君がすべてを教えてくれた。

美桜

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春 ー出会いー

副顧問

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放課後、瑠奈は部活に行く準備をしていた。けれど、いつもよりも妙に緊張気味であった。
杏美と二人で行く間も、普段通りにすればいいはずなのに、杏美との会話も上の空で、グラウンドに着けば
まだ誰も来ている様子はなかった。


杏美:よし!一番乗りだね!早速準備しよー!

瑠奈:……

杏美:瑠奈ー?

瑠奈:あ、うん……ねぇ、今日って新藤先生来るのかな?

杏美:えーーどうだろ、忙しいから来ないと思うけど……あ、でも挨拶くらいは来るんじゃない?


そう聞くと瑠奈はまた、いつも通りが分からなくなっていた。そんな中でも、やりがいのあるマネージャーの
仕事をこなしながら、次第に先輩たちも来て、練習が徐々に始まる時間となった。


悠:やっぱ来ねぇなー新入生

杏美:まぁ、まだ部活初日ですし、いろんな所に行ってるんですよ!

瑠奈:グラウンドまで来るのもサッカー部目当てじゃないと来ないよね

杏美:あ、瑠奈が宣伝して来ればいいじゃん!性格ひねくれてるけど、顔はいいし!

瑠奈:はぁー?
悠:それはだめだ!


杏美の言葉に対して、二人が同時に喋ったことで、瑠奈はともかく、悠の発言に二人は驚いた。


瑠奈:…どうしたんですか急に(笑)

杏美:あ……えっと…ちょっと悠先輩!冗談ですよー!(笑)

悠:いや……お前が行けばもっと来なくなるから行かなくていいんだよ

瑠奈:それはすいませんでしたねーーー言われなくても行きませんよー

杏美:あ、アハハ……やってしまった…

悠:……あーーーまただ


瑠奈は悠の言うことにいちいち腹を立てることはないが、内心うんざりしていた。突っかかってくる所も
一言二言、言うことが多い所も苦手にしていた。そんな時、グラウンド付近に何人かが集まっていた。見る限り一年生で、瑠奈はチャンスだと思い声をかけた。


瑠奈:こんにちは!ここサッカー部だけど見学していく??

一年生:あ........俺たち去年の試合見て.....誰かは分かんないんですけど、凄い人いるって話してて

瑠奈:去年の?誰だろ........でも多分......悠先輩なんだろうな.........



さっきまで嫌だと思った人でも、確かな実力には瑠奈も頭が上がらない。そう思いながら彼らの話を聞いていると、教室とは違ってラフな運動靴で軽々な足音でこちらに来る存在に、また驚かされた。


新藤:あれ?四宮か!早速来てみたけど随分と人気だな(笑)

瑠奈:新藤先生....... 今ちょうど話を聞いてて......

新藤:そっか!俺も今日からサッカー部の副顧問なんだよ!ちょっとさーー練習見るのに付き合ってくんない?


新藤先生はそう言って新入生に話しており、先生が言うならと、さっきまで立っていただけだったのに、先生と一緒に中まで入って楽しみにしている様子が見受けられた。
それに先輩たちも対応しており、新藤も自己紹介を兼ねて、新入生の相手をしていた。
その様子に、瑠奈は何もできないことを実感し、その日は事無くして終わった。その日の帰り道も、亜美も用事があって一人で帰っていた。そんな時、何だか後ろからチラホラと瑠奈は気配を感じていた。


瑠奈:............何か用ですか、悠先輩。

悠:え、何で分かったん!

瑠奈:いや、バレないようにしてたんですか?

悠:..........それより、大丈夫.......なん?

瑠奈:...........誰かさんが余計なこと言ったせいで大丈夫じゃないですねーー

悠:なぁ悪かったって!いつもの冗談だって分かるだろ?.........まぁ、言いすぎた、ごめん。

瑠奈:.............今日の新入生、悠先輩のサッカー見て来たみたいですよ。

悠:え?俺の?

瑠奈:先輩たちのプレイを見せることでついてくるんですよ。頑張って口で言うよりも。勧誘はその流れでいきましょうか!

悠:あ........そうだな........お前が言うなら(笑)まぁーそんなの見せたら俺の人気上がっちゃうけどなー困るなー(笑)

瑠奈:.............困りますね。

悠:えっ............今なんて.........

瑠奈:先輩目当てで来られたらマネージャーにろくな子が来ませんよ。ちゃんと真面目で誠実な子を募集してるんで。

悠:あ........そゆことね.......てか、ろくな子ってお前ホント口悪いよな(笑)

瑠奈:何とでも言ってくださーい


帰り道は結局言い合って、後ろで見守る新藤の姿に気づかないくらい、終わり際の瑠奈の暗い表情は、晴れて笑顔になっていた。
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