたよ。あれが私達の国だよ」

出国してから7日が経ち、ついた国は自分の国より倍以上ある大国だった。

…私、やって行けるかしら…
そんな事を考えていると、門が開き、大歓声が聞こえた。


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